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    ムーンストーン

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    ムーンストーン

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    親子竜出陣前夜の一場面。
    アニオリでバウスン将軍父子の故郷の敵であるバランへの反応があるかなと思ったけど尺が無いのかスルーだったので幕間を想像してみました。
    妻を早くに亡くした父子という共通点がある二人だなと。

    #ダイの大冒険
    daiNoDaiboken
    #ダイ
    die
    #ポップ
    pop
    #バラン
    balun
    #バウスン
    bausun.
    #ノヴァ
    nova

    この小さな手を守れますように「私では実力に不足かね?」

    ヒュンケルとクロコダインの説得で一時同行を承諾した男は、その存在で場にいる人々を威圧した。

    この男か。我がリンガイアを壊滅に追い込んだのは。
    怒りに先んじてバウスンの全身から震えと恐怖がこみ上げる。
    動揺を抑え込む為に無理に深呼吸し、視線で我が子の様子をうかがう。
    幸いにして先日のような跳ねっ返りはしないでくれるようだ。 
    故郷の敵だと理解しているだろうが、口にださないだけの分別を働かせているのに安堵する。 
    まあ声もでないというのが実際の所だろうが。

    会議室にいるメンバーの中で魔法使いの少年は威圧を受けた途端腰が抜けたようだ。

    ただ一人勇者ダイだけがレオナ王女による魔宮の門への同行に反論したが、彼女に外堀を埋められプィと横を向くことで不満を露わにする。

    不満と反発をあの恐ろしい男の前で素直に表す少年勇者が、我が子より更に幼い事に今更気づく。

    ようは無意識に父親に甘えているのだ。

    まだ小さかったノヴァが、ボクもう大きいもん、できるもんと主張する、幼い身に合わない事を大人の判断でやんわりと止めるときの、反論の言葉が耳に戻ってきた。
    真剣を持ちたいなら木刀で連続千回素振りできるようになってからにしなさい。 騎士団の入団試験を受けたいなら……いつしか求める条件を軽々クリアして北の勇者と呼ばれるようになった息子は父の声に耳を傾けなくなった。

    しかし、勇者パーティに傲慢なセリフを吐き単騎サババへ飛び出した息子の命が救われたと聞いた時は、残り少ない人間勢力を損ないかねない失態に対する失望よりも、良く生き延びてくれたと膝が震えるほどに安堵が勝った。

    まるで、登るなと言いつけた木から落ちて折れた手に治療をしたときのように。
    何日も続いた高熱が下がったときのように。

    この小さな手を守れますように。 

    妻を亡くしてから神に祈らなくなり、己の心に言い聞かせてきた言葉。
    既に剣技も魔法も父を越えた息子に対して、それでも願うことは止められないのだ。

    短い打合せが終わるとそれぞれが成すべき場所へと散らばるが男は会議室の隅に立ったままだった。

    ダイも所在なげに壁を見つめたまま動かない。
    そこへポップが寄り添い、ダイの二の腕をなだめるようにさすりながら、ヒュンケルの様子を見に行こう、そうしたら明日のために早く寝ようと話しかけた。

    ダイの男に対する反発心を、兄弟子への心配で上手くそらしたポップはそっと通路側にダイを押しやり並んで歩き出す。

    ダイは今の今まで拗ねていたとは思えない屈託のない笑顔をポップに向け、肩を抱く彼の背中に回した小さな手は戦塵にまみれたマントをキュッと握っている。

    信頼と共感と安心と。二人の絆が僅かな遣取りから垣間見えた。

    それを無言で見つめる男に対してバウスンは僅かに溜飲が下がった。

    見たか。お前の息子はお前との血の繋がりよりも魔法使いとの絆に全幅の信頼をおき、傍目も憚らず心をよせてみせるのだ、と。

    以前聞いた魔王軍との交戦状況報告のなかで、勇者ダイと魔法使いポップ、竜騎将バランの因縁は一際目をひいた。

    テランで息子の記憶を奪い身柄を奪還せんとした男に、ポップは我が身ひとつで足止めする為に立ち向い、兄弟子と共にその配下を破った。
    そして満身創痍のパーティの中で唯一立つことができた彼がメガンテを仕掛け、失敗したもののダイは記憶を取り戻し、ポップと仲間を傷つけた敵として男と壮絶な戦いの後退けたと。

    竜の騎士であり、魔王軍軍団長であった男が非力な魔法使いに死の寸前迄追い込まれ、我が子は命がけで己が手を振り解いたのだ。
    そして己が一度死に追いやった魔法使いに、我が子がどれほど愛着しているのかまざまざと知ったのだ。

    父として、これ程辛いことはあるまい。

    今しがた感じた男に対する同情と、ざまを見ろという相反する感情がない混ざりバウスンはつい口に出してしまった。

    「貴方でも子は可愛いのか」 

    言葉にした途端冷や汗が止まらなくなった。
    不興を買うどころか地雷に勢いをつけて飛び込む行為だ。
    バウスンの焦りを一顧だにせず男は眼を閉じた。まるで見るべきものがなくなったように。
    そう、最前線に自ら立つ我が子が無事であること以外に知るべき事は父にはないのだ。
    バウスンは男に黙礼すると会議室をでた。

    この小さな手を守れますように。
    この小さな手を守れますように。

    明日は決戦だ。 今日この場にいた者で明日の夜生きて会えるのは何人いるだろう。

    この小さな手を守れますように。

    祈ることを知らないだろう男の替わりにバウスンはもう一度だけ神に祈った。
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    Replies from the creator

    ムーンストーン

    DONEダイの大冒険 リア連載時から疑問だったバルトスの敵討ちについて書き連ねました。
    以下バルトスファンとヒュンケルファンには申し訳ない話しが続きますが個人の感想なのでお許し下さい。

    ハドラー(造物主)のから信頼より子への愛情を取って責任追及された事をメッセージに残す=ハドラーへ遺恨を残すことになりませんかとか魔物と人間とは騎士道精神は共通なのねとか。
    ダイ大世界は生みの親〈〈〈育ての親なのかも。
    20.審判(ヒュンケル/ランカークス村)〜勇者来来「勇者が来るぞ」
    「勇者に拐われるから魔城の外に出てはならんぞ」
    懐かしい仲間たちと父の声が地底魔城の地下深く、より安全な階層に設えられた子ども部屋に木霊する。
    この世に生をうけ二十年余りの人生で最も満ち足りていた日々。
    ヒュンケルがまだ子どもでいられた時代の思い出だ。


    「暗くなる前に帰んなさい!夜になると魔物がくるよ!」
    黄昏に急かされるようにランカークス村のポップの家へ急いでいた時、ふいに聞こえてきた母親らしい女の声と子供の甘え混じりの悲鳴を聞いてヒュンケルとダイは足を止めた。

    ヒュンケルが声の主はと先を覗うと見当に違わず若い母親と4〜5才の男の子が寄り添っていた。
    半ば開いた扉から暖かな光が漏れ夕食ができているのだろうシチューの旨そうな匂いが漂う。
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    ムーンストーン

    DONEダイの大冒険 ナバラによるアルキード滅亡の日の回想です。
    テランの人口が急減した理由の一つに理不尽すぎる神罰があったのではないかと思います。
    あの世界の殆どの人は結局アルキードが何故滅びなければならなかったのか知らないままだから神の力の理不尽さに信仰が揺らいだ人も多いと思います。
    夢から覚めた日〜ナバラ「あの日」のテランは雲一つない穏やかな陽気だった。

    暑くもなく寒くもなく、洗濯日和と言わんばかりの優しい風が吹きすぎる。
    そんなうららかな日だというのに何時にないむずがりかたをするメルルにナバラは朝から手を焼いていた。

    「いつもお利口さんなのに今日はご機嫌ななめだねぇ」
    女所帯のナバラ達を気にかけて何かと助けてくれる近所の若者、ドノバンがあやしてくれたが更に大声で泣いてメルルは家の中に駆け込んでしまった。 
    「全くだよ。せっかく忙しいお兄さんが遊んでくれたのに」
    悪いねぇと詫びるナバラに、たまにはそんなこともありますよと気の良い笑顔を向け、若者は花と香炉の入った籠を取り上げ竜の礼拝所へ朝の礼拝に向かった。

    「全く信心深い子だよ。テラン人の中でも朝晩欠かさず竜の神殿に詣でるなんてあの子位だ」
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