日の光の下 「千鶴ちゃん?」
千鶴が目を覚ましてから暫く、怪我もまだ完治していないというのに千鶴の姿は寝室になくそれを探し回っていたところで八郎は洗濯物を干す千鶴の姿を見つける。
「八郎さん!」
名前を呼ばれてぱっと花が咲くような笑顔を浮かべた千鶴は振り向こうとするが八郎に後ろから抱きすくめられてしまいそれすら叶わなかった。
「…八郎さん?えっと、これじゃ、顔が見えませんが…」
「…いいんです、これで。僕が見られたくないので」
「…はあ」
「…どうして君はじっとしていてくれないんですか?寝室に君の姿がなくてどれほど僕が驚いたのか、怖かったのか君は知らないのでしょう」
「…心配、しました?」
「しました。とても。」
そう言って八郎の千鶴を抱きしめる力がぎゅう、と強まる。
「八郎さん、顔が見たいです。…見せて、くれませんか?」
そう千鶴に言われ八郎がゆっくり抱きしめていた腕の力を緩めるとゆっくり千鶴は八郎の方へと振り向き、笑顔を向けた。
「心配してくれてありがとうございます。でも、本当に大丈夫なんです八郎さんや松本先生のおかげで大分よくなりましたし少し動いておかないと身体が鈍ってしまうので」
「…君って、新選組にいた時からそうでしたけど…頑張り屋さんですね」
「そうですか?」
「はい。そういうところは君の美点で好ましいと思います」
そしてそっと八郎は千鶴の頬、そして額に口づけを送る。
「は、八郎さん…!」
かぁ、と顔を赤くさせる千鶴に八郎はくすくすと笑みを返すと隣に並んで先程千鶴が干していたのと同じように物干し竿へと掛けていく。
「手伝いますよ。それに二人でやったほうが早く片付きますから」
「…ありがとうございます」
「礼には及びませんよ。それに早く終われば君との時間が作れますから」
「っ…はい」
そんな初心な千鶴の反応にくすくすと笑い声を上げると他愛ないのない話をしつつすっかり平気になった日の光の下で笑い合う八郎だった。
-了-