ライオネットゴールド(前半)オーブには、昔から数多の神を祀る習慣があるという。
科学が劇的に進化し、宇宙進出も人間の遺伝子操作も一般的になった時代において、宗教の意義は薄れつつあるが、それでも人々は神々を詣で、婚礼の儀を行う際には神殿の神の前で愛を誓う。
プラント対地球(最終的にはオーブ)の二度目の大戦が始まったばかりの頃、オーブの国家元首が婚礼を挙げた(そして、その最中に旗色不明のMSによって拉致された)神殿も、それ以来はずっと静けさを保っている。崖から海に向かって伸びる石畳の階段が、神殿らしい重厚さを演出する。
マジックタイムとも呼ばれる、薄紅色の夕闇に沈みつつある神殿に、ひとつの人影が現れた。海を背に、崖へ上がってゆく石畳の階段を眺めながら、ある場所に思いを寄せていた。
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