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    kura_purple

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    チラシの裏

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    七+五

    振り回されるのは嫌いじゃない+甘え下手

    おきなわ食事を終えてひと心地。食後酒の余韻の中、片付けを済まそうと立ち上がるのを見計らったかのように呼び鈴が鳴った。
    「…どうしたんですか?」
    アイマスクで顔が半分隠れているとはいえ、無表情な五条が黙って立っていた。
    「僕、これから出張なの」
    「はぁ」
    「沖縄」
    沖縄と聞いて胸の奥底が少しだけざわつく。遠いあの日、ガラス越しに見た深い青空と真っ白な綿のような雲。あれ以来、縁もなく行く機会も意欲もなかった。
    …だったらなんだと言うんだ。そんな感傷はもう。
    「そうですか。行ってら——」
    「行こう」
    「は?」
    「沖縄」
    嫌だとすぐに断ろうとして、依然表情のない五条が気にかかる。五条が何を考えているかなど分かった試しがないが、もしかしたら、もしかすると、同種の感傷を抱いているのかもしれない。
    お互いあの空の下で一緒に過ごした人はもう誰もいない。
    「私、明日休みなんです」
    「知ってる。航空券も宿も手配済み」
    「初めから拒否権ないんですね」
    見えている口元は来た時と何ら変わらないのに、その眼はアイマスクで見えないというのに、何となく五条が泣きそうに見えて、ため息と共に部屋に促す。
    「せめて片付けをさせて下さい。食器を洗うところだったんです」
    「…うん」
    大人しく七海に続く五条は呼吸を思い出したかのように息を吐いた。
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    ぬけがら

    DONE付き合ってない五と社畜七の始まりそうな春のお話。57FESTA2の展示作品でした。パスワードはずしました。
    『ハルノヒ』「ひょっとして、死のうとしているとでも思っていますか」
     暦の上では春だとしても雨の夜は肌寒い。七海が帰宅して間もない室内は、人間が二人居るのに寒々としている。無造作にローテーブルに置かれたエアコンのリモコンが、ぴ、と音を立てる。微かなエアコンの稼働音に混じって、七海は無表情で外套を脱いだ。室外からは雨の音。冷えた部屋には空調の揺らぎ。その中にぽつりと七海の声が、混じる事なく放たれた。
    「え? ゴメンもっかい言って」
     五条は術式のおかげで濡れてもいない衣服を、それでも確かめるように撫でてからソファーに腰掛けた。テレビスクリーンの真正面に置かれたソファーの、向かって左側。右側には七海が座る。七海は五条の存在を無視しようとして、出来なかった。そんなことを試みる方が面倒くさいと学んでしまっているのかもしれない。呪術界から離れて何年も経つというのに。今のところ毎週金曜日の訪いが突然に始まり、そして三週連続で続いている。七海は問われた事に答えないまま珈琲の準備に向かった。聞こえなかったのならばそれはそれで構わないとでもいうように背を向ける。目元の隈は濃く、立ったままでも眠れそうな具合だ。
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