傷と誘惑3 荒野を走る輸送車両の中は静かだった。時間的にはまだ昼だが、一晩中戦闘が続いたせいで、皆疲労困憊していた。窓はすべて日よけが降ろされ、車内は暗い。
ほとんどの乗員はシートベルトやハーネスで身体を固定し、車体の揺れをものともせず眠っている。戦闘に参加しなかった運転手以外に外を警戒する余力があるものはおらず、道中、サンドビーストや野盗に出くわさないことを祈るほか無かった。先発した二台は影も形も見えない。無事ロドスに辿り着いただろうか。
固い座席に背を預けたシェーシャは、青い紐のついた金色のメダルを手の中で弄んでいた。メダルには幾何学模様を組み合わせた意匠とクルビア文字が刻印されている。B、F、T、R、I──何かのイニシャルだろうか。
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