全てはあなたのため 「イヴァンってモテるよね…」
じと、とした目で見つめる恋人であるゲルダに何なんですか突然、と言ってイヴァンは視線を交じ合わせた。
「だ、だって…イヴァンって見た目も悪くないでしょ?綺麗な顔をしているし…、気遣いもできて周りをよく見ていて頼りになるし…、普段は意地悪かもだけどやっぱり基本的にお兄ちゃんだから優しいし…、私を急かすようなこともしないし…、モテる要素しかないなって思って…思って…」
そう言ってしおしおとゲルダは萎んでいく。
「ふふっ…」
「ど、どうして笑うの!?」
私は本気で落ち込んでいるのに!と怒ればイヴァンの細い指によってつん、とその頬を押されてしまう。
「だって、あなたが全く気づいていないのがおかしくて、それと同時に恨めしくて」
「ええっ…?」
「まあ、顔のことは置いておくとしてでもですよ。ゲルダ」
そう言ってゆるりと自然にイヴァンはゲルダの手を取り自分の指と絡めるように繋ぎ出す。
「あなたが言った私がモテると言った要素全て、あなただから向けられることだと考えはしなかったのですか?」
「へ」
思いつかなかった、と言わんばかりに間抜けな声と表情をさせるゲルダにイヴァンはまたくっくっと笑った。
「周りに気がつくのはあなたのためですし、優しいのもあなたにだけ、待ってあげるのも全部…あなたのためなんですよ。分かりませんか?」
「そう…なの?」
「ええ、そうです。というか、村から離れたあとはずっと女王の元にいた私がモテるなんてことあるわけがないでしょう」
「ええ〜…でも…」
「例え、仮に…そう言うのがあったとしても、私はあなたにしか興味ありませんから」
キッパリと言われてしまいゲルダの顔に熱が集まっていく。
「イヴァンってば、ずるい…ずるいわ…」
「ズルくて結構。それより、ハリセンボン…いいえ、フグみたいになっていますよゲルダ」
そう言ってイヴァンは楽しそうに頬をつつきますますゲルダは頬を膨らませた。
「イヴァン〜〜!」
「ふふ、本当…可愛い人だ」
「えっ」
今なんて、と追求する暇を与えないと言うようにすぐさまゲルダの唇に自分の唇を押し当てた。すぐに離れた唇だったがはらりと垂れたイヴァンの前髪がちらりと見えるイヴァンの瞳がゲルダの心臓を鷲掴みするような衝撃を与える。
「いゔぁ……んっ、」
また重ねられた唇に顔を上げるとイヴァンがあまりにも楽しそうな顔をしていたものだからゲルダは何も言えなくなってしまう。
(しょうがないなぁ…)
そんな言葉をキスで押し込みながらキスを受け止めるゲルダだった。
-Fin-