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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。前の話の続き。本を探すハッサン。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    本 2 ない。
     いつも背中に背負っている袋を探ってみるが、見当たらない。さらに念入りに、袋の中身を全部ひっくり返してみても、一向に、影も形もない。
     ひょっとして、部屋のどこかに落としたか、とベッドの下やら、廊下やらをきょろきょろと探してみても、どこにもない。
     参ったな、とひとりごち、オレはベッドにどすんと腰を下ろした。
     袋に入れていた、オレの虎の子の、…有り体に言ってしまうと、エロ本。それが忽然と姿を消してしまった。
     どこでなくした?
     昨日の夜には確かにあったはずだ。ただ今朝以降は、……いや、昼過ぎに、袋から薬草を取り出した時に、袋の中でその存在を視界の端で確認した覚えがある。その後は、一度休憩した時に、袋を無造作に馬車の中に置いたような……?
     馬車の中に落としたって可能性は、あるかもしれない。そう思って、宿屋の外に置いてある馬車へ足を向けた。できれば馬車の中で見つかってほしい。とんでもない所から出てきて、レックに見つかることだけはなんとしても避けたい。
     しかし、オレの願いもむなしく、馬車の中には何もなかった。
     気を落としつつ、宿屋の主人に落とし物はないかと聞いてみても何もないと言う。馬車から宿屋のオレたちの部屋への道のりにも、何もなかった。
     ダメだ。一体どこにいっちまったんだ!
     オレがうんうん唸りながら必死で今日の行動を思い返し、部屋の扉を開けると、「おかえり」と、レックから声をかけられた。
    「ハッサン、どこ行ってたんだ?」
     不思議そうな顔でレックが訊いてくる。風呂上がりらしく、少し上気した肌と、上着を脱いだいつもより露出の高いその姿に、内心で少し動揺し、おもわず目をそらした。
    「いや、ちょっと、野暮用でな」
    「ふうん……?」
     レックは微妙に納得していないような口調で相槌を打ち、しかしそれ以上追求する気もなさそうとみえ、そこでオレとの会話を打ち切った。
     やがてレックはベッドに置いていた剣の鞘を手に取り、すらりと剣を抜き放つ。手入れをする気なんだろう。レックが傍らに置いていた布で剣を拭き始めるのを見るともなしに見てから、オレは改めて自分の袋に向き直った。
     ……なんかの間違いで、やっぱり、あったりしねえかな。
     一縷の望みを賭け、袋を開けて、オレは驚いた。
     あった。袋の中に。
     しかも、開けたらすぐわかる場所に。
     ………?
     そんなことあるか? こんな場所に入ってたらいくらオレでも見逃さねえだろ。なんでだ? さっきは確かになかったはずなんだ。それなのに。
     まさか。
     オレは、こちらに背を向け、相変わらず剣の手入れをしているレックを振り返った。
     ……レックが、オレが風呂に入ってる間にこの本を持ち出して、オレが外出している間に返した、という可能性は?
     なくはない。なくはないが。
     レックはこちらに背を向けていて、剣を磨きながら、何やら鼻歌を歌って上機嫌な様子だ。隠し事をしているようにはあまり見えない。
     訊けば何か教えてくれるかもしれないが、逆に藪蛇になる可能性もあるし。
     オレはため息をつき、袋を慎重に椅子の上に置くと、ベッドの上にどっかりと寝転がった。
     そしてちらりと、レックの背中を見る。
     すらりとした背筋、オレより細いが鍛えられた身体。白いうなじと腕にはいつもの金の装身具はつけていない。そのことが風呂上がりだということを感じさせ、オレは気恥ずかしさを覚えてまた目をそらした。
     あの本の、とあるページの登場人物。他の男に後ろから組み敷かれて、気持ちよさそうに顔を歪ませた男の絵がそそるというか、何故か妙に気になってしまって、まあ、持ち運びもしやすそうなサイズだし、体位の一覧本というか、指南本みたいな感じだから、まあいつか役に立つこともあるかもしれないし、…別にあの絵の男が気に入ったからとかじゃねえし、オレは綺麗な姉ちゃんも好きだしそっちも見てえからだし、と自分に言い訳をしてつい、買ってしまった。レイドックの店だった。都会には色んなものがあるんだな、と感心して、そして、そうだ、そろそろ鐘も鳴りそうだし、兵士になる試練を受ける前に教会でお祈りするか、と思って、行った教会で、レックを見て。
     あ、こいつ、さっきの本の、あの絵の男に、似てる、と、咄嗟に思って。
     いや、わかってる。最低だ。
     よりによって初対面の相手にそんなことを思うなんざ失礼にも程があるし、さらにそんなことを思った相手と手を組まないかって言うのは、言われた方からしたら、もし理由を聞かされたら最低だと殴られても仕方ないくらいの話だったとオレも思ってる。
     いや、でも、あの、レックに似てる絵の男が気になったのは、そもそも、オレがもっと前からレックを知ってたからのような、そんな気がしてきて、……自分でも、よくわかんねえんだけど。逆にそれはそれで得体が知れなくて気持ち悪い気もするんだけどさ。
     だから、オレは、到底レックに面と向かっては説明できねえ事情というか感情というかをあの本に抱いていて、絶対にレックにはあの本を見られたくないと思っているんだが。
     もし見られてたらどうする。いや、でも、たとえ見られてても、あの絵の男にそんなこと思ってるってのがバレなきゃまだセーフだ。たぶん。
     もしバレたら、……嫌われるだろうな、絶対。
     出会った時に抱いた印象が最低すぎるが、オレは普通にレックのことを気に入ってるし、ウマも合うし、レックだってオレといる時は結構楽しそうにしている。結構いいコンビだと思ってるんだ。そんな相手に嫌われるのは、辛い。
     その時、ぱちん、と、レックが剣を鞘に収める音がした。
     どうやら剣の手入れを終えたらしい。ベッドの脇に剣を立てかけ、レックは「お待たせ、寝ようか、ハッサン」と言う。
     そうだな、と返して、ベッドの隣の机の上に置かれたランタンの灯にふっと息を吹きかけ、消した。
     真っ暗になった部屋の中で、レックが寝返りを打つ音が聞こえてくる。オレはひそかにため息をつき、さっさと寝よう、と閉じた瞼に力を込めた。
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