花の約束 空玄 「悟空おかえり!」
「お帰りなさい!」
「こらっ!その泥だらけの手で悟空に抱きついてはいけませんよ!手を洗ってきなさい」
『はーい』
都での仕事を終わらせて帰るとそんな光景が繰り返され俺は目を丸くした。
「悟空、お帰りなさい。すいません、私は手が汚れてるのであなたに触れられませんが気にしないでください」
そう言った後玄奘はすぐさま花壇の方にしゃがみ込んだ。
「…何、してんだ?」
隣にしゃがみ込んだ俺に驚いたもののすぐに花壇へと玄奘は視線を移した。
「花の種を植えてたんです」
「花?」
「はい。近所の人にいただいて…」
「なんの花なんだ?」
「それは教えてくれなかったんですよ。けれど、咲く時の楽しみが増えた、と思うと楽しみではないですか?」
「そう言うもんかねぇ…」
「育て方はちゃんと教わったので大丈夫ですよ!悟空、咲いた時は一緒に見ましょうね。子供達とも一緒に」
そう言って玄奘は笑った。
花、そう聞くだけで俺の中の前世の記憶が騒ぎ出す。けれど玄奘はそんなこともなく…今の俺に笑いかけて一緒に花を見ようなんてことも言ってくれた。それが嬉しくてたまらない。
きっと、こいつにはバレているのだろうけど
「ああ、そうだな…見よう、じゃあ約束だ」
そっと小指を差し出せば嬉しそうに笑って玄奘は小指を絡めてきた。
頬も手も土で汚れていたけれど、それが玄奘らしいと思えた。俺が好きな玄奘はこう言うがむしゃらなとこだと気づき、思い知らされ、笑って笑みを深めた。
…キスをしようとしたら止められたのは癪に触ったから玄奘の手が綺麗になった後思い切りキスしてやったのは秘密だ。
-Fin-