はっかいおたおめ「あーっ何してくれちゃってんのタケミっち!!」
イヌピーのパフェに気を取られている隙に、八戒のパフェのアイス部分が武道によってかっさらわれていた。
うまー、とにっこにこの武道と自分のは取られまいと避難させる千冬、苺をやるかわりに大寿に一発入れてこいと言った口で「オレのも食うか」とあーんしようとするイヌピー。
「悪かったって、オレのもやるよ」
あーん、と差し出されたスプーンにすぐさま機嫌を直す八戒。
へへ、と笑ってケーキも追加しようかなぁとメニューを見始める。ファミレスの従業員は女性が多いから、代わりに言ってもらわないと頼めないんだけれども。
「考えて見りゃこの面子、聖夜決戦の時のだな」
感慨深そうに千冬が呟けば、イヌピーは少し居心地悪そうだった。
「次来るときに、ココ君と大寿君と三ツ谷君と柚葉もいたら完成版聖夜決戦だな」
大寿君、甘いもん好きでしょ?
悪戯っぽく武道が片目をつぶる。隣の八戒が「げぇー、大寿いたら楽しくないよ」とあからさまに嫌そうだ。
「そうだな…ココは沢山食うから、メニュー制覇しそうだ」
そんな日が来ますように。
マイキーを止める。巨悪にしないために。ドラケンの最後の願いを叶えるために。
袂を別った友を日の下に戻してやりたいなんて、他人から見たらバカみたいだろう。
わが身は可愛くないのか、大切な人を悲しませる気かと。
見捨てたくないのは武道の我儘。そんな武道を見捨てたら、一生後悔する気がした。
武道は東卍の心だ。入隊したのは解散の年で在籍期間はかなり短い。
だけどネームバリューに惹かれたわけでも東卍の誰かに憧れて入隊したわけでもない。
マイキーに乞われて入隊し、東卍の危機に際して活躍してきた。
バラバラにならないように、ひとつひとつ拾い上げて。
これはマイキー君の大切なもんでしょ、と。
差し出されたそれをマイキーは受け取らず、離れていく道を選んだ。
武道はそれを持ち続けたまま、マイキーに返す気でいる。
東卍の心。それはマイキーの心でもある。
マイキーは人でなしなんかではない。東卍は仲間を助ける、そのために生まれた族なのだから。
「千冬、やっぱそのTシャツはねーわ」
八戒の正直な一言にイヌピーと武道が力強くうなずいた。
了