《寒いから温めてはほしかったけど》怜×サク 雪は懇々と降り駸々と積もる。
今日はクリスマスイブ前日。クリスマスを一緒に過ごしたいと二人で話してはいたが、怜くんがクリスマスイブから当日を家族と過ごすため、それならせめて街がクリスマスムードの期間に恋人らしい事をしたいと、お泊りデートをすることを僕が提案した。そして、昨日の夜からこのビジネスホテルに泊まっているのだ。
まだ少し眠そうな怜くんをダブルベッドの中に残して、僕は外の様子を見るためにベッドを降りた。シャツワンピースのような、備え付けのパジャマだけだと既に少し肌寒い。
窓の前に立ち外をのぞくと、道路は歩道との境界が分からないほど真っ白に染められていた。太陽の光が反射してとても眩しい。そして、その上にまだまだ雪が降り積もっていくのが見える。このままだと、今夜はもう少し冷えそうだ。
「ねーぇ、怜くん。寒いよぉ」
「おれも……布団から出たくない……」
「せっかく暖かかったのに、ちょっと冷えちゃった……えーい、入っちゃえ」
「わ! つっめたい!」
布団の外に出たのは一瞬だったはずなのに、僕の身体はもうずいぶんと冷えていた。怜くんがくるまっているシーツの中に潜り込み、正面から彼を抱きしめ、足先をふくらはぎの間に差し込んでやると、怜くんは反射的に体をわずかに跳ねさせた。
「ちょっと、サクくん!」
「ふふ、目は覚めた?」
「ううん」
「チェックアウトまであと30分くらいだよ」
「……どうせ着替えるだけだし、もう少しだけここでゆっくりしようか」
「あ、千円で一時間延長できるよ? する?」
「ん、そうしよ……朝ごはんは食べ損ねたけど、まぁ……あとでカフェにでも入ろう」
学年が違う分、会える頻度も高くはない。それでも、今日はこうして朝までお互いの温度を楽しむことができた。けれどいつの間にか欲張りになってしまって、二人の時間をもう少し味わいたいと思ってしまう。
「……ねぇ、来年はサクくんと一緒にクリスマス過ごしたい」
「え?」
「だって将来は家族になるでしょう? 本当は今年でも全然よかったけど……サクくん、遠慮しないでよかったのに」
「も、もう! からかうのはよくないと思う」
思いがけないセリフに、さっき窓際に行ったときに冷えた顔が急に熱くなっていくのがわかる。今鏡を見たら真っ赤なんだろう。
嬉しくなかったわけじゃない。むしろ泣くほど嬉しいに決まっている。
「え? 別にからかったつもりなんてないんだけど」
「……あーあー……。怜くんのそういうところ!」
「ひ、っ! やめてよ……ッ!」
でもそうやって、ほしい言葉をサラっと言えてしまう怜くんに腹が立ったから、脇腹をつついてやった。