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    suzumi_cuke

    @suzumi_cuke
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    REHABILI20230521鯉月(鯉→月)。身体の関係はあるけど両思いかは微妙な時期(大団円前)。うちは軍曹が割りと塩対応です。
    好みでない相手が好みになるまで 初年兵の教育を終え、兵舎の廊下をミシミシ鳴らしながら執務室へ向かっていた鯉登が、不意に斜め後ろについて歩く月島にこそっと耳打ちをした。
    「今晩部屋に来い」
     手元の書類に目を落としていた月島は、怪訝そうに顔をあげ、隣の上官へ尋ねた。
    「部屋に来いとは」
    「無論、そういう意味だ」
     平然と返され、月島は白目を剥きそうになった。「そういう意味」が何かわからぬわけではない。何故なら、鯉登からのこのような――同衾の誘いはしばしばあることだからだ。そして月島はそれを受けたことが一度ならずある。拒みきれずやむなくのことであり望んでのことではない。
    「……他を当たられては」
    「月島がいい」
     歩きながら一歩隣に詰め寄られ、同じだけ月島は身体を引いた。するとまた鯉登が距離を詰めてきたので、月島は腕を擦るか擦らないかのところまで兵舎の壁に身体を寄せた。花沢少尉と壁に挟まれている尾形の姿が思い出された。当時は何やってるんだと思っていたが、いざ似たような状況に置かれてみると人のことは言えない。
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    DONE20230401祝月島誕。月島基軍曹殿、お誕生日おめでとうございます!
    祝い続けて3年目。誕生日のことはチラッとしか出てこないいつもの鯉月です。

    正直なこと言うと、潔く散るよりも泥臭く足掻いて足掻いて見苦しくても生き残る鯉月が好きなので、「桜か?」って言われると「いや…?」って気持ちもあるんですが綺麗なものを見て好きな人を思い出すのってなんかいいよね頭が春だねってことで許してください(言い訳)
    護花鈴の胸中 鯉登が陸軍大学校を卒業した翌年のことである。
     重要書類の受け渡しと諸々報告のため、遣いとして東京へ赴くこととなった鯉登は、定限も間近の部下、月島を連れ立って帝都へ来ていた。
     朝一番に仕事を速やかに終わらせ、半ば接待のような昼食を見事な作り笑いでやり過ごした二人は、受領した新たな書類を手に、三宅坂の参謀本部を早々に辞すことに成功した。
     解放感に満ちた足取りで昼下がりの暖かな陽の光の下を歩く。あとは北の地へ戻るだけだが、急いで戻るのも味気ない。駅までの道を遠回りすることで、二人は束の間、久しぶりの帝都を味わうことにした。
     なにせ、とてもよい季節なのだ。
    「こちらはもう桜が満開だな」
     あちら、つまり北海道では、ようやく残雪を気にせずに済み始めた頃だというのに、二人の眼の前では、宮城をぐるりと囲む淵に沿って、桜並木がその枝をのびのびと伸ばし、地面を覆うように淡紅色の花の雲が広がっていた。
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    DONE20230116まだ添い遂げると思ってない鯉月。金塊争奪戦後最初の冬くらい、事後。


    軍曹は軍人であるうちは右腕となって助けようと決めてたけどまさかその後も一生右腕するとは思ってなかったので、この時点では好きになりすぎないように…とセーブしてたんじゃないかという妄想。望んだ春は来なかったがもっとウルトラハッピーな春が来る。書いてる途中で「DEPARTURE○だな…」と思ってしまった。
    望んだ春は来ない 耳を澄ますと、雪の降る音が聞こえた。雨のようにはっきりとではないが、雪にも音がある。さらさらと、屋根を、前栽を、粉雪が払いながら落ちる音だ。月島は足を止めて、音のするほうへ首を巡らせた。
     外はもう夜の帳が下りていて、ガラス障子を隔てて縁側から望む月島には庭の様子が朧げにしかわからない。雪明かりがでこぼこと庭木の不安定な輪郭を形作っている。
    「月島ぁ」
     眠たそうな鯉登の呼び声が、縁側を挟んで庭の反対側、まだ明るい部屋のほうから聞こえてきた。
    「はい」
     つい立ち止まってぼんやりしていた月島は声の方へ足を向けた。ミシ、と雪音を掻き消す無骨な音が響いた。

     寒風が入らないよう、明障子を細く開けて、隙間から月島は身体をさっと滑り込ませた。
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    DONE20221001身体の関係始まった頃くらいの鯉月。純粋であることと計算高いことは両立する。少尉はぴゅあぴゅあだけどハッタリかませるクレバーな男であることを忘れずにいたいという…伸び代もありますしね。
    https://twitter.com/suzumi_cuke/status/1576180147639549952
    可愛い犬にも牙はある「初恋が実らないというのは迷信だったな」
     それは、鯉登からの何十回という交際の申込みを月島が断りに断り続け、どう断っても諦めようとしない鯉登の態度に音を上げた末、仕方なく形の上では受け入れることになってから数日経った日のことだった。兵の訓練を指導して戻る途中である。
     何故か得意げに発された、その聞き捨てならぬ言葉は月島の軍帽の下の眉間に深い皺を形成した。
    「まるで私が初恋の相手のように聞こえるのですが……」
    「そうだが?」
     何を当然のことを、と言いたげに鯉登の目が軽く見開かれる。
     ――いや、なにが「そうだが?」なのだ。
     大体、既に何度も玉砕しておいて、今更これを「実った」と言ってよいのか。月島としては、どうにか鯉登には目を覚ましてもらって、当人にふさわしい、本当に好いた人を見つけてもらうまでの繋ぎの相手のつもりでしかないのであるが。さも当たり前のような顔が妙に苛立たしく、月島は胸の当たりがもやもやした。
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    DOODLE20220605匂わせ程度の鯉月(鯉→月)、メインは俺モブ兵が軍曹の読んでる本について知りたがる日常系の話。気分転換に書いてたら最後まで書けたので置いておきます。
    みんな大好き軍曹殿の愛読書 俺が所属する歩兵第二十七聯隊には、皆から慕われる古参の軍曹殿がいる。

     身長は徴兵資格をぎりぎり通るくらい、そんなに高くない。俺より低い。ところがガタイがとんでもない。下士官と兵は入浴の時間が違うのだが、たまたま遅くなったらしい軍曹殿が風呂から出て着替えているところに出食わした時、そのたくましいお身体に、俺は正直吃驚してしまった。数え切れない傷を刻んだお身体は、服の上からでは思いもつかないほどに鍛え上げられ、腹の筋肉などは八つくらいに割れておられた。触ると多分鉄板のようにカチカチなのだと思う。思わず口を開けて見惚れていると、軍曹殿はやや気まずそうにして、「じろじろ見るな」と背を向けてしまわれた。そうするとどうだ、背中にはそうした傷はなく、きゅっと褌を食い込ませた尻のなんと張りがあって柔らかそうなこと……俺はさっきと別の意味で、軍曹殿が着替えを終えるまで目が釘付けになってしまった。(ぼんやりするなとどやされてしまった)
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    MEMO20220422 大団円後のモブ視点鯉月if話のプロットです(プロットではないです)。時代考証とか何も考えてません。追記:さすがに佐官は盛りすぎました。
    金塊争奪戦後の鯉月ifサッポロビール工場や五稜郭の戦いはロシア人ゲリラたちの鎮圧のため、列車内の惨劇はヒグマと土方歳三率いる脱獄囚によるものということになった。部下を多数失ったことや権利書を横領しようとした件は行方をくらませた中尉に全ての罪をひっかぶせて、残った部下を守るために少尉は奔走する。親が軍高官であることや、中尉に騙されていたむしろ被害者であること、顔に大怪我を負ってまで戦い抜いたことが評価され、少尉の罪は不問になる。
    だが中尉の腹心の部下で下士官だった軍曹は罪を免れることは出来ず、また本人もそれは望まなかったため、免官となり再び陸軍監獄へ入ることになった。

    何年かが経ち、そんな争奪戦のことも知らない若い兵士が新たに師団へやってきて、進級して大尉になっていた鯉登元少尉の下につく。休暇ともなると、鯉登閣下は誰にも何も言わずに外出しているので、ある時どこへ言っているのか尋ねると「想い人に会いに行っている」のだという。それからも時々休み明けに気力充実している鯉登閣下の顔を見ては、「あ、想い人に会ってきたのだな…」と部下は微笑ましく思っていた。いつも閣下が会いに行くばかりで、一緒に外出やご旅行などもされた様子が無いし、もしやその想い人とはどこぞで囲われている芸者か遊女であるまいか、と心配にもなったが、何より鯉登本人が嬉しそうなのである。「囚われの姫のようですね」と言うと、鯉登閣下はキョトンとした顔になってから大笑いして、姫か、それはいい、あいつはどんな顔をするだろうなと目を細めた。
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    TRAINING本誌306・307話のセリフや描写がバリバリ出てきます。ネタバレと自己解釈全開で書いた。主に少尉目線で、軍曹を助けようと奮闘している鯉月?の話。今しか書けないだろうなあと思ったので…大事なのは勢い…(自分に言い聞かせてる)(本誌近くて気持ち悪くなってる)
    306→307話の行間 無鉄砲が救うもの 続く車両のドアを開けた瞬間、眼に飛び込んできた光景に鯉登は総毛立った。
     巨漢に掴みかかった月島が、掲げた左手を今にも振り下ろそうとしている。その手の中には手投弾があった。
     ――月島は死ぬ気だ。

     考えるより先に身体が動いていた。声が出ていた。
    「月島ッ」
     呼び声に月島が顔を上げる。視線が鯉登の顔を捉えた。険しかった月島の表情が一瞬はっと驚愕を示したあと、さらにその険しさを増した。
    「来るなッ」
    「よせ月島ッ」
     叫びながら鯉登は駆け寄ろうとした。
     馬鹿馬鹿、なんて馬鹿な奴だ。そんなことをしたらお前も死んでしまうではないか。手投弾の威力は、お前ならよくわかっているだろうに。
     ――いや、一番の馬鹿は私だ。
     月島は鶴見中尉殿のためなら死ねる。どれほど危ないことでも、どれほど汚いことでも、己の心を殺してやり遂げる。己を顧みようとしない。そういう男だと、わかっていたはずじゃないか。わかっていたのに。
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    MOURNING鯉月。樺太帰り道の杉リパ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14554097)のオマケで前に書いた短いやつ。193話後くらい。賑やかしに置いておきます。怪我してるから血の臭いがするのか人殺しだから染み付いているのか、どちらにせよ良いことではない
    193話後くらい むくりと音もなく起き上がると、鯉登はかぶっていた上着を手に月島の枕元に立った。
     寝台に手をつくと、聞こえるか聞こえないかといった程度に軋む音がして、耳聡く月島が薄く目を開けた。自分の顔を覗き込んでいる鯉登に気がついて、不審そうに眉をひそめる。
     鯉登は真顔で見下ろしていた。
    「寒くて眠れんだろう」
     ぼそりと低い鯉登の呟きに、月島はしょぼ、と瞬くと億劫そうに答えた。
    「……さっきまで寝てましたが……」
    「一緒に寝てやる」
    「いえ結構で」
    「狭いな。少し詰めろ」
    「話を聞かない……」
     上着をばさりと月島がかぶっている毛皮の上にかけると、鯉登は寝台にあがった。鯉登に押しやられ、どう考えても定員を超えている寝台に月島は鯉登と並んで横になった。鯉登と壁に挟まれながら、月島はとにかく心を無にしてこの時間をやり過ごそうと決めた。決めた矢先に、鯉登が月島のほうに身体を向けてきた。吊ったままの腕を広げる。
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