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    リラ猫

    @Liyracat_Om
    おべいみーの二次創作で、文字書きをしてます。
    サタン・レヴィ・ベルフェ推し。
    基本的にMCはネームレス・性別不詳となるよう書いています。
    そのためCPのタグで少なくとも片方が性別不詳の作品は「UL」と表記しています。

    Pixiv
    https://www.pixiv.net/users/71932942

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    リラ猫

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    Hana12さんと、ディアボロ誕に向けて合作しました。
    リラ猫はSSを、Hana12さんは挿絵を担当しました。
    ObeyMeキャラ12人とMCが登場する、豪華な話となっています。

    #ObeyMe
    ##全年齢
    ##非恋愛

    森の中のサプライズ「さて、坊ちゃま。そろそろ参りましょうか」
     バルバトスの言葉に、私は思わず目を見開いた。
     本日は何も予定がないはず。いつもならばバルバトスにスケジュールの管理を任せているが、今日ばかりは私自身の目で確認していたのだ。何かの間違いに違いない。
    「バルバトスがスケジュールを間違えるなんて、珍しいこともあるんだね」
     私は苦笑いを浮かべながら、バルバトスを茶化す言葉を口にする。しかし、私のその言葉に特別反応することもなく、バルバトスは静かに「いいえ」と首を横に振った。
    「間違いではございませんよ。本日の予定が何もないことを仰っているのでしょう? その認識は正しくもあり、誤りでもあるのです」
     バルバトスのその説明に、私は困った表情を浮かべざるを得なかった。いったい、どういうことなんだ?
     私の様子を見たバルバトスが、クスッと笑った。私はますます困惑する。
    「本日は何も言わずに、私に着いてきていただけませんか? 坊ちゃまに不利益なことは、何もございませんので」
     私はその言葉に、首を縦に振るしかないようだ。私が静かに立ち上がるのを見たバルバトスは、私に背を向けワープゲートを作る。
     一つだけ溜息をついた私は、バルバトスの作ったゲートへ静かに足を踏み入れた。

     * * *

     ゲートの先は、森の中だった。魔王城と嘆きの館の中間ほどの位置にある森。近いからこそ、あまり頻繁には足を踏み入れない場所だが、ここにいったい、どのような用事があるのだろうか。
     バルバトスが私の前を歩く。その後ろを渋々ついて歩くと、川が見えてきた。

    「おーい。もっと引っ張ってくれー」
    「ちょっ! 乱暴に扱ったら破れるだろ!?」
    「おまえら、もうすぐでディアボロが来る、ってことを分かってるのか?」

     ……随分と聞き慣れた、賑やかな声が聞こえてきた。
     川の近くに、少しだけひらけた場所がある。そこで、賑やかな声の主たち…… 嘆きの館に住まう七兄弟たちが、和気あいあいと楽しそうにテントを張っていた。
     自分の足音に気がついたのか、私の親友、ルシファーが後ろを振り向く。
    「ああ、もう来てしまったか。君が来る前に、テントの設営ぐらいは終わらせたいと思っていたんだが…… どうにも慣れない作業でな。もうちょっと、待っていてくれると助かる」
     ルシファーが腕を組みながら溜息をついた。私は目を丸くしたままルシファーを見つめる。そのまま、バルバトスへと視線を移した。私と目が合ったバルバトスは、楽しそうにクスッと笑った。
    「申し訳ございません、坊ちゃま。せっかくなので、サプライズをさせていただこうと思いまして。近場ではありますが、こうして自然に触れることで、日々の疲れを癒やしていただこうと考えたのです」
     バルバトスの言葉に、私は驚いたまま動けないでいたが、テントの設営に手間取っている七兄弟の声を聞いていると、自然と笑顔が浮かんだ。
     バルバトスに対して、一つだけ頷く。そして、私は腕をまくって七兄弟の近くに足を運んだ。
    「私にも手伝わせてくれ」
     レヴィが持っていた布付近を私が掴むと、レヴィがぎょっとした表情を浮かべた。しかし彼はすぐに笑みを浮かべる。
    「キャンプに立場とか関係ないからな。たとえ殿下であっても、ちゃんと動いてもらうよ」
     レヴィの言葉を聞き、私は思わず大きく笑ってしまった。
    「はっはっは。光栄だな。テントの設営なんてやったことないが…… こうやって自力で作り上げるのも楽しいものだな」
     そう言いながら私は、思い切りテントの布を引っ張った。

     * * *

     テントの設営を終え、レヴィに連れられて川沿いを少し歩く。後ろから聞こえていた賑やかな声が遠くなったと思ったら、今度は前方から別の賑やかな声が聞こえてきた。
    「おい! 釣ったそばから食べたら、皆の食べる分がなくなっちゃうじゃないか!」
    「ああ…… すまない」
     ルークがベールに向かってワンワン吠えている姿が見える。そんな二人を背中に、釣り糸を垂らしているシメオンとベルフェがいた。そんな彼らに向かってレヴィが声をかける。
    「もしかして、ベールが全部食べちゃった?」
    「うん。釣ったそばから、ベールが全部食べちゃう。せっかくぼくがいっぱい釣ったのに……」
     ベルフェが目をこすりながら、不機嫌そうに声を発する。その横でシメオンが楽しそうに笑った。
    「後ろで犬と熊が喧嘩しているみたいで、俺はすごく楽しいけどね」
     シメオンは釣り竿を器用に腹と小指で支えながら、どこからか取り出したメモにペンを走らせる。ネタが思いついたらしい。大自然の中にいると創作意欲が湧いてくるのだろう。
     とりあえず、皆の様子を見て、昼に食べるための魚がないことだけは分かった。
     私はおもむろに上着を脱いだ。シャツの袖とズボンの裾を捲り上げ、靴と靴下を脱いで裸足となる。それを見たレヴィが、後ろから驚きの声をあげた。
    「は? えっ、殿下!? 何すんの!?」
    「何って、きちんと働こうと思ってね」
     そう言って、そのまま私は川の中に足を踏み入れた。肩幅ほどに足を開き、腰を曲げ、川の中をじっと覗き込む。魚が群れを作って泳いでいる所が見えた。私はそこに向かって、素早く両手を沈めてそれらを掴もうとする。
    「ほうら!」
     掴んだそれらを、川の中から引っ張り上げる。残念なことに、二匹ほどの魚が宙を舞い、再び川の中へと戻っていってしまった。
     しかし、その様子を見ていたレヴィとルークが、楽しそうに靴を脱ぎだす。
    「ぼくもやってみたい! 魚を捕まえる方法は、釣り糸を垂らすだけじゃないんだな」
     ルークがバシャバシャと水面を大きく揺らしながら、私の近くまでやってきた。その後ろからレヴィが慌てて追いかけてくる。
    「ぼくだって、ネットで捕まえ方を調べたし! お昼に腹ペコは嫌だからな。いっぱい捕るぞ」
     先程の私と同じような体勢で、二人は川の中を覗き始めた。

     意外なことに、一匹目を捕まえたのはルークだった。
    「ほら! ぼくにだって捕まえられるんだぞ!」
     喜んでシメオンの近くに置かれていたバケツへと走っていくルーク。そんなルークを眺めながら、シメオンは「頑張ってね」と応援の言葉をかけていた。
     ベールは私たちの行動を見てか、自身も上着の袖をまくり始めていた。しかしそれをベルフェが「川の魚が全滅する」と言って、必死に止めている。
     彼ららしいマイペースさだ。賑やかで、そして何より楽しい。
     私も彼らと同じように、今という時間を楽しんでよいという事実が、心底面白くて仕方がない。
     私は再び腰を曲げて、川の中を覗いた。魚は、まさに目の前にいる。
    「今度こそ!」
     私は川の中に手を入れ、魚を掴んだ。よし。ひとまず一匹だ。
     喜びの表情を浮かべながら、後ろを振り返った。私もこの魚をバケツに入れに行かなければ。
     しかし、すぐ近くに立っていたレヴィが、川に足を取られてしまったらしく体のバランスを崩す。
    「うわああああ!!」
     そのまま、レヴィの体は私に向かって倒れた。ぶつかった衝動で私までバランスを崩す。
     私も、レヴィも、二人して川の中に尻もちをついた。幸い、そんなに深い川ではないため、流される心配はない。しかし、魚が逃げてしまった上に、服はずぶ濡れだ……
    「うわぁ…… 殿下、ごめん……」
     レヴィがしょんぼりとした表情で、私に向かって謝ってきた。もちろん怒りの感情は沸かない。むしろ……
    「感謝したいぐらいだよ。こうやって水の中で思い切り遊ぶのが、皆とこうしてはしゃぐのが、面白くて楽しくて仕方がないんだ。気にしなくていい」
     私の言葉にレヴィは驚いた表情をし、そして苦笑いを浮かべた。そのままレヴィは立ち上がり、私に向かって手を差し出す。
    「ほら。昼食までにまだまだ魚を捕まえるぞ。もっともっと働いてもらうからな」
     レヴィの発言に私は思わず笑い声をあげた。レヴィの手を取り力をこめる。そして、よいしょと立ち上がった。

     * * *

     誇らしげにバケツを抱えるルークが、テントまで走っていく。そんな様を私は後ろから歩きながら眺めていると、先程は見当たらなかったソロモンが到着していたようだった。彼は目の前に置いてあるBBQ用コンロに向かって、団扇をパタパタと動かしている。
    「あ…… ルークが持ってるのは魚かな? ちょうど良かった。火がいい感じについたところだよ」
     満面の笑みを浮かべて手を差し出すソロモンを見て、ルークの顔が引きつった。
     ソロモンが起こしていた火は、たしかにいい感じのようだ。炎が一メートルほど上がっている。これならば、魚もしっかりと火が通ることだろう。
     私はルークに、魚入りのバケツをこちらに渡すよう手を差し出した。ソロモンと私の顔を交互に見たルークは、恐る恐る私へバケツを渡す。私はそれを受け取ると、ソロモンから差し出されたトングを手に取り、魚を炎の中に放り込んでいった。
     その様子を見たルークは、驚いたような表情を浮かべてテントの中に駆け足で入っていった。いったい、何がどうしたというのだろうか?

     バケツに入っていた魚のうち半分ほどを放り込んだところで、サタンが顔を真っ青にしながらこちらへ駆け寄ってくる姿が見えた。
    「お、おい!! 魚を丸焦げにする気か!?」
     サタンの言葉に、私は首をかしげる。
    「いや? しっかり焼いたほうが良いと思ってね。中まで火が通ったほうが美味しいだろう?」
     そう言った私の後ろから、アスモがひょっこりと顔を出す。コンロの様子を見て、こちらもまたぎょっとした形相を浮かべた。溜息をつきながらアスモは説明する。
    「殿下…… 炭火では火柱がちゃんと収まってから焼き始めないと、表面は黒焦げ、中は生焼けになっちゃうよ?」
     私が手に持っていたトングをアスモが奪い取ると、サタンが持っていたトレーに魚を丁寧に並べて置いていった。こんがり焼けており、黒い部分が若干ポロポロと落ちるが、しっかり中まで火が通っているように見えた。何が問題なのか、まったく分からない。
     アスモはそのままコンロの網を横にずらすと、炎があがっている炭を平らにならし始めた。高く上がっていた火はすぐに十センチ程度に収まる。その状態にして再び網をコンロの上に置いた。
    「殿下、いい? この火が消えて、炭が赤く、くすぶってる状態になってから魚を置くんだよ。でないと、美味しく焼けないからね!」
     アスモが人差し指を立てながら、私に料理指導をしている。その気迫に、私は首を縦に振るしか選択肢がなかった。
    「わ、わかった。すまないね」
     私がしょんぼりした表情を浮かべてアスモに謝ると、サタンとアスモが二人同時に溜息をついた。

     アスモが言ったとおりに、私は炭の火が落ち着くまでじっと待った。それから残った魚を網の上に置いていく。
     火が見えないので、本当に焼けるのかは分からない。しかし、手をコンロの上方向にかざすと、そこはたしかに熱かった。
    「腹減ったー! メシはできたかー?」
     川と反対側の森のほうから、たくさんの木の枝を抱えたマモンとバルバトスがやってきた。私は笑顔を向けてトングごと腕を振る。
    「先程、半分の魚は焼き終えたよ。もう半分はまだ焼いているが…… 熱いうちに焼き上がった魚を食べてしまおうか」
     私の提案に、バルバトスは木の枝を一箇所に集めながら「承知いたしました」と返事をした。
     アスモが「表面は黒焦げ、中は生焼けになる」と言っていたが、これだけしっかり焼けているのだから食べられないわけがないだろう。そう思い、私は皆の皿を取り出し、その上に先程の魚を置いていった。

     魚が焼かれているコンロを囲むように、皿を持った皆が並ぶ。その皿の上には黒焦げの魚。それを目の前にしたマモンが真っ先に口を開いた。
    「お、おい! 黒焦げじゃねーか! 中まで炭になってる、なんてことはねーよな!?」
     そんなマモンの頭にルシファーがゲンコツを食らわせた。マモンはそのまま頭を抱えてうずくまる。
    「なら、おまえは食わなきゃいいだろ。まったく。せっかくディアボロが調理したというのに……」
     そう言いながら、ルシファーは黒焦げの魚にかぶりつく。その様子を見たレヴィ、サタン、ルークも、ルシファーに続くようにして魚にかぶりついた。
     最初に反応があったのはルシファーだった。一瞬目を見開き、すぐに眉間にシワが寄る。喉の奥からくぐもった声が聞こえたが…… 気のせいだろうか。
     表情こそ険しいものの、ルシファーは魚をすべて平らげた。私は嬉しそうに笑みを浮かべる。
     しかし、レヴィは口に含んだ魚を、見えないところで慌てて吐き出した。
    「ちょっと、殿下! 外は黒焦げなのに、中は生焼けじゃん!! どうなってんの!?」
     レヴィの言葉に私は首をかしげた。アスモから受けた注意が頭をよぎる。やはりあのまま提供したのは、まずかっただろうか?
     とはいえ、やや顔をしかめてこそいるものの、ルークもしっかりと完食してくれた。食べられないほどのものではないだろう。
     サタンは…… 大丈夫だろうか? テントのほうに戻っていき、椅子に座ったまま動かないぞ……?
     そんな彼らの様子を見た他の人たちも、それぞれに思い思いの行動を取り始めた。
     アスモは「ちょっと鏡見てくるねー」と皿を置いてどこかへ行ってしまった。
     うずくまっていたはずのマモンは立ち上がり、自身の魚をルシファーの皿の中に入れた。……が見つかってしまったようで、マモンはルシファーに魚を無理矢理口に突っ込まれている。
     わちゃわちゃしているルシファーとマモンにそっと近づいたシメオンは、こっそりルシファーの皿の中に自身の魚を移していた。現兄弟も元兄弟も、ルシファーを慕っているようで、私はとても嬉しい。
     ベールは黙々と魚を食べていた。ベールはベルフェと目を合わせると、ベルフェは皿を差し出し、ベールは何も言わずに魚を取り上げていた。
    「ベール。君は魚も好きなのかい?」
     私がそう問いかけると、ベールは少し考え込み、まだ魚を頬張ったままの口で話し出した。
    「俺は基本的になんでも好きだが…… これも、悪くはない」
     ベールの返事に私はにっこりと微笑みを返した。
     そんな私の後ろで、ソロモンが嬉しそうに声を発する。
    「いやぁ、やっぱり強火で焼いた魚は美味しいね」
     ソロモンは笑顔でパクパクと魚を食べていた。私はその様にうんうんと頷く。
     満足げに周りを見渡していると、バルバトスがコンロで何やら調理を始めていることに気がついた。私は思わず声をかける。
    「どうしたんだ? バルバトスは食べないのかい?」
     私の問いかけににこりと微笑んでバルバトスは口を開いた。
    「いえ、後ほどいただきますよ。それよりも、魚だけでは皆さまのお腹は満たされないでしょうから、もう数品ほど作らせていただこうと思いまして」
     なるほど。たしかに、魚一匹や二匹では腹が満たされないだろう。さすが、私の優秀な執事である。私だけでなく、友人たちへの気配りをこのような場所でも欠かさないのは、素晴らしいことだ。
    「はっはっは。さすがだな。それなら残りを気にすることなく、私も魚をいただこうかな」
     そう言って私の皿の上にあった魚にかぶりついた。

     私は思わず、うっ、と喉の奥から声を漏らした。

     * * *

     皆が集めた木の枝に、ルシファーがマッチで火をつけた。ふぅと息を吹きかけると、小さかった炎が徐々に大きくなってゆく。そのまましばらく待っていると、パチッと木の枝が爆ぜる音が聞こえてくるようになった。
     バルバトスは細い木の枝にマシュマロを刺していた。それをマモンが嬉しそうに手に取ると、ルシファーのつけた火の近くへ来て、マシュマロを焼き始める。
    「マシュマロは、焼いたほうが美味しいのかい?」
     私がそう問いかけると、マモンはニヤリとした笑みを浮かべた。笑みを浮かべるだけで、何も答えてはくれない。
     私がマモンの焼いているマシュマロに視線を落とすと、少しずつ膨らんできていることに気がついた。マモンは木の枝をくるりと回しながら、マシュマロに若干の焼き色がついたことを確認する。そして木の枝ごと、マシュマロを私のほうへ向けた。
    「ほら、食ってみろよ」
     私は目を丸くしながらも、差し出された膨らんだマシュマロにかぶりつく。
     熱い。その熱に驚きながらも、私は目を大きく見開いた。
     普段食べるマシュマロのような弾力はなく、なんとも不思議な食感だった。外はパリッとしているにもかかわらず、中はトロトロとしている。そのまま食いちぎるために顔を動かすと、チーズのようにマシュマロが伸びた。
     私の戸惑った表情に、マモンが声をあげて笑う。
    「へへっ。美味いだろ。マシュマロはそのまま食っても美味いが、こうやって焼くとこんなに変わるんだもんな。おもしれーよな」
     マモンが私の前からマシュマロを引っ込めると、残った部分をマモンがパクリと食べた。幸せそうな表情をしている。
     マモンが木の枝を持ったまま、再びバルバトスの元へ駆けてゆく。そんな様子を目で追っていると、私の隣にルシファーがやってきた。マシュマロ付きの木の枝を二本持っており、私に一本差し出す。
     二人で火のそばにしゃがみ込むと、先程のマモンと同じようにマシュマロを焼き始めた。

    「どうだ。今日は、楽しめたか?」
     ルシファーが私にそう話しかけた。私は今日の出来事を改めて振り返る。
     魚を素手で掴んだり、BBQで黒焦げ&生焼け魚を作ったり。迷惑をかけてばかりだった気もするが、なんだかんだ言いながら、笑って私を受け入れてくれた友人たち。
     普段は次期魔王として気を張っており、こうやってはしゃぐことなんてなかった。……いつ振りだろうか。
    「とても、楽しかったよ。私を『友人』として接してもらえて…… 久しぶりに、大声をあげて笑った。久しぶりに、次期魔王ではなく『ディアボロ』になれた」
     私がそう答えると、ルシファーはふっと口元を綻ばせた。
    「それならば、ここに来た甲斐があったな。弟たちも、さぞ嬉しいだろうな」
     ルシファーのその言葉に、私は首をかしげた。そういえば、どうして突然キャンプなんてしだしたんだろうか?
     私が不思議そうな表情をしている様子を見て、ルシファーが可笑しそうに笑った。
    「なんだ。気づいてないのか? だって、もうすぐ君の……」

     プルルルル。

     私のD.D.D.が音をたてて震えだした。私はルシファーに手の平を見せて「ごめん」と言いながら、D.D.D.を取り出す。
     その着信画面を見た私は、思わず目を大きくした。受話ボタンを押し、D.D.D.をそっと耳にあてる。
    「もしもし」
     私は静かに電話の主へと声をかけた。
    「あ、ディアボロ? 忙しいだろうにごめんね。でも、ディアボロと電話が繋がるタイミングは、今ぐらいしかないと思って。早めに電話しちゃった!」
     人間界にいるはずの君の声に、私の胸が高鳴る。それにしても、突然どうしたのだろうか。「早めに」とは、もしかして……
    「ディアボロ、お誕生日おめでとう!! また魔界に行ったときに、改めてお祝いさせてね」
     電話の主からの言葉が漏れて聞こえたのだろうか。ルシファーが大きく溜息をついた。
    「ふっ。まったく、あいつに先越されてしまったか」
     私は目を見開きながら、耳にあてていたD.D.D.を離してルシファーを見た。その表情にルシファーが柔らかく微笑む。
    「誕生日おめでとう、ディアボロ。俺は君に忠誠を誓っているが…… それ以上に、君がよく言う『親友』という意味での味方でありたいと、強く思っている。これからも、ともに魔界を見守っていこう」
     ルシファーが私に向かって手を差し出した。突然の言葉に驚きながらも、私はその手を静かに取る。
    「もちろんだとも。……そして、ありがとう。君が私の親友でいてくれて、本当に嬉しいよ」
     そう言いながら、私は微笑みを浮かべた。

    「あ! もしかして、ルシファー。抜け駆けした!?」
     私たちのところに、後ろからアスモが元気よく声をかけてくる。その声を聞いた皆が、一斉にこちらを振り向いた。
    「ちょっ! 抜け駆けとかありえねーだろ!」
    「お兄様は、弟たちの計画は無視しても構わない、とでも言うつもりか?」
     マモンとサタンまでヤンヤヤンヤと言い始める。
     その様子を眺めているうちに、皆が私を囲むようにして集まってきた。
     そんな状況を察した電話の向こうの君が声を発する。
    「あれ? もしかして、みんなそこにいるの?」
     君の声が聞こえるように、私は音声出力をスピーカーへと切り替えた。皆の顔に笑顔が宿る。
    「七兄弟、全員いるよ」
     ベルフェは心なしか嬉しそうに君へと報告をする。
    「ぼくやシメオンだっているぞ!」
     ルークも負けじと声を発した。
    「俺もたまたま魔界に来ててね。当然だけどバルバトスもいるよ」
     ソロモンまで弾む声で君へ話しかける。
    「それじゃ、みんなで一緒に! せーの!」
     君の掛け声が、私のD.D.D.から大きく響き渡る。そして……

    「「「お誕生日、おめでとう!!」」」

     * * *

     大きなテントとはいえ、さすがに十二人という大人数では小さく感じられた。
     ベールとベルフェは双子らしく向き合って、並んで大人しく寝ているが、サタンとアスモはお互いの脚が腹の上に乗っている状態だった。マモンとレヴィはいつの間にか転がって移動し、二人してルシファーの顔面に拳をぶつけている。ルシファーもルシファーで、顔を歪めたまま寝ているのだから、正直凄いと思う。
     ルークは小さく丸くなって寝ており、シメオンはうつ伏せで真っ直ぐ寝ていた。ソロモンは何故か体育座りで眠っている。
     それぞれに個性的な寝相を、テントの外から眺めて、私は思わず「ふふっ」と声を漏らして笑った。そんな私に、バルバトスが静かにホットココアの入ったマグカップを手渡した。
    「本日は、いかがでしたか」
     バルバトスの言葉を聞きながら、私は隣に座るよう促した。そして、バルバトスの問いに、私は静かに頷く。
    「久しぶりに、大声で笑った。久しぶりに、友人と思い切り遊んだ。本当に…… とても楽しい一日だったよ」
    「そう仰っていただけて、私もとても嬉しく思います」
     私の隣に座ったバルバトスは、静かに笑みを浮かべた。
    「ああ。……ありがとう」
     私はそういって微笑み、受け取ったマグカップに口をつけた。
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