タイトルのない物語を〈人外〉
・北信介
初期にできた優良個体。特に耐寒性の強い人外。見た目こそ普通の人間。モバイルバッテリー搭載で、熱くなるとバッテリーが故障しやすくなる。栄養自体は人間と同じもので賄えるが、バッテリーが駄目になると栄養をいくら取っても死ぬ。人間との意思疎通は頷く程度だが理解はできる。人外同士は音波周波で対話ができる。
・宮侑
北と同じ個体。そこでもかなり優良な個体で頭脳部の処理が早い。体力は中の上。
・宮治
宮侑と同時期に作られた個体。頭脳は中の上で、体力が最優良。耐久力だけで生まれた個体。
〈人間〉
・大耳練
・尾白アラン
人間であり研究者。この個体を作った責任者たち。
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今回、人外たちは北にある極寒の研究所で耐寒性テストをすることになる。
3ヶ月の任務で、人外3体と人間2人で行くことに。
2ヶ月目、食料が現地にいる動物に食べられてしまう。アランたちは3日で戻ることを北たちに約束して、頷いたのを確認して研究所を離れる。
しかし、帰還前になり移動の電波が阻害されるほどの熱波に見舞われて迎えが中止に。
熱波は季節の移り変わり目にしばしば見られるが、異例の周期で起こってしまったため、北たちに合わせた対応ができないことを打診する。
しかしその熱波は人外に対応できないのであれば人間も対応できないので、手出しができないまま1ヶ月が過ぎてしまった。
1ヶ月後、北たちを迎えにいったアランたちは、水に浸かっている宮兄弟を見つける。
「き、北は!北信介は!」
と大耳が宮の肩を揺さぶると、侑が銀色の塊を抱き締めて、治が水をチャプチャプと揺らした。
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北はまず、食材を集めた。首輪や行動制限があったわけではないが、耐寒性テスト経験者の北は食材庫の場所をきちんと知っていたし、外の世界を恐る双子の代わりに食材を集めた。
「どこ行くん北さん」「飯取ってくる、待っとれ」
と言って何度も出ていった。熱波が襲った時も、あるだけの水に浸かって決死の覚悟で出ていった。
「俺の方が体力ある」「場所言うても分からんやろ」
「俺なら場所わかる」「体力ないやろ、先に駄目になるで」
そう言って毎日食材庫を漁った。しかし迎えに来ないアランたちに不安げな双子に「大丈夫や。人間も来られんだけで、収まったら来てくれる。待っとれ」
そう声をかけ続けた。
しかし北のバッテリーは何度も外に出たことで摩耗して日に日に帰ってくる時間が遅くなる。そしてある日、外にある室内温度調整器が故障。部屋の温度がどんどん上がっていく。
「暑い、」「暑い!」と喚くようになった宮兄弟。頭を押さえて呻く侑と、体内のバッテリーが燃えそうに熱く火傷が見られる治。そしてもとよりボロボロの北。
北はとある決断をする。
「侑。治。今から俺のバッテリーを外す。俺は予備バッテリーに切り替えてまた飯取ってくる。その間、バッテリー冷却水で体ちょっとでも冷やせ。俺は予備バッテリーの冷却水で持つ。お前らも、持てよ」
と言って、胸部からバッテリーと冷却水を取り出す。
バッテリーはないと死んでしまうが、繋がったコードを予備バッテリーと正しく付け替えることができれば一時的な延命は可能。侑の頭脳で指示を出して、治の残った体力で付け替える。そして北の冷却水を被った2人は「待っとるよ、北さん」と言って浴槽にて待つことに。
「約束や」
北が出ていったことでボロボロに摩耗したバッテリーと冷却水とタンクだけで残された宮兄弟。
「遅い」
「北さん」
「待っとる」
「約束」
2人で手を繋いで怖いのを隠す。出ていって数刻後、空調が設備の予備電源が復旧。
「北さん」
「治った」
「北さん」
「はよ戻ってきて」
と言いながら何度も夜と朝を繰り返した。
しかし北より先に顔を見たのは人間たちだった。
数日後、アランたちに「北信介は!」と聞かれたとき、宮たちは絶望する。
北は戻ってこなかった。「約束や」と言って出ていった北は、戻ることはなかった。
それ以来、この施設に永遠と住むことになった宮兄弟。
動かなくなってしまい、人間の言うことを聞かなくなってしまったのだ。
それでもアランたちは健気にメンテナンスをした。
しかし次にきた熱波で侑が機能停止になり破棄。追うようにして治が不具合を起こして破棄されることになる。
2人が最後に抱いていたのは、「NO.001」と書かれたバッテリーと冷却タンクだった。
みたいな話。