某薔薇と美術館のパロな新茶ぐだ♀赤い薔薇を一輪とお気に入りのレースのハンカチを持って摩訶不思議な美術館を立香は進んでいく。薔薇の花弁が落ちる度に、鋭い痛みが走るので動く美術品から隠れながら進む。進んでいけばうつ伏せに倒れている人がいた。
「あの……?」
声をかけるが反応はない。小さくうめき声が立香よりもずっと年上の男の人だ。辺りに青い花弁が何枚か落ちている。しかし薔薇を持っていない。
「もしもし……大丈夫ですか?」
もう一度声をかけるがやっぱり反応はなくて。手に持ってキラリと光る鍵があった。
(そういえば鍵がかかっていた部屋があったかも)
道中に鍵がかかっている部屋を思い出す。申し訳ないなと思いながらも握っていた鍵を抜き取った。
「いやぁ助かったヨ。お嬢さん」
「どういたしまして。薔薇取り返すことができてよかったです」
男に花弁を復活させた青い薔薇渡せば、男は人の良さそうな笑みで受け取った。
「えっと私も立香って言います。おじさんは?」
おじさんか立香の父よりも年上なのでおじいさん?とも思ったけれど前者で男に問いかける。
「私はモリアーティ。立香君も美術館にいたかな?」
「はい。モリアーティさん他の人にあったりは」
「君が初めてだねぇ。動く美術品には大勢出会ったが……油断しているところコレを盗まれてしまってね」
言いながらもモリアーティは青い薔薇を動かす。
「腰の痛み以上の激痛のせいで動けなくなったところ君に助けられたというわけだ」
「なるほど」
「私の状況は大体そんなところだ。君の方は?」
「私も追いかけられてずっと逃げて……倒れてるモリアーティさんを見つけたところです」
立香の状況も伝えればモリアーティは頷いた。
「そして君が私の命の恩人になるわけだ」
「そこまでじゃあ……」
堂々と言われると立香は照れてしまう。
「照れることではないよ。ここからは一緒にこの美術館から脱出しようか」
「は、はい!」
立香が頷けばモリアーティは先に歩き出した。
(一人じゃなくてよかった)
モリアーティの後をついて行きながら、立香は内心安堵していた。ここまで一人でいたことは立香が思っていた以上に精神的にストレスがかかっていたらしい。ここで出会ったのが初めて知り合ったモリアーティではなく家族や友人だったら立香は泣いていたかもしれない。置いて行かれないように立香は小走りでついて行った。