喫茶店パロ 序文 各駅停車だけが停まる駅で降りる。比較的チェーンの飲食店が並ぶ西口は大学や図書館があり、バスターミナルやタクシー乗り場がある東口は個人経営の飲食店や会社の事務所が建ち並んでいる。月極の駐輪場とスーパーは北口、高架下パーキングに一番近いのは南口だ。
そんな素朴な駅の西口か北口を出て、花屋の角を曲がり三ブロック。車一台が通れる幅の一方通行道路に面したところに、ブラックボードのメニューボードが置いてあるのが目に留まるだろう。
木枠はローズウッド。ボードには白いチョークでその日その時間の看板メニューがイラストと共に描かれ、ラミネート加工されたドリンクメニューがその左端でぱたぱたと風に揺れている。
たくさんの花が咲いた植木鉢に囲まれた喫茶店は、なかなか入るのに勇気がいるかもしれない。ローズウッドの重厚な扉に「OPEN」と札がかけられていても。壁に空いた窓からは古き良き喫茶店といった様子の室内が見えるだろう。もしかするとお喋りに興じる地元のご婦人たちが見えるかもしれない。
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