貴方のためのドレスコード「それでさ、君は誰の為に装うんだい?」
糸紡ぎの妖精が、朗らかに、優しく、問いかけた。
木々の合間を通り抜ける風が心地好い。
設定は少し汗ばむくらいの気温らしいので、余計に清々しく感じる。この爽やかさは少しの煩わしさがあってこそ。なるほど、流石に豪語するだけある。
覆うほどではないが、見通せるほどまばらでもない木立ちの中。そろり、そろりと足を進めていた立香は立ち止まり、辺りを見回す。
「んー…」
ここまで送ってくれたサーヴァントが示したのは、この森の奥だった。
「そんなに深い森には見えなかったんだけど…」
しかし、目当ての姿は未だに現れない。来た方を振り返り、行く先を振り向き。
『この奥で、お待ちになっています』
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