【旭郁】真ん中バースデー 九月二十四日。
どうやら世間では三連休の真っ最中らしい。が、アスリートである自分達には関係のないことだ。今日も今日とて泳ぎ込み、ようやく旭に会えたのは日も暮れたあと。
練習を終えた旭がうちに来てくれて、今はソファでふたり、のんびりしている。
部屋の中がやけにしんとしているのは、旭が寝落ちてしまったからだ。規則正しい寝息だけが、そばで心地よく漂っている。
疲れてる日はわざわざ来なくていいよ。と、付き合い始めた頃は気を遣ったりもしていたのだけれど、今は「郁弥に会えねーほうが無理!」と拗ねられることが分かっているので、余計な発言はしない。それに、僕も旭に会いたいし。
肩口にかかる重みが愛おしくて自分も頭を寄せてみたら、自然とやわらかい笑みがこぼれた。あたたかい気持ちに包まれていく。
「ねえ。今日、僕たちの真ん中バースデーなんだって」
ふと声が漏れた。それはさっき日和から聞いた情報で、特に旭と共有するつもりもなかったのだが、思い出した瞬間口から出てしまっていた。
「え……マジ?」
旭がもぞ、と動き、肩のあたりがくすぐったい。
「あ、起こしちゃった。ごめん」
「いや、それはいいんだけど、そっか、真ん中バースデー……」
寝ぼけた瞳が何度か瞬き、少しずついつもの輝きが戻ってくる。そして完全に覚醒した直後、旭は嬉しそうに声を弾ませた。
「その響きいいな! カップルっぽくて」
「ぽい、っていうか、カップルでしょ?」
指摘すれば、旭の顔がほんのり赤くなる。
「お、おう……」
「なんで照れてるの」
「うるせー!」
叫んでからぎゅっと唇を引き絞った旭と、睨み合うようにみつめあう。
明らかに形勢有利。なのにありえないほどドキドキしている。こちらのほうが照れているということに、気付かないでいてほしい。
「なー。せっかくの真ん中バースデーだし、何かする?」
旭は目を据わらせたまま、けれど好きオーラをだだ漏れさせた状態で、顔を近づけながら訊いてくる。
「何か、って、なに」
「んー、とりあえずキスとか?」
「キスは……いつもしてるじゃん」
「じゃあしねーの?」
「……するけど」
一言交わすごとに迫ってくる唇に捕らえられる。いつもしていることなのに、毎回、涙が出そうなほど幸せだ。
旭とキスをするたび、好きが膨らんでいくような気がする。心の中でもう何度「大好き」と叫んだかわからないし、いまもずっと叫んでいる。
その後、真ん中バースデーの後祝いとしてデートに誘われた。誕生日当日でもないのにわざわざ祝わなくてもよくない? と訊いてみたが、旭は笑ってこう言った。
「郁弥との記念日はたくさんあったほうが楽しいだろ!?」
心の隅々を照らしてくれる笑顔だ。
そんな旭といると、僕も、すごく楽しい。
~旭&郁弥真ん中バースデーおめでとう!!!!~