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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。ED数年後くらい、恋人同士なふたり。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    また明日 オレに目通りを願いたい、と並んでいた人の列がようやくなくなった。朝から何人の話を聞いたんだか、もうさっぱり覚えていない。
     今日のあとの予定は、と側の大臣に聞くと、少し後に会談および、晩餐で会食の予定だと言う。
    「最近急に羽振りの良くなった富豪がおりまして、ぜひ王様と話したいことがある、と言うのです。どんな用件かはわかりませんが、気分良くお帰りいただくのが肝要かと」
    と言われ、そのいかにも面倒そうな雰囲気にオレは顔を顰めた。どうせうちの商品を取引しないかとか、うちの娘を妃にしないかとか、そういうのだろう。あ〜、憂鬱すぎ!
     …もう、抜けるなら今しかない。
     あいつに会いたい。今、きっと、2階の通路のあたりで作業をしているはずだ。
     オレは、「ちょっと休憩してくる!」と大臣に言うと玉座を飛び降り、足早に王の間を出、階段を下りた。途中で新入りのメイドとぶつかりそうになって、「ごめんよ、大丈夫?」と声をかけると、その子は「お、王様…! 大丈夫です、私などに勿体ないお言葉……」と言って顔を赤くし俯いた。この様子なら大丈夫だろう。まあ、違う意味で大丈夫ではない気もするけど。
     そのまま廊下を進むと、2階の通路に出た。もしこの城が襲われて、籠城戦になった時には、ここから敵を見張り、兵士が矢を射、魔法を放つことになるだろう。
    「この通路はもう少し堅牢に、防衛に向くようにした方がいいと思うぜ。魔物が空から攻めてこないとも限らねえし、攻撃できる隙間は残して、見張り台を作って、壁を高くした方が」
     オレと一緒に世界中の城を見て、魔物と戦い、旅をしてきたお前なら、絶対にレイドックのこの城を、もっといい城にしてくれる。旅を終えた時に交わした約束のことは勿論頭にあったけど、もしそんな約束をしていなくても、オレはこの仕事をたぶんお前に任せたと思う。実際、お前が引いてくれた城の建て替えの図案は素晴らしいものだった。
    「ハッサン!」
     名を呼べば、手に持った設計図を指しながら他の職人に指示を出していたハッサンが、「おう」とこちらを見て、手を振った。ハッサンの周りの人たちが慌ててオレに頭を下げてくるのに、「いいよ、そんな気を使わなくて」と言って苦笑する。
    「どうした、レック? 何か用か」
     ハッサンが不思議そうにこちらを見てくる。
    「うん、急用なんだ、ちょっと来てくれ」
     そう言って、オレはハッサンを連れて、城の中庭の隅っこの方にやってきた。……よし、今日は誰もいない。今のうちだ!
     オレはハッサンにぎゅっと抱きつくと、ハッサンを見上げ、「キスして」と言った。ハッサンは「ハア!?」と言って目を丸くしたが、きょろきょろと辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると、オレに軽くキスしてくれた。
    「レック……お前なあ……」
     こんなところで王様が何やってんだよ、と呆れたような、しかし赤い顔でハッサンが言う。
    「だって、……これから夜まで気を使う接待の仕事が入ってるからさ、オレ、ハッサンとキスでもしないとやってらんない……」
    「わかったわかった、仕方ない奴だな」
     レックなら大丈夫だ、頑張ってこいよ、と言って、ハッサンがオレの体を抱きしめて、ぽんぽんと背中を叩いてくれた。オレはきっとこのまま夜まで接待の席を抜けられない。ハッサンはその間に今日の仕事を終えて帰ってしまうだろう。まあ、どうせ明日も城の建て替え工事は続くしハッサンには会えるけど、やっぱり。
    「寂しい、……一緒に住みたい」
     いくら恋人とはいえ、旅をしていた時のようには、なかなか一緒にはいられない。
    「…レック」
    「ねえハッサン、やっぱりハッサン用の部屋作ってよ、城の中に。オレが許可するからさ、好きに作ってくれていいし。そこで暮らしてよ」
    「断る。お前、オレにどんな顔してそこで暮らせって言うんだよ、気まずくて仕方ねえよ」
     大工仕事受けるのだって城の中じゃやりにくいだろうが、と言うハッサンに、オレは、そりゃそうだけど、と口を尖らせる。
    「レック王! どちらへ行かれましたか!? もうすぐお客様が来られる時間ですぞ!」
     大臣がオレを呼ぶ声がする。やべっ、と言ってオレが行こうとすると、ハッサンはオレの体をもう一度抱きしめて、そしてキスをした。
    「ほら、行ってこいよ、王様」
     そう言って、オレの背中をどん、と叩いたハッサンの顔は、仕方がないなと苦笑しているような、……でもどこか寂しそうな、そんな顔で、それを見て、オレは心の奥をきゅっと掴まれたような心地がした。
     ハッサンにも、寂しい思いをさせている。
     オレだけじゃない、という思いが、慰めになり、また余計に寂しさを駆り立てる。
    「ハッサン、また明日、……明日はそんなに仕事ないからオレの部屋でイチャイチャしよ」
    「いや、……お前な、オレだってここに仕事で来てるんだぞ、しかも王様の部屋でイチャつくとか恐れ多すぎるだろ、誰かに見つかったらどうすんだ」
     でも、ま、楽しみにしてるぜ、レック、と言ってハッサンが笑う。オレも笑って、そしてそのまま、ハッサンの方を振り返らずに、急いで走った。
     また明日。また明日、ハッサンに会ったら。いっぱい抱きしめてもらって、キスもして、もっと色々なこともして、……それでまた、頑張ろう。

     大丈夫。
     ちょっとだけ、寂しいけど、…大丈夫。

     オレは、王の間に上るための階段の前で、よし、と気合を入れて、ぱん、と両頬を叩く。そして、またちゃんと王様になるために、一歩ずつ階段を上っていった。
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