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    suzumi_cuke

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    20241230 現パロ鯉月で鯉登少尉殿誕生日2024によせて。誕生日前のある日のワンシーン。今更ですがおめでとう

    イルミネーションのせいじゃない (鯉誕2024) 騒めきがあたりにあふれる師走の終わり。
     まず年の暮れというのは、それだけで色々と終いにすること、納めることが立て込んで忙しい。そこへ来て、舶来の行事ながら今ではどっしりと根を下ろしてしまったクリスマスという存在。早い店では、ハロウィンが終わるなりクリスマスムードを漂わせ始める。
     12月の半ばともなれば、クリスマスツリーが大小問わずあちらこちらで見られるようになり、電飾が道ゆく人の目を引いた。
     特に大きなクリスマスツリーはよく目立つので、この時期限定ではあったが、待ち合わせの目印に最適だった。鯉登もそう思い、待ち合わせはあの駅の広場の大きいクリスマスツリーのところで、と月島に伝えていた。

     横断歩道を渡る前から、ツリーの下に月島の姿を認めていた鯉登は、信号が替わるなり疾風のように道路を駆け抜けた。その勢いで、所在なげに周囲を眺めていた月島も、器用に人を避けながら走ってくる鯉登に気が付いた。
    「すまない、待たせたか」
    「いえ、そんなには」
     そう言って、月島はダウンジャケットのポケットから手を出して、腕時計を見た。デジタルの頑丈そうな黒い腕時計を、鯉登も横から覗き込む。文字盤に光が映り込んで少し見にくいが、待ち合わせの時間ぴったりであった。遅刻してなくてよかった、と安堵のため息が漏れる。ため息とその意味に気づいた月島がふと笑んだような気配があった。
     時計を見ていた月島が、文字盤に映り込む光を追って目を上げた。文字盤にピカピカと反射していたのは、クリスマスツリーの電飾だった。
    「そういえば、もうすぐですね」
    「?……ああ、クリスマス……」
    「いえ、あなたの誕生日ですよ」
    「えっ」
     硬直した鯉登に、月島がやや呆れたように確認する。
    「23日でしたよね?違いました?」
    「いやいや違わん!違わんが……」
     無論、自分の誕生日を忘れるほど耄碌はしていない。そうではなく、月島が忘れていなかったことに鯉登は驚き、ちょっと感動すら覚えていた。
     目を丸くした鯉登からまじまじと見つめられ、月島は拗ねた子供がするように、上目遣いになった。
    「忘れてると思ってたんでしょう」
    「う……」
     そんなことはない、と否定できれば良かったのだが、咄嗟のことでうまく鯉登は取り繕えなかった。
    何せ、世のイベント事にそれほど関心のないイメージがある月島から言われたのだ、動揺もする。動揺はしたが、しかしそれは嬉しい驚きだった。
     そんな鯉登の思いが顔に出ていたのか、月島は機嫌を害した風もなく、肩をすくめた。
    「ま、実際、人の誕生日をいちいち覚えているタイプではないですからね」
    「す、すまん……クリスマスツリーを見ていたから、てっきりクリスマスのことを言っているのかと。そうしたら、誕生日が出てきたから」
    「確かにクリスマスツリーで思い出しましたけど。クリスマスっていうと、なんかもう自動的に思い出しちゃうんですよね」
    「私の誕生日を?」
    「と、鶴見さんの誕生日も」
     そう、鶴見の誕生日はそれこそクリスマスなのである。
     どうやら月島の中で、クリスマスといえば誕生日という連想ゲームが出来上がっているらしい。12月の街中といえば、クリスマスを想起させないものはないだろう。月島は、それらを目にするたびに、自分たちの誕生日のことを思い出しているということなのか。
     それはなんだか、ちょっと気分がいいな、と鯉登は口元が緩みそうになった。
     しかし、ふ、と小さく笑ったのは月島のほうだった。
    「でも本当……私が誕生日を覚えてるって言うと、毎回びっくりしてくれるので、それは少し面白いですね」
     上目遣いのまま、可笑しそうに目を細めて、月島が悪戯っぽく囁く。一般的な笑顔、というにはあまりに控えめだったが、鯉登の目には、それはそれは眩しく映った。
     思わず両手で顔を覆って、鯉登は呻いた。
    「つきしまがきらきらしてみえる……」
    「イルミネーションで目がやられましたか」
    「違うわ!」
     ムッとして睨んでみせながら、鯉登は自分の顔が熱くなっているのを何とか誤魔化した。
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    suzumi_cuke

    TRAINING20240530鯉月。大団円後くらい。かわいこぶって口説いたのに不発に終わった話。何日もしてない!っていっても「先週しましたよね」「もう4、5日経つが!?」って感じ。天然ボケみたいだけど軍曹は本気で少尉が病気なのかと心配していたし、ちゃんと休んでほしいと思っている。
    口説き文句は明解であれ もう何日も、鯉登は月島とまともに触れ合えていなかった。
     別に喧嘩をしているだとか、気持ちが冷めただとか、特段の理由があるわけではない。ただただここ最近、課業が忙しすぎるだけである。
     これで全然会えないというならばいっそ諦めもつく。そうでなく、書類の受け渡しで手が当たったり、振り返った拍子に肩をぶつけたり、そんな触れ合いと言えないような接触を毎日するくらいには、常に近くにいるのだ。
     それだから、課業に没頭している時はともかく、ちょっとした休憩時や、少し気が逸れた時に月島が目に入ると、途端に恋しさが募る。
     ところが、月島のほうはいたって平静なのである。鯉登が次々差し込まれる課業を捌き、珍しく少し早く片付いたという日でも、「早く帰って休みましょう」と諭して解散する、そんな感じであった。休むよりは、二人で熱く濃密な夜を過ごしたいという気持ちのほうが鯉登はずっと強かったが、疲れているのは自分だけではないのだからと己に言い聞かせ、見苦しく駄々をこねることはしなかった。
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