一緒にくっついていよう 「……っ、……!」
がばりと起き上がるとはあ、はあと荒い呼吸を繰り返しぐっしょりと掻いた汗を手の甲で拭う。そして隣で眠るナイヴスの手首の脈を測り、息があることにほっと安堵の息を吐く。とはいえ…安心したとしてもこんなに心臓がバクバクうるさく音を立てているのではすぐに眠りにつけるようなものではない。だから、とキッチンへと向かおうとベッドを抜け出そうとした私だったがぱしりと腕を掴まれ思わず振り返る。
「ノワール……どうかしたか?」
寝ぼけたような声を出すナイヴスに一瞬驚く。
「ううん、ちょっと眠れなくて…飲み物でも飲もうかと思って」
「…嫌な夢でも見たか?」
「どうして…」
言い当てられてしまい驚きの声を上げると「好きな女のことだからな」と言われ、自然と身体に熱が灯る。
「それで?…嫌な夢は人に話したら正夢じゃなくなるとも言う。だから、ノワールさえよければ話して欲しい」
「えっと…」
そう言われ、夢の内容を話してみることに。
本当に、悪夢って感じの夢だった。クリムソンを殺せと言われ、現実の私は殺さないことを選んだけれど夢の私は殺すことを選んで、でも殺す決断を本当の意味で下すことができなくて、クリムソンはソードの手で死に、そして泣き崩れる私を置いていくようにソードはそのままナイヴスに手を下しナイヴスは機械人形に。そして感情を持たない、完全なる機械人形となったナイヴスは侵入してきたレインにナイヴスは殺されてしまい、動かなくなったナイヴスを抱きながら私は永遠に泣き続ける…そんな、そんなあったかもしれない未来のような…夢だった。
「そうか…」
話を聞いたナイヴスはそう言って頷いた後私をそっと抱き寄せた。
「悪い…」
「どうしてナイヴスが謝るの…?」
「どうしてって、泣かせているのは俺だろう。だから謝る、至極当然のことだと思うが…」
「それは違う、勝手に私が不安になっているだけで…」
「だったら俺も勝手にお前を心配するしお前を慰めさせてくれ」
そう言って包み込むように抱きしめられるとナイヴスの心音がとくとくと聞こえてきてそれに酷く安心させられる。
「…こわ、かった」
ぽつり、ぽつりと溜め込んでいた不安がぽろぽろと零れ落ちてくる。それにナイヴスはうん、うんと相槌を打ってくれてその優しい声に心が満たされていくのを感じる。
「ナイヴスがまた、いなくなってしまうんじゃないかって、現実だと思っていた方が夢で、夢に見ていた方が現実なんじゃないかって、そう…思ってしまって、」
「だが、俺は今…ここにいる。君の、ナスカのお陰で」
「ナイヴス……」
「だから、安心してくれ」
そう言ってちゅ、と音を立ててナイヴスからのキスが私の額に落ちる。
「どうだ、落ち着いたか?」
こくりと頷くとそのままナイヴスに手を引かれながらぽすんと頭を落とした枕は音を立てて、寝転んだ。
「わ、」
「安心したのならこのまま眠ろう」
「このまま…?」
繋いでいた手は自然と離れ私の背にやられそっと抱きしめなおされる。それにぎこちなく抱きしめ返すとくすくすととナイヴスは笑った。
「こうしていたら安心しないか?」
「する…」
「だったら明日起きるまでこうしていよう。それに今日だけじゃなくたってナスカが望むのならいつだってこうやってくっついていよう」
「…ナイヴスは、ヤマトは…嫌じゃない?」
「嫌なワケあるか。それに俺と君は恋人だ。だったらこうやってくっつくことも不思議じゃないと思うが?」
「うん、そう…だね。それに私も…ヤマトとはくっついていたい」
そう思っていたことを口にすると鼻の頭にキスが落ちる。
「…このままだと終わりそうにないし、そろそろ寝るか」
「うん……おやすみ、ヤマト」
「ああ、ナスカ」
最後に頬にキスをしてゆっくりと瞼を閉じる。ナイヴスがこんなに近くにいることが嬉しくて、ふわふわとした気持ちのまま私はゆっくりと寝入っていった。
-Fin-