ナイフについたいちごジャム 悪魔姿のサタンを目の前にしてゾッとした。
ここはキッチン。いったいここで、悪魔姿になるほどの何かがあったのだろうか?
恐る恐るキッチンの中に足を一歩踏み入れると、サタンがこちらを振り返った。
サタンの顔を見て、自分は思わず悲鳴をあげそうになる口を手で押さえつける。
サタンの手に持っているのは、赤く濡れたナイフ。そして、頬に一筋の赤い線とそこから液体が流れたような赤い跡。
これは……いったい…………
「見てしまったか」
そう言って笑うサタンを見て、自分の喉の奥から声にならない悲鳴が込み上げてくる。自分は小さく、何度も、首を横に振った。
「……あぁ、何か勘違いしていないか?」
そういってサタンはナイフについた赤いものをペロリと舐める。
「これ、いちごジャムさ」
口を押さえつけたままの自分は、サタンの答えにポカンとした表情を浮かべた。
……いちごジャム、だって……?
「ちょっと、蓋が開かないからと苛立ったらり、ま、まら、悪魔姿になってしまってね。だから、安心していい」
そう言いながら、サタンはテーブルの上に置いてあったジャムとその蓋をくるくると回して閉めた。
その様子を見て、自分はふうと安堵の溜息をつく。
そんな自分を見て笑いながらサタンが近づいてきた。
「はは。驚かせてごめんね」
そう言いながらサタンが見せたのは、ジャムがついたナイフ。
しかし、ジャムにしてはやはり…… どこか黒っぽく、やたらとサラサラしているような……
「もしも俺が、何か良くない事をしていたんだとしたら…… 君はどうする?」
そう笑うサタンの目は、黒い炎が宿っているように見えた。