赤い償い 自分はどこで何を間違えたのだろうか。
そう自問自答するが、答えは見えてこない。
ひとまず、自分はかなりまずい状況に置かれているということだけは分かる。
地下墓地で、後ろ手にロープで縛られた自分は、膝をついて頭を下げている。そんな様子を、サタンは楽しそうに見下ろしていた。
「それで? 君はあの後、どこの馬の骨かも分からない下級悪魔と一緒に、一晩遊んで過ごした、と」
声こそ楽しそうに聞こえるが、その言葉選びには悪意がある。RADの同級生を「下級悪魔」と呼び、そんな自分を「遊んで過ごした」と貶めている。
明らかに、サタンは、怒っているのだ。
「ごめん……な……さい……」
サタンがこの後、何をするつもりなのかは分からない。それでも、許しを乞う言葉が自然と出てしまうほどに、自分はこの状況に恐怖していた。
「謝罪をするなら、それ相応の償いが必要だよね?」
そういってしゃがみ込んだサタンは、自分の顎に手を添えて上を向かせようと持ち上げた。嫌でもサタンと目が合う。
「そうだろう?」
同意を求めるように再び問いかける。その問いに、自分は首を縦に振った。
「それじゃ、俺が欲しいものをいただこうかな」
そう言ってサタンは笑い、自分の顎から手を離した。
「いったい、何が欲し……っ!!」
左胸に、鋭い痛みが走る。
目の前にいるサタンに、赤い血飛沫がかかった。
自分の思考が、突然に真っ白になる。
サタンは嬉しそうに、笑っていた。
体を支えていられなくなった自分は、そのまま床に倒れ込んだ。
薄れゆく視界が捉えたサタンは、服も顔も血で汚れていた。そして最も血で濡れている彼の手の中では、赤黒い物体が脈打つように動いていた。それは、まるで、心臓のように。
「ああ、これで君とずっと一緒にいられる…… 俺は今、幸せだよ」
そう言って笑うサタン。とても、とても、幸せそうだった。
サタンが欲しかったのは、自分の心臓だったのか。……それとも、自分自身だったのか。
今となってはもう分からない。
それでも最期に見た彼の姿が幸せそうに笑っていて、自分は……自分……は……