嫉妬心 久しぶりに休みが取れたビラールと久々のデート!とはしゃいでいた私だったがその元気さも現実を見せつけられ萎んでいってしまう。
(また…)
ビラールはかっこいい。それは中身だけでなく見た目もそうで、すれ違う人がみんな振り返ってビラールの方を見て顔を赤く染めていてその事実に私の中にもやもやとした感情が生まれる。
(ビラールは私の…なのに、)
なんて思うのは勝手だろうか。それでも私の中の嫉妬心は止まってくれず思わず視線も下がってしまう。
「ーー……ル、」
(ああ、本当私って嫌な女だわ…)
「ーー……ル、」
(こんなんじゃビラールに釣り合う日なんて来るわけが…)
「……ルル?」
気づいた時にはビラールの綺麗な顔が私の目の前に迫っていて驚きのあまり唾を飲み込んでしまう。
「び、ビラール…!?」
「何かあったか?久々の逢瀬なのだ、私は我が妃には笑っていて欲しいのだが」
「ビラール…」
優しくビラールは笑うと私の頬を撫でる。
「何がルルの顔を暗くさせている?…私には、話してくれないか?」
「ず、ずるいわその言い方!」
言葉が通じる前から変わらないしゅんとした様子のビラールに思わず声を荒げる私にビラールはにこりと笑った。
「だったらその憂いの理由を教えてはくれないか?」
「そ、それは…っ」
「ルル?」
街中の往来で立ち止まって顔を近づける男女。そんな客観的な事実だけでも人の視線が集まるというもの、けれど前の私なら恥ずかしがっていただろうが今の私は羞恥ではなく別の感情に支配されてそのまま踵を浮かせた。
「!」
驚いたようなビラールの表情がよく見える。けれど追求されることが怖くて、恥ずかしくてその手から逃げ出そうとするが私より長いビラールの腕によって捉えられてしまう。
「きゃっ!?」
「愛しい妃の口付けに喜ばない私ではないが…珍しいではないか。それはルルの憂いと関係あるのか?」
そんな風に言いながらビラールは私を抱き上げている。最早逃げることさえ叶わず私は観念して、その身をビラールに任せた。
「…ビラールが、」
「私が?」
「…すれ違う女の人に見られていたから…それが嫌で…だって私は大人っぽくもないし、ビラールに釣り合わない…」
「…そんなことないと思うが。ルル、ヤキモチを妬いてくれたということか?」
その言葉にかっと私の頬に熱が集まる。
「そうよ!妬いたの!すごく!たっぷり!とても!」
怒ったように言うけれどそれにビラールは何故だか嬉しそうに笑った。
「ど、どうして笑うの!?」
「愛しい妃に、妬いてもらえて嬉しくないものはおるまい?」
そう言って愛おしげに私の頬にビラールは口付けを落とす。
「っ…う、嬉しいの?」
「ああ」
ビラールは無邪気に笑っている。そんな顔をされてしまった許してしまいたくもなり、そして自分の気持ちさえも許してしまいそうにもなった。
「それに、ルルも私と同じような気持ちを抱いているということは…大変喜ばしいことだ」
「同じって…」
「私はいつも余裕がない。だからこそ、私の一人相撲じゃなかったことが嬉しいのだ」
「ビラール…」
なんだビラールも妬いていたのかと思うとホッとしてビラールの頬に私の頬を擦り寄せた。
「ふふ、大好きよビラール!」
「ああ、私もだルル。我が妃…」
そうして人前ということを忘れた私は熱い熱い口付けを彼と交わしたーー。
-Fin-