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    後天性女体化ナオ武♀④
    🎍だけ女体化してセッ…しないと出られない部屋に閉じ込められたナオ武♀の④

    セックスへ誘導されまくる二人

    #ナオ武
    naotake

    セックスしないと出られない部屋のナオ武④ 誰かに監視されている。
     橘直人はこの状況を努めて冷静に考えた。
     昨夜、就寝した途端に部屋の気温が下がった。タケミチは暖かな布団に包まっていたから、気づいていなかったかもしれない。床に寝ていたナオトは気温の低下をはっきりと感じた。正直言って寒くて眠るどころではなかったが、なんとか根性で耐えた。
     これは罠なのだろう。寒さに耐えかねてタケミチが寝ている布団に入り込み、なし崩し的にセックスに持ち込むように誘導されている。残念ながらその手には乗らない。自分は理性を失うわけにはいかない。タケミチはセックスを嫌がっているのだから。
     どうしたものか、と朝食をぱくぱく食べるタケミチの顔を眺めながらナオトは逡巡する。
     タケミチに焼いてもらったふわふわのパンケーキは美味しかった。形はいびつで若干焦げていたが、久しぶりに人に作ってもらったパンケーキは懐かしい味がした。幼いころよく食べた優しい味だ。
     タケミチに「美味しいです」と伝えたら「だろ?」と照れたように笑った。その笑顔を素直に可愛いと思う。
     平穏だ。このまま平穏に過ごしたい。出来ることなら嫌がる彼を説き伏せて無理矢理セックスはしたくなかった。自分は男の身体だから失うものは何もないが、タケミチは違う。突然女体化して性自認が揺らぐような目に合っているのに、追い討ちをかけるような行為をしたくなかった。
     でも、できることなら一刻も早く脱出したい。
     ――己に理性があるうちに。
     突然、ぶるっと寒気がしてくしゃみが出た。タケミチが「大丈夫か」と不安そうな顔をする。
    「風邪ひいた?」
    「いえ、大丈夫です」
    「床で寝たせいじゃね? 今日はオマエが布団で寝ろよ」
    「心配には及びません。今日は厚着して寝ます」
     きっぱりと宣言すると、タケミチは何か言いたげな顔をしたが、すぐにそうか、と頷いた。
     
     その日も一日脱出に繋がる手掛かりがないか探したが、進捗はなかった。タケミチは早々に飽きたのか、探索を諦めて畳の上で寝そべっている。
     静かな空間にカタンと音が響いた。ナオトが確認すると郵便受けに手紙が入っていた。
    「タケミチ君……次の手紙がきました」
    「げっ、マジか」
     二人でおそるおそる手紙を開封した。そこに記されていたメッセージにタケミチは「どういうこと?」と疑問の声をあげた。
     
    『おめでとうございます。
     貴方たちには次なる試練をプレゼントいたします。
     ぜひ、お二人で協力し乗り越えてくださいませ。
     なお、途中退出は不可となっておりますのでご了承ください。
     ご健闘をお祈り申し上げます。』
     
     一読しただけでは意味が掴めなかった。
     次なる試練とはどう意味なのか。今だって充分試練で、何とか理性を保っているというのに……。
     ナオトはあらゆる可能性を考えたが結論は出なかった。気づいたらじわ、と汗が噴き出てきた。
    「なんか暑くね?」
     タケミチがぽつりと言った。
    「たしかに暑い……ですよね」
    「だよな? さっきから微妙に暑くなってきてる気がすんだよ」
     自分の自律神経がおかしくなっているのかと思っていたが、確実に部屋の温度は上昇している。自覚するとさらに暑い。つうと汗が額を伝った。
    「あっちぃ……服脱いでいい?」
     タケミチはパーカーの裾を持ち上げてパタパタと仰いでいる。服がめくれて日焼けしてない白い腹がチラッと見えた。
    「どうぞ。ボクはこっちを向いてますから」
     タケミチに背を向けながら答える。目の毒だから直視しないようにした。一応断ってから服を脱ぐのはタケミチなりの気遣いなのか。それとも自分の視線からやましいものを感じとっているのか。もし後者だったらと思うとさらに汗が出てきた。ナオトはワイシャツのボタンを2つ外した。
    「なあ、これ空調が壊れたのか?」
    「いえ……おそらくですが……」
     振り向いてからナオトは固まった。
     タケミチはパーカーだけでなく履いていたジーンズも脱いだらしく、白くてなめらかな脚があらわになっている。
    「おい、ナオト?」
     Tシャツ一枚だけになったタケミチが不安そうにナオトに近づいてきた。Tシャツのサイズが大きめなせいで下に何も履いてないように見える。いわゆる彼シャツ的な格好。その格好で身体を寄せられてビクッとナオトは後退りした。
    「壊れたわけではないと思います。……おそらく意図的なものかと」
    「うえっ?! デスゲームが始まったってことか!」
    「どちらかというと実験じゃないですかね」
    「オレたちを蒸し焼きにする人体実験……?」
    「殺しはしないと思いますが……」
    「こ、殺される可能性もあんのか?! セックスしないから始末されるのか?!」
    「ちょっと落ち着いてください」
     焦るタケミチを宥めながら考えた。
     先ほどの手紙の意味がなんとなくわかってきた。おそらく監視者は、なかなかセックスしない自分たちに痺れを切らして実験を始めたのだ。北風と太陽。寒さで寄り添わせようとして失敗したから、今度は暑くしてみたというところか。だが、その手には乗らない。服を脱いで露出が多くなったからと言って、簡単に性衝動を起こすと思われているなら心外だ。短絡的すぎる――……。
    「ナオト〜!オレ、やだ!蒸し焼きにされたくないよぉ……!」
    「は、離してくださいっ!」
     タケミチが腰に抱きついてきた。不安に煽られパニックになっている。
    「こんなのやだよもう!早く出たい!」
     ぎゅうぎゅうと抱きついてきたタケミチが、涙で潤ませた目で見上げてくる。しかも柔らかい胸を押し付けながら。
     この状況はまずい。
     タケミチはTシャツの下は何も身につけてない。押し付けられた胸のマシュマロのような柔らかさがダイレクトに伝わってくる。
    「この暑さはセックスに持ち込むために意図的に作れたんだと思います。おそらく、さっきの手紙の試練はこのことだと」
    「じゃあ蒸し焼きにされない?」
    「はい」
    「よかったあ……」
     タケミチは安堵してナオトにだらりと抱きついた。触れた身体の熱さにドキリとしたが、暑くるしいので離れてくださいと言ってタケミチを遠ざけた。タケミチはしぶしぶ離れていく。
    「ナオト……あのさあ」
    「なんですか」
    「オレが……こんなこと言ったらオマエは引くかもしんないけど……」
     タケミチが言いにくそうにナオトを見た。
    「だったら言わないでください。嫌な予感しかしません」
    「なんでオマエはそんなに冷たいんだよ……オレにそんな気にならないのはわかるけど!」
     じっと潤んだ目で見つめられた。暑さで火照っただけなのに赤く染まった頬が妙な勘違いをさせる。
    「ほんとナオトって冷たいよな。氷点下絶対零度って感じ……」
    「待ってください……ボクはですね、君のためを思って……」
     意図しない方向に誤解されている。たしかに自分はその気にならないと言ってしまった。ナオトは自分の真意を伝えようとしたが、タケミチが遮った。
    「っていうかマジで寒くない?」
    「たしかに……急激に冷えてきました」
     部屋の気温がぐんぐん下がってきている。冷凍庫の中かと錯覚するくらい部屋が冷たい。
     監視者の意図が読めてきた。暑くてもダメなら今度はもっと冷やそうという魂胆か。体感的に業務用冷凍庫の冷たさ――マイナス40度くらいか。エベレスト頂上付近の気温と同じだ。
     シチュエーション的には雪山で遭難し裸で抱き合ってからのセックス。どうやら自分たちはそんな使い古された展開に誘導されている。
    「タケミチ君、布団の中で身体を寄せ合いましょう」
    「うええっ? それって裸で抱き合ってお互いの身体を温め合うってやつ?」
     ナオトの提案にタケミチは躊躇う様子を見せた。モジモジと指を動かしている。
    「いえ、裸になる必要はありません。服を着たままで大丈夫です。身体を合わせれば放熱されるエネルギーが抑えられますから」
    「そうなの?」
    「はい」
     タケミチを不安にさせないように答えた。理論上は、熱源を逃さないよう2人で布団に包まっていれば放熱面が減るので熱の余力が出来るはずだ。
     だが、その寒さは想像以上だった。指先の感覚がなくなり身体がガタガタと震える。こんな状況で発情して、わざわざセックスしようと考える人間なんていないだろう。この部屋の監視者は思慮が浅い。死にそうなくらい寒いのにセックスするはずがないだろうと胸ぐらを掴んでやりたかった。背中合わせのタケミチも同じようにガタガタと身体を震わせている。いつもなら、なんだかんだと騒いで煩いのに口数が少なかった。かなり弱っていることが窺えた。
    「タケミチ君……寝たら死にます」
    「わかって、るよ」
     表面積が一番広い背中をピッタリと合わせて座っているから、顔は見えない。きっとタケミチは今にも泣きそうな顔をしているだろう。少しはマシになるかとタケミチの手を握った。
    「ナオト……手」
    「タイムリープしないのは、ちょっと新鮮ですね」
    「う、うん……」
     そんな会話をしながら、なんとか耐えて朝を迎えた。
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