音楽室の前で待つ 音楽室を出て顔を上げると、そこにはいるはずのない人物が目に入り、思わず足を止める。
そのことに気づいた相手…… サタンは自分を見つけると柔らかく微笑んだ。
「お疲れ様。人間界の『部活』も魔界と似たようなもんなんだな」
サタンの言葉に「見ていたのか」と問いかければ、サタンは楽しそうに笑った。
「君を見ていて、何か問題でもあるのか?」
そんな問いかけに「恥ずかしいから」と返すと、サタンは顎に手を当てて何かを考え始めた。
「うーん。恥ずかしい、というのは……」
サタンが一歩近づき、自分に向かって手を伸ばした…… が、何かに躓いたらしい。サタンの体が自分にぶつかりそのまま床へと倒れ込む。
サタンが自分の上に重なる形で、自分を見下ろしていた。
「……そんな目で俺を見て、覚悟はできているんだろうな」
そんな言葉を呟きながら、固まっている自分をじっと見つめる。しばらく見つめた後、ふっと笑って自分の頭を優しく撫でた。
「ふふ。ごめんね。可愛くてついからかいたくなってしまった。ほら、立てるか?」
そういって立ち上がったサタンは、自分に向かって手を差し出した。自分がその手を取ると、サタンはヒョイと自分の手を引っ張り上げ立ち上がらせる。
「それじゃ、帰ろう。このままゆっくり、二人きりでね」
そうやって笑ったサタンは、握りしめた手にぐっと力を入れ、学校の正門に向かって歩き出した。