来週金曜日の十九時で「悪いんだが、どうしても他のやつに都合がつかなくてな」
その枕詞を置くなら端から僕に頼めば良かったのに、と内心感じたことは言うまでもない。
僕一人だったら、まず入らないだろう場所であることはまちがいない。師匠一人であっても同様だろう。だったら、僕と師匠の二人であったのなら、場違い感はやはり否めない。多少マシかという程度の話だ。
ビジネスではない都心のホテルは入り口がたくさんありすぎる。メインエントランスらしき広々としたホールに圧倒されるまま、ずんずん進んでしまう師匠へ着いていく。迷いのない歩みに見えるが、早いところ依頼を済ませたいという意思にも思えた。
吹き抜けの天井には不可思議に光を投げかけるライトがシャラシャラと垂れて、その下の拓けたラウンジを仄明るく照らしている。
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