誓いの言葉「帰ったぞ、法正殿!ん……?」
玄関を開けすぐ返事をしてくれないのは何時ものこと、見慣れた革靴で留守では無いのを確認した。だが隣に法正殿よりは大きく俺よりは若干小さい、何処か記憶にあるスニーカーも視界に入る。居間に繋がる扉は開いていたので眼を凝らしてみれば、予想通り短く跳ねた黒髪を掻く仕草が垣間見えた。
「ええと……その、今日は……大事な話があるんだ……」
ローテーブルの奥で法正殿と向かい合い、口籠りながら放たれた言葉で身動きを止めざるを得ない。徐庶殿は法正殿と同じ大学時代を過ごした、親友同士であろう。二人にしか知り得ない話もあることは、理解している。本当は羨ましい上に歯痒い、昨今の関係性を考えれば俺達は皆家族同然だが。とはいえ一旦気を落ち着け、踏み止まる。
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