Quill「お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「これ、気持ちだけですけど」
それはレインのスーツのポケットから取り出された手のひらサイズのプレゼント。
手渡すのはシンプルな小花の箔押しの施された白い包装紙に、赤のシルクリボンが掛けられた箱。
オーターの手に渡った途端、30㎝ほどの大きさにフワリと拡大する。
「……マックス・ランドか」
「はい」
レインの魔力から離れたら元の大きさに戻るように仕掛けられた魔法。
オーターの前でも悪びれるでなく、むしろ誇らしげに“親友自慢”をするレインに、心の内に湧き上がる小さな嫉妬を自然な呼吸で逃すのも慣れた仕草。
「オーターさんの好みに合うか分かりませんが」
「嬉しい。開けても?」
「どうぞ」
しゅる、とリボンが解かれていく。オーターの神経質そうな指にしなやかに赤が絡む様すら、レインの目にはひどく美しく映った。
中身は羽ペンのセット。
老舗を調べたりワースにも御用達の店があるか聞いたり、忙しい時間を縫ってレインなりに精一杯探してきた品。
片開きの蓋をパカリと開け、中身を確認した目元がわずかに和らぐ。
「……気に入った、大切にする」
「良かったです」
「手ぶらだと思っていたので、てっきりレイン自身がプレゼントかと期待していたんだが」
「……いくら俺でも、この時間にホテルまで来ておいて“帰りましょう”とは言わないですよ」
「そうか。では貰っても?」
「はい、どうぞ」
あっさりとした了承に、すっかり慣れたものだなと軽いキスをして、その黄金を覗き込む。
「脱いで欲しい」
「わかりました」
自分から投げかけてみたは良いものの、微塵も羞恥を見せずさっさとシャツをはだけるレインにオーターは拍子抜けしてその姿を見つめる。
「……躊躇いはないのか」
ベルトを緩めたズボンと共にパサリと落とされる下着を一緒に目で追いながら問い掛けるオーターに、シャツを引っ掛けただけの身をそっと寄せたレインが苦笑する。
「もう何度目ですか……今更ですし、それに」