Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kura_purple

    @kura_purple

    チラシの裏

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    kura_purple

    ☆quiet follow

    七+五

    振り回されるのは嫌いじゃない+甘え下手

    おきなわ食事を終えてひと心地。食後酒の余韻の中、片付けを済まそうと立ち上がるのを見計らったかのように呼び鈴が鳴った。
    「…どうしたんですか?」
    アイマスクで顔が半分隠れているとはいえ、無表情な五条が黙って立っていた。
    「僕、これから出張なの」
    「はぁ」
    「沖縄」
    沖縄と聞いて胸の奥底が少しだけざわつく。遠いあの日、ガラス越しに見た深い青空と真っ白な綿のような雲。あれ以来、縁もなく行く機会も意欲もなかった。
    …だったらなんだと言うんだ。そんな感傷はもう。
    「そうですか。行ってら——」
    「行こう」
    「は?」
    「沖縄」
    嫌だとすぐに断ろうとして、依然表情のない五条が気にかかる。五条が何を考えているかなど分かった試しがないが、もしかしたら、もしかすると、同種の感傷を抱いているのかもしれない。
    お互いあの空の下で一緒に過ごした人はもう誰もいない。
    「私、明日休みなんです」
    「知ってる。航空券も宿も手配済み」
    「初めから拒否権ないんですね」
    見えている口元は来た時と何ら変わらないのに、その眼はアイマスクで見えないというのに、何となく五条が泣きそうに見えて、ため息と共に部屋に促す。
    「せめて片付けをさせて下さい。食器を洗うところだったんです」
    「…うん」
    大人しく七海に続く五条は呼吸を思い出したかのように息を吐いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍🙏🙏😭🙏❤🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    blackberryO7I5

    DONEキスの日の五七
    五条サイド
    「……七海?」

     授業を終え、苦手な事務作業も終えて、ふっと気を緩めたと同時に愛しい呪力を感知して五条は伸びをしかけた身体をぴたりと止めた。

     基本的に五条の持っている能力値は多方面に亘って非常に高い。だから書類仕事が溜まりに溜まっていたのは、単に面倒という理由だけで放置していた結果だった。頼むから提出してくれと泣きつかれて、ようやく着手したのだ。その作業に思いのほか集中していたらしかった。おそらく少し前から訪れていただろう恋人の気配に気づかなかったとは。帰ってしまう前でよかった、と五条は勢いよく椅子から立ちあがった。

     気配は昇降口に向かっている。彼ももう帰るところなのだろう。その前に捕まえて、食事にでも誘いたい。あわよくばそのままお持ち帰りを……などと考えながら五条は恋人──七海の呪力を軽い足取りで追いかける。きょう七海が高専に来るとは聞いていなかった。面倒なことを片づけた自分へのご褒美のようで、五条の心は自然と弾む。

    「?」

     昇降口を挟んで対極の棟からこちらへ向かっていた七海の気配が、とつぜん進行方向を変えた。もうすぐそこの角を曲がれば逢える、と相好を崩していた五条は 4195