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    suzumi_cuke

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    suzumi_cuke

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    20240831現パロ鯉月。まんなかバースデーにこれといった意味をあまり見いだせない人間だったんですが、同じ阿呆なら踊らにゃ損々というか…鯉登くんならそれを口実にすることで、月島に我儘を言わせやすくする好機と捉えるかもしれないなと思いました。秋は何の記念日を作るかな?結婚記念日?

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    まんなかナントカ 携帯電話の画面をこちらへ向けてきた鯉登は、パァッと音がしそうなほどの笑顔をしていた。
    「見ろッ、月島!」
    「見えません」
     ぶつける気か、と思うほど近くに持ってこられては見たくとも見えない。
    「近すぎます……俺でなかったらとっくに鼻に当たってますよ」
    「自虐か月島ァ!」
    「で、なんなんですか」
     そうだった、と携帯をやや月島の顔から離し、鯉登は画面の中心を指差した。
    「これ! 読んでみろ」
    「はいはい……えー……」
     指し示された一文にはこうあった。
    『鯉登と月島のまんなかバースデーは8月12日❤』
     ファンシーな色と書体でもって書かれたその文章の意味が、俄には理解できず、月島は眉をひそめた。
    「まんなかばーすでー……?」
    「そうだ!」
     何故か得意げに鯉登は胸を張った。月島はそんな鯉登に目をやり、それから改めてそのよくわからない横文字へと目を移した。
     何やら全体的に可愛らしい色遣いの画面には、「まんなかバースデー」なるものについて他にも記載があった。あなたと推しのまんなかバースデーはいつ?お友達やコンビもしらべてみてね!といった宣伝文句が並んでいる。女児向けのページではなかろうか、と月島は余計なことを考えた。
    「二人の誕生日の真ん中の日ということですか……それって何か意味あるんですか?」
    「お前はまたそういう情緒のないことを……」
     口を尖らせて鯉登が不服を申し立てる。しかし、機嫌を損ねたのは一瞬だけで、うきうきと語りだした。
    「この日は、私とお前だけの記念日なんだ。他の誰かとでは成り立たない。特別な日だろ」
    「誕生日が同じ人と付き合えば成り立ちますよ」
    「屁理屈ッ」
     嗜めるように一喝し、鯉登は携帯電話を引っ込めた。
    「私が冬生まれで、月島が春生まれだから、夏に記念日があるのはちょうどいいだろうが」
    「そういうものですか」
     増えたのが祝日だったなら、休みが増えたといって喜ぶのは理解できるが、ごくごくプライベートな記念日が増えて、そんなに浮かれるのはどういう理屈なのか、月島にはピンとこないままだった。
     そんな月島に、じろりと鯉登が目を向けて腕組みをした。
    「月島……この前、私が花を買って帰ってきた時、なんて言ったか覚えてるか」
    「?」
     花を買ってきたことは覚えている。派手なものでなく、趣味の良い花を二、三本取り合わせたものだった。それは覚えているが、どういう言葉を交わしたかは思い出せない。
     そもそも、何のために花を買ってきたのだったか。
     顔色を読み取って、鯉登が仕様がないと言いたげに溜め息をついた。
    「覚えとらんか。今日は何かのお祝いか、記念日だったかと言ったんだぞ」
    「そういえば」
     指摘されて、記憶が芋づる式に引き出された。確かに、そのようなことを月島は訊いており、別にお祝いや記念日ではない、との返事だった。いい花だなと思ったから、と言っていただろうか。何か祝い事のために買ってきたのではなく、買いたいから買ったという、極めて単純な動機ではあるが、そのおかげで、数日は食卓が華やいだものだった。
    「何もない日に花やケーキを買ってきてもいいだろ。でも月島はそうでもないみたいだから」
    「すみませんね。うちは用もなく花を買うような家ではなかったもので。ケーキだって、それこそ誕生日くらいしか……」
    「それだ、それ」
     ぱっと腕を解いて、鯉登は指を振った。
    「別に誕生日じゃなくたって、ケーキは食べていいんだ。でも月島は理由が無いとどうにも腰が重くなりがちだし……口実にできる日が増えるのはいいことだろ」
     今度は月島のほうが腕組みをした。それはいいこと、なのか?
     首を傾げて露骨に不審がる月島に、鯉登は肩を竦めてみせる。
    「無理強いはせん。私は引き続き何でもない日にもしたいようにする。お前に見せたいとか食べさせたいとか、それだけでも私には十分な理由だから」
     微かに月島の目が丸くなった。鯉登は壁に引っ掛けているシンプルなカレンダーの前に立ち、何かを書き込み始めた。
     その背中を見つめて月島は思い出していた。いい花だと思ったから、その後に鯉登は何と言っていたか。
    (月島にも見せようと思って)
     あ、と声には出さず、小さく口が開く。
     それだけの理由で、彼は特別なこと――月島にとっては特別だ――もやってのけてしまう。月島が感じるような抵抗をものともせず、軽々飛び越えてしまうのだ。そして、なかなか抵抗を飛び越えられずにいる月島のために、打開策として「踏み台」を用意しようとしてくれている。
    「こうなれば秋にも何か記念日がほしいところだな……」
    「鯉登さん」
    「ん?」
     振り返った鯉登の肩越しにカレンダーが見えた。8月12日の欄には流麗な筆致で『まんなか』と記入されている。これほど達筆な『まんなか』という字にお目にかかったことはないが、果たしてこれだけを見せられて、意味のわかる者は自分たち以外にいるのだろうか?
    「その、まんなかナントカって、もうじきですよね」
    「まんなかバースデーな」
    「……折角ですから、どこか旅行でも行きます?」
    「!」
     衝撃を受けた鯉登の顔と身体が固まった、かと思いきや、今度はわなわなと小刻みに震えだした。それに気づかず、俯いている月島はぶつぶつと呟いている。
    「ちょうど盆休みの頃ですから、泊りがけでも……いや、繁忙期だからどこも高いか」
    「金なら出すッ!」
    「声デカ……自分も出しますけど……」
     手で片耳を押さえて渋い顔の月島とは対照的に、鯉登は見るからにご機嫌な顔で飛び跳ねるようにカレンダーへ向き直ると、『まんなか』をキュッと大きな丸で囲んだ。
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    suzumi_cuke

    TRAINING20240530鯉月。大団円後くらい。かわいこぶって口説いたのに不発に終わった話。何日もしてない!っていっても「先週しましたよね」「もう4、5日経つが!?」って感じ。天然ボケみたいだけど軍曹は本気で少尉が病気なのかと心配していたし、ちゃんと休んでほしいと思っている。
    口説き文句は明解であれ もう何日も、鯉登は月島とまともに触れ合えていなかった。
     別に喧嘩をしているだとか、気持ちが冷めただとか、特段の理由があるわけではない。ただただここ最近、課業が忙しすぎるだけである。
     これで全然会えないというならばいっそ諦めもつく。そうでなく、書類の受け渡しで手が当たったり、振り返った拍子に肩をぶつけたり、そんな触れ合いと言えないような接触を毎日するくらいには、常に近くにいるのだ。
     それだから、課業に没頭している時はともかく、ちょっとした休憩時や、少し気が逸れた時に月島が目に入ると、途端に恋しさが募る。
     ところが、月島のほうはいたって平静なのである。鯉登が次々差し込まれる課業を捌き、珍しく少し早く片付いたという日でも、「早く帰って休みましょう」と諭して解散する、そんな感じであった。休むよりは、二人で熱く濃密な夜を過ごしたいという気持ちのほうが鯉登はずっと強かったが、疲れているのは自分だけではないのだからと己に言い聞かせ、見苦しく駄々をこねることはしなかった。
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    Lemon

    DONE🌙お誕生日おめでとうございます!!!!!!!!!!
    現パロ鯉月の小説。全年齢。

    軍会イベント参加記念の小説です。
    ※誤字脱字など、チェックできていないので後で修正します。
    ※はるか昔の明治時代を駆け抜けた人たちに似たような登場人物が出てきますが、当て馬も浮気も一切ありません。100%安心安全の鯉月設計でお送りします。
    お誕生日おめでとう!!!
    酔いどれエイプリルフール慣れない苦味が喉を滑り落ちて、かっと腹の方からの熱が全身に広がる。もう既に頭は朦朧としていて、我ながら吐き出す息は酒臭く、鼻を摘まみたくなった。俺の鼻に摘まめるほどの高さがあればの話だが。鼻を摘まむ代わりにアテを少し摘まみ、再びジョッキをグイっとあおる。

    エイプリルフールの日に年甲斐も無く酔っぱらうことが、ここ数年間の月島の恒例行事となっている。


    三十路の大人がする飲み方じゃないのは分かっている。
    分かっているが、この日は正体が分からなくなるくらいに酔っぱらいたいのだ。だが、同時に、この日だけは酔いつぶれることなく、なるべく長い間、酔っぱらっていたい。酒の美味さだとか、種類ごとの味の違いだとか、俺にはさっぱり分からない。貧乏人の舌にそんなことは判別できないのか、俺が味音痴なのか。そもそも酒には嫌な思い出しか持たないから、味わおうとすらしていないのが正直なところだ。
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