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    画像欄に置くのは微妙な写真やネタバレ感想、小ネタのメモ作文とかなんでも置く倉庫。自分の端末のデータ整理にも使う。主にHQの月日、🎤の銃二。雑多に投げる。

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    pixivが死ぬかもなので念の為の移植

    #白鬼
    whiteGhost

    白澤様が色覚異常になる話ある日僕の視界から色が消えた。あぁ、それでは齟齬がある。正しく言えば僕の世界の色は三色になった。
    黒と、白と、あの鬼の色。
    話は遡るが、白と黒だけのそんな異常な世界になった僕はまず最初にいかに異変を周りに知られないようにするかで頭を悩ませた。生薬作りでの葉の見分け、人と対話する際の話題、料理も自分では上手く出来なくなった。でも生薬作りも料理も優秀な弟子がいたし、人との会話もなんとか乗り切った。女の子へのプレゼントは、色の話になった時墓穴を掘るから贈るのをやめた。
    そしてなんとか色覚異常が出ている事を知られないように奮闘して生活している内に一つ気付いた。ある一つの色だけこの目に焼き付くように残る事を。
    気付いたのは店にあの朴念仁が来た時だ。
    「相変わらず貴方は仕事してませんね、桃太郎さんと店主交換した方がいいんじゃありませんか?」
    「お前な…!」いつもの様に喧嘩をして言葉を返そうと振り返った時、あいつは従業員のうさぎさんを抱きかかえようとしていた。その背中を見た瞬間思わず見惚れた。白と黒の視界の中に久しく見ていなかった色。あの朴念仁の背中に誇らしげに存在する鬼灯の朱色。あの色が僕の視界に飛び込んできた。僕でも見える色があるのかと僕はその時素直に喜んだ。そしてその後すぐ金棒で殴られた。なんで殴るのかと文句を言えばにやけ顔が気持ち悪い、と言われた。どうやら僕は嬉しさのあまり無意識の内ににやけてたようだ。
    それからの僕は希望に満ち溢れてた。あの朴念仁の朱色が見えたのなら特異的に他の色でも見える色があるのでは、と期待を胸に多くの人、物を見に行った。でもそのどれも空振りに終わり僕は落胆した。それと同時に気付いた。僕の目はあの色だけ写す事に。そう気付いた時の一番の感想はよりによってアイツの色か、だった。薬の色でも桃タローくんの緑でもお香ちゃんの水色でもリリスちゃんの黄色でも茄子くんの雪色でもなく日々嫌いだと公言しているアイツの色。
    白と黒の中で一際綺麗に映える朱色。
    そして同時に腹立たしいと思った。何も変化のない単調な視界にアイツが入ると嫌でも目で追ってしまう。見たくもない、あの背中を目で追ってしまう。酷い時なんかあの朱を探してさえいる。
    「…あ」
    「…チッ、お前か」
    花街で見かけた時白黒の面白味もない視界に映える朱色を見つけてしまった事で思わず無意識に袖を掴んでしまった時は本当にびっくりした。相変わらずの仏頂面がこちらを見る。白黒の中で浮かぶ朱色の持ち主。
    「貴方ですか何の用です」
    掴んだ袖は払われた。問われた言葉に思わず詰まる。用も何も、ただお前の朱色を近くで見たかったなんて言える訳がない。
    「別に、仕事の邪魔してやろうかと思って」
    苦し紛れに吐いた言葉を聞くなり問答無用で殴られた。その後「…何かありましたか」と問われたのには驚いたけど、この色覚異常は言えなかった。
    「何もないよ、何、僕の事が心配?」
    僕は笑った。アイツは笑わなかった。訝しげに僕を見るだけだった。
    僕はそろそろこの察しのいい鬼神に悟られると感じた。それと同時にこの色覚異常を知られるのが怖くなった。だから僕は隠す事にした。その日から極力お店に閉じ籠って人と会う回数を減らした。数日後には桃タローくんにも不審がられるのが嫌で自室に閉じ籠って人と関わるのを、やめた。
    僕の変わってしまった世界を知っているのは僕だけで十分なのだ。
    そう言えば多少格好はつくが実際は疲れたのだ。知られない様に気張るのも、他の人が見てる鮮やかな色を見れない悔しさも、それを羨やむのも疲れてしまったのだ。もう、何も見たくなかった。
    だから端的に目を閉じた。僕の視界は真っ黒になった。
    "鬼さんこちら"

    最近の白豚の様子はおかしかった。とはいえ女遊びと仕事のサボり具合は相変わらずで白豚のアイデンティティは保たれたままだったが向こうから声をかけてくる回数が増えた。
    前までは見掛けても声なんてかけることがなかったのに、向こうから声をかけてくる。会う度ケンカしかしないのにそれでも声をかけてくる。
    この前なんて余りにも憔悴しきった顔で服の裾を掴んできた。今まででは想像もつかない光景だ。そんな奴が不審でならなくて何か異変がなかったか尋ねた。
    返事は勿論はぐらかされたが、その返答でコイツは何か隠してると確信を得た。
    そしてその日から白豚を見かける事がなくなった。それまでは花街に行くだけで嫌でも耳に入ったアイツの噂さえ聞かなくなった。檎さんに聞いたらあの日以来ぱったり来なくなったそうだ。仕事の合間に茶々を入れてくるヤツがいなくなっただけだ、と自分の中の違和感と嫌な予感は呑み込んだ。依頼している薬はちゃんと納期に桃太郎さんが届けにくる。仕事にはなんら支障はない。むしろ前より円滑に進んでいるようなものだ。一人納得しようと頷いていたら檎さんがこっちもいいカモがいなくなっちまってスカンピンじゃ、とケラケラ笑った。
    嫌な予感が確信に変わったのはその三日後の事だ。いつもの様に桃太郎さんが薬を届けにきた際困った様に「白澤様、部屋から出て来てくれないんです」と洩らした。
    「部屋から出てこない?」
    「はい、女遊びに出掛けなくなったと思ったら三日前に部屋に入ったきり出て来なくなったんです。声かけても返事がなくて何してるのか…仕事の方は俺一人でもなんとか出来てはいますけどやっぱり心配で…」
    いよいよこれはおかしい、と腰を上げた。
    「桃太郎さん、すいませんが店の方にお邪魔しても構いませんか」
    溜まった仕事がまだまだ山積みだがいた仕方ない。仕事の山を見て見ぬ振りして桃太郎さんの後を追うように天国へ向かった。
    "手のなる方へ"

    「白澤様」
    コンコンコン、と部屋の扉をノックする桃太郎さん。返事はない。
    桃太郎さんに着いて極楽満月に行ったが、普段と余り変わらないように見えた。従業員のうさぎも、薬の匂いもいつも通りだった。ただ店の主の白豚の姿がないだけで。
    「白澤様、鬼灯様も心配してきてくれてますよ、出て来てくださいよ」
    桃太郎さんがもう再度、白澤様、と呼んだ瞬間声は返ってきた。
    「…会いたくない僕は外に出ないもうほっといて」
    久しぶりに出されたであろう声は掠れて聞けるものではなかった。
    「…白澤様、なんでそんな事言うんですか、ご飯一緒に食べましょう、一緒に薬を作りましょう、女遊びしてもいいです、朝帰りしても怒りませんから出てきてくださいよ」
    段々桃太郎さんの声が感極まって涙声になっていく。「ほっとくなんてそんな事言わないで下さい」その桃太郎さんの言葉は最後まで言葉として発されなかった。変わりに嗚咽が零れはじめる。はぁ、と一つ溜め息を吐いて扉の前で立ちすくむ桃太郎さんに声をかけた。
    「…桃太郎さん、少し離れて頂けますか」
    「鬼灯様?」
    「まどろっこしいので引っ張りだします」
    痺れを切らしたのも事実だが何より桃太郎さんが泣きだしたのを見ていられなかった。大事な弟子を泣かせる白豚の無様な姿をこれ以上見たくなかったのだろう。
    扉の前に立つ。金棒を担ぐ。振りかぶる。コンマ以下。
    泣きそうな声はどこへやら、桃太郎さんが「鬼灯様ぁ!?」と叫ぶ。泣きやめた様で何より、だなんて白々しい事を思いながら「では、白澤さんとお話しして来ます。桃太郎さんはこちらでお待ちください」と言って部屋の前、元は扉があった場所に立ち止った。
    明かりも付けられていない真っ暗な空間が目の前に広がる。
    一度目を閉じて、そして深呼吸をして、目を開いた。
    "もういいかい?"

    張り倒した扉を踏みつけながら部屋の中に入る。
    ドアをぶち破った事で砂埃が舞い、その埃に噎せてけほけほ咳をしながら部屋の奥に入れば部屋の隅の方で膝を抱えてぼろぼろ涙を落としていたであろう白豚と目が合う。
    「お、おま、な、な」
    「いよいよ人語も喋れなくなったか偶蹄類」
    ドアを破壊されると思ってなかったからか驚愕して涙も引っ込んだらしい。なんとか「ドアどうしてくれんだ」だの「嫌がらせなら他当たれよ」だの以前の様な憎まれ口が出て来るが、それでも普段に比べれば全然弱々しい。いつものが猫パンチなら今のはただの威嚇だ。かわいらしいにもほどがある。
    「極楽万月店主の神獣からただの引きニートに転職した貴方を見ようかと思いまして」
    顔を伏せて私と目を合わせることを拒絶した白豚さんの隣までつかつかといつも通りの悪態をつきながら歩み寄って腰を降ろす。これは話を聞くまで帰らないという意思表示。触れた肩から伝わってくる人の体温。呼吸の音は二つきり。
    白澤さんの肩に寄りかかる様にして目を閉じた。
    "まあだだよ"

    何時間たっただろうか。備え付けの窓からみえる景色も段々暗くなってきた。
    「暗くなってきましたね」
    俯いたままの白澤さんに言うでもなくひとり言のように呟いた。案の定応えはない。ただ肩がぴくり、と揺れた。そろそろ頃合いか、と心の中で深呼吸。そして口を開いた。
    「白澤さん、何があったんです」
    深呼吸がいけなかったのか今まで自分でも出したことのないような声色になった。流石の白澤さんも驚いたのか顔をあげた。久々にまじまじと見る顔だ。
    じ、とまた暫く見つめ合う。すると観念したかのように自嘲気味に白澤さんは笑って言葉を紡いだ。
    「僕の世界から色が消えたんだ」
    目が九つもあるのにね、と冗談交じりに言おうとした言葉は涙でかき消された。
    「みんなの姿も何もかも白黒なの。前まではみんな色付いてたのに、なんで、僕の世界だけ、」
    「…」
    何も言えなかった。かける言葉を誤りそうでただ絞り出される言葉を受け止めた。
    「だから目を閉じたんだ。見たくないのに見えるから。見たいのに、見えないから。なのに、なんで」
    ぎゅ、と白澤さんの目が精一杯閉ざされる。涙の雫は床に落ちて水溜りを作る。
    「お前の赤だけ僕の視界から離れないんだ、なんで、離れてくれないの、忘れさせてよ、どうせ見えなくなるなら全部見えなくていい」
    小刻みに震え出す肩にかける言葉を探した。
    「なんで、お前の赤だけ僕の世界に残ったの。なんでそんなに鮮明な赤だけ」
    いよいよ言葉は途切れた。変わりに聞こえ出したのは嗚咽だった。
    「…今までずっと、それを隠してたんですか」
    ようやくかけた言葉はそんな確認だった。白澤さんの返事は無言の首肯だった。
    「よくここまで我慢しましたね、生薬の葉の色だとか、色々苦労したでしょう」
    どんな言葉をかけるべきか悩んだ結果、私は伝えたい言葉だけを送る事にした。嘘偽りのない、真っ白な言葉。
    「…少しは周りを頼ったらどうです。そんなに私たちは信用出来ませんか?色の分からない貴方を邪魔だと思うと思いましたか。桃太郎さんだって私だって貴方の世界に色を付けれるのならちゃんと話をしますよ。色だって伝えます。目で見えないのなら言葉で貴方の世界に色を付けます、それではダメですか」
    また息を吸い込んだ。
    「貴方の世界に私の色を残しては頂けませんか」
    拒絶される恐怖は心の中に押し込んで言葉を紡いだ。項垂れたままの白澤さんの頭をじっと見ながら言った。合わない視線のままに懇願した。
    「私の色を見ていてはくれませんか」
    床の上に投げ出されたままの白澤さんの手に触れた。びく、と強張りはしたが拒絶はなかった。
    「…色のない世界で、色を見ると嬉しいんだ。僕でも見れる色があるって、嬉しいんだ。だから、僕はお前を、お前の赤を見る度嬉しくなってしまう。そんな僕でもいいの。お前の色を僕の世界に置いてもいいの」
    白澤さんはふと顔をあげて不安そうに眉を下げて私の顔を見ながらそう聞いた。
    「私の色しか貴方の世界にないなんてなんだか特別じゃないですか、特別は嫌いじゃありませんよ」
    目を逸らすことなくそう答えた。すると白澤さんは安心した様でふにゃりと笑った。
    「やっぱり、お前変だよ」
    「貴方に言われたくないです、桃太郎さん泣かせる様な事言って。師匠の風上にも置けませんね」
    繋いだ手の指を絡めてそれからは少し話をした。何気ない日常の会話。口喧嘩をして、悪態をついて。
    そうしている内外は明るくなって来た。
    「ねえ、今外は何色」
    「日の出で青色と光が混じった様な色です。すっかり朝ですね」
    外を眺めながら言えば隣で白澤さんはふふ、と笑った。
    「どうしました」
    「朝の色なんて久しぶりに見れたから嬉しくて」
    恐らく白黒でしか見れていない二つの目で懸命に外を見る白澤さんがどうにも愛おしく感じられてしまって「そんなのいくらだって見せてあげますよ」なんて口走った自分自身に呆れた。
    これじゃまるで、私がこいつを好きみたいだ。そう思いはしたけども、それは黙って置く事にした。
    また白澤さんの方を向けば泣き腫らした赤い目の白澤さんと目が合った。白澤さんは困ったように、嬉しそうに笑った。
    "見ぃつけた"

    「あ!鬼灯さん!」
    「桃太郎さん、ご心配おかけしました、お待たせしました白澤さんです」
    話も落ち着いた所で白澤さんを部屋から出した。今まで暗い部屋で歩く事もしてなかったからかふらふらと危なっかしかったから手を引いて歩いた。後ろの方から「野郎の柔らかくもない手なんて…」という文句が聞こえてきたから思いっきり強く握ったら小さな悲鳴の後に静かになった。桃太郎さんは私たちに気付くと直ぐに椅子から立ち上がって駆け寄って来る。白澤さんは眩しそうに目を細めた。
    「白澤様!」
    「桃タローくん、ごめんね、ほっといてなんて酷いこと言って」
    もう大丈夫だよ、と笑う白澤さん。
    「よかったです、もう、出て来てくれないかと…」
    また泣き出しそうになった桃太郎さんをよしよしと宥める白澤さんを横目に従業員のうさぎさんを抱き上げて椅子に腰掛けつつ背中を撫でる。すんすんと鼻を鳴らす真っ白なうさぎさん。そこでふと白と黒と朱色だけの白澤さんの世界はどんなものか想像してみたが色付いたままの私の目では想像も出来なかった。
    でも、それだからこそ。
    白澤さんの世界に色をつける事も悪くないと思うのだ。九つもある目をもってしても見れなくなった色のある世界。ずっとなくなったままの世界を私がいるだけで色付けてやれるのなら色のある世界を見せてやりたい。色のない世界は大層寂しいだろう。寂しがりの神獣にはきっと耐えられまい。
    その為にも色の名称や想像しやすい説明を考えないと、などと思ってしまう私も中々に馬鹿だとため息をつきつつ色付いた世界を閉じた。
    聞こえるのは桃太郎さんと白澤さんの声。極楽満月はいつも通りだ。
    そしてまた目を開けて立ち上がる。
    「長居し過ぎました、そろそろ戻ります」
    扉を開けて空を見上げた。雲ひとつない青空。
    「なぁ、何色?」
    うきうきと尋ねてくる彼をちらりと振り返り、「吸い込まれそうな蒼です」そう答えれば満足そうに笑う白澤さん。ふと気になって「貴方は」と尋ねた。
    きょとんとした顔をする白澤さんを見て質問を誤ったと思い訂正しようと口を開いた瞬間「お前色」と彼は至極幸せそうに答えた。
    「…貴方には敵いそうにないですよ」
    舌打ち一つ、してやったり顔一つ。
                 -fin-
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    DONE「ランサーのクー・フーリンが女性だったら」妄想、第2話。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    【あらすじ】
    女性のクー・フーリンに戸惑うマスターたち。
    カルデアにいる他の英霊たちは誰も"彼女"のことは知らず、ランサークラスのクー・フーリンは意気消沈してしまう。
    そんな中、クー・フーリンの師匠であるスカサハが、ひとつの提案をする。
    ミラーリング #2(カルデア編) 扉を開ければ、パチパチと炉ばたで燃える温かい火。
     焼いたパンと、山羊の乳の匂い。
     刺繍の手を止めて、彼女が顔を上げる。
     一歩を踏み出せない自分を見つけて、その美しい目が細められる。
     椅子から立ち上がり、白くて細い手を差し出しながら彼女は微笑む。
     ──おかえりなさい、猛犬さん。

    ***

    「どおいうことぉぉぉっっっ!?!?!?」
     マスターがすっとんきょうな声を上げた。隣ではマシュが「先輩、落ち着いてください!」と必死になだめている。
     マスターたちの前では、召喚されたばかりのランサークラスのクー・フーリンが、戸惑ったように立ち尽くしていた。
     かの英雄の象徴ともいうべき赤い槍を両手でぎゅっと握りしめ、不安そうな顔であたりを見回している。
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