傷と誘惑2 協力者ではあるが、危険な奴だ。感化されたり、入れ込んだりしてはいけない──そう自分に言い聞かせはしているものの、シェーシャの視界には優美なリーベリの姿が度々入り込むようになっていた。
「本当はこの世のあらゆることに興味がないけれど、円滑な人間関係のためにはそれなりの態度が必要だと言うことは心得ていますよ」という感じの空疎な微笑みは相変わらずシェーシャの神経を逆撫でしたが、なまじ顔の造作が整っているせいで、常に甘いものでも含んでいるようなパッセンジャーの微笑に騙されるものは多いだろう。
もっとも、それなりにつき合えば、彼がほとんどの事に関心がないことは否応なしに理解させられる。エンジニア部のメンバーで彼を誤解する者はすでにいなかった。
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