愛も酒もそそいだ結果 日々の暮らしを月島が鯉登と共にするようになって、幾度目かの春を迎えた。それは4月1日生まれの月島にとって、幾度目かの誕生日を祝ってもらうことと同義だった。
誕生日だからと張り切る鯉登に、入店を躊躇するような高級レストランへ連れていかれることもあれば、どこで勉強したのか綿密に準備した手作りの料理を振る舞われることもあった。休みの日だったときは、一日外には出ないで済むようデリバリーで乗り切ったこともある。
己に対して無頓着な月島にとっては、誕生日もまた殊更意識するものではなかった。書類に記入する時の年齢も一瞬確認するくらいだ。そんな月島にもっと自分を大事にしろと鯉登が繰り返し言って聞かせ、実際に行動するものだから、そのお蔭でここ数年の誕生日は人並みに年中行事となっていた。
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