含光君は〇〇がお好き?「出来た!」
魏無羨は出来上がった霊符を掲げ、達成感のあまり大きな声を上げた。添削をしていた道侶に横目で見られたが気にしない。先日から改良を重ねていた姿を変える霊符がようやっと完成したのだ。ここに至るまでの道のりは険しく、藍忘機が女性になったり、魏無羨が幼子の姿になったりと紆余曲折あったのである。
但し、画竜点睛を欠く。本当に望み通りの姿になるのか、なったとして己を見失わないか。試してみなければ分からないのだ。とは言え、前回自分に試してああなった訳で、かと言って他人には試せない。さて、どうしたものか、と思案した時、
「私が試そう」
「流石藍湛!俺が何したいか分かってるな。でも、本当にいいのか?あの一件で藍先生にはこれでもかって怒られたしな」
「構わない。君が自分で試すよりはいい」
魏無羨は羨羨であった時の数々の言動を思い出し、羞恥で顔を赤くした。いくら恥知らずであっても三歳の自身の言動には我慢ならなかったらしい。
そうこうしている内に藍忘機は添削を終えていたようだ。皆まで言わずとも、自分が次に何をしたいのか彼はちゃんと理解している。
大抵のことは笑い飛ばす魏無羨ではあるが、三回も藍啓仁に小言を食らうのは避けたかった。だが、幸いなことに藍啓仁は数日、雲深不知処を空けている。つまり試すなら今である。
そして魏無羨は大変思い切りの良い人物だった。直ぐさま思考を切り替え、霊符を掲げる。
「よし!じゃあ準備はいいか?藍湛」
「うん」
「心配するな。何があっても俺がいる」
「最初からしていない」
藍忘機が寄せてくれる全幅の信頼が嬉しくて愛おしい。その言葉にどれだけ救われているか、彼はきっと知らないだろう。
霊符が燃え尽きると同時に藍忘機の姿が見る間に縮んで行く。
玉のように非の打ちどころのない顔(かんばせ)はそのままに愛らしくなり、頬はまろく僅かに朱掛かっている。しなやかで逞しい体躯は幼子らしく華奢なのものに。
小さくなったことで抹額は額からずり落ちて輪のように首に掛かっていた。白い校服に埋もれる彼は頬ずりしたくなるほど可愛らしい。
「藍湛!」
「うぇいいん?」
「……藍湛、お前ってやつはなんて可愛いんだ!!可愛すぎて攫われやしないか哥哥は心配だぞ!」
魏無羨を呼ぶ声は高く、舌足らずで衝動のままに小さな藍忘機を抱きしめてしまう。普段の彼も美しいが、幼子になると美しさと愛らしさが際立つ。その美貌は幼少の頃から完成していたらしい。
「おっと、肝心なことを確認してなかった。記憶の方はどうだ?」
「だいじょうぶだ」
柔らかな頬を指で突くと、拗ねたように顔を背ける。姿に引き摺られているのか、三歳の藍忘機は大人よりずっと感情豊かなようだ。
ふふ、と笑って阿湛、と優しく呼び掛ける。すると彼は頬を膨らませて魏無羨を見上げた。
「……きみのほうがかわいい」