泣かせない約束 「エスト!」
突然、エストの姿を見つけたルルはそのまま駆けていき…エストの手を握った。
「ルル!?」
「エストのおかげで本当に助かっちゃった!ありがとう!」
「…ああ、この間の。ということはあるべきところに収まったようですね、ルル。ビラール。」
「ええ」
「…まあな。」
「では、これは僕からの選別です。レーナ・アンブラー……ーー」
「っ!?」
エストが唱えた瞬間、私の体に重力がのしかかり私は立っていられなくなってしまう。
「ビラール!?」
「お灸ですよ、ルル。止めないでください」
「で、でも…っ」
「大丈夫だ、ルル…止めなくていい」
それでもルルの不安そうな顔は変わらず私は苦笑いを浮かべた。
「ラギに聞きました。まあ、ラギに聞かなくても分かることですか…ルルを泣かせ、悲しませたのだと。その理由がビラールなのだと」
「え、エスト…でもそれは…」
「けれどビラールはルル、あなたに選ばれそしてビラールあなたもまたルルを選んだ。だとするのならお灸を据えるのは当然でしょう?」
そう言ってエストは悪魔のように笑ったかとを思うと指を鳴らし、私を圧迫した重力は消え失せる。のろのろと立ち上がる私を一瞥したエストは苦笑いする。
「ルルとの未来を選ぶと言うことはそう言うことなのだと理解して下さい。…ルルを、泣かせないように」
「無論心得ているとも。ルルは私の未来の妻なのだから」
その言葉にはぁ、とエストはため息を吐いた。
「も、もう!二人とも喧嘩したかと思ったじゃない!」
いつも通りに戻った私たちを見てそう言ってルルは近づいてくる。
「言ったでしょう。お灸だと」
「言ったけど…でも心配だし」
「大丈夫だ、男にはこうでもしないといけない時がある。なにより私は助かったぞ、そうして怒ってくれないと過去の自分が許せなくなってしまうところだった。…あの時の私は、自分のことしか見えていなかったからな」
「そうです、全く…」
「エストは仲間思いだな」
「…そう感じるのならきっと過去に行って変わったんです。僕は」
「エストは、エストのままだわ」
「…そう、ですか」
照れたように見えるエストはローブを翻すとそのまま背を向けどこかへと歩いていく。未だ心配そうな顔をするルルの頭を私はよく撫でる。
「ビラール?」
「いや、私は…私たちは良き友、仲間に恵まれたなと思ってたな」
その言葉に全を映す聡明な瞳は真っ直ぐ頷き私を見据える。そして私はその瞳に私を多く映そうと顔を近づけたーー。
-Fin-