行為の代償「オーターさん。」
入室の許可を得た扉から入って来たのはレインだった。
「どうした」
オーターは手にしていた羽ペンを戻し、数枚の書類をチェックしながら問いかける。
「これ、媚薬なんですけど。飲んでくれますか」
「……」
突然の申し出に、チラリと視線を投げた。
スタスタと執務机に近付いたレインから差し出されるのは五センチほどの、縦に模様が装飾された円錐形の透明なガラスの小瓶。
オーターはコト、と机に置かれた小瓶が、終業前の窓から差し込む夕日にキラキラと反射する様を眺めた。
「……明日は休みだったか?」
「えぇ。」
唐突な質問に、レインは机から一歩引いた場所で後ろ手に組んだ待機の姿勢を崩さぬまま他意なく答える。
「そうか」
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