現代の平和な日本で再び出会った元上官兼元恋人は、前世と違い、自分より年上であった。
「なんというか……新鮮ですね……」
感心半分、呆れ半分で見上げる月島に、鯉登は腰に両手を当てて、自慢げにふんぞり返った。
「いいだろう?『前』にお前が『年上が好み』だと言っていたから、来世こそはと頑張ったんだ」
「頑張った」
何を頑張ったというのか。頑張ってどうにかなることなのか。いやいやそれよりもだ。
「あれ、本気にしてたんですか」
「えっ」
「当初あなたからのアプローチがあまりにしつこかったので、諦めてもらおうと思って言ったことだったんですが……」
「では年上が好みというわけでは……」
「とりたてては……」
だいたいこう言ったところで迫るのをやめるわけもなく、結局根負けさせられて、前世は前世でずっと一緒だったではないか。
「…………」
「…………」
茫然と口を半開きにしたまま、鯉登は硬直してしまった。気まずい沈黙が落ちる。
自分の不用意な一言が彼の人生を変えてしまったのであれば、なんとも申し訳ない限りだが、本気で実現させるやつがあるかという思いも正直あった。怒ったか、落ち込んだか、と鯉登の顔を観察していると、ほどなく硬直はとけて、その顔がにやりとした。
「年齢など問題ではないということだな!」
「限度はあります」
「なんッ……」
「でも見た限りそんなに離れてなさそうで安心しました」
またしても硬直されてしまう前に、月島は言葉を付け加えた。焦っていた鯉登の顔がみるみるうちに輝き出した。
「だ、だろう?」
「干支一回り以上離れてたら諦めたかもしれませんが」
「諦めるなそこは!」
私は諦めなかったぞ、と言わんばかりに必死に訴える姿はとても年上とは思えず、月島はつい苦笑いをこぼした。