放課後の煌めき 花火大会「よろしくねー、若」
「後で連絡するよ」
信号を渡り手を振る馬岱と徐庶殿に応え、再び街路樹を歩き出す。進む程に解る、普段の靴とは違う下駄の重み。生温さの残る日暮れの風も、萌黄の浴衣を吹き抜ければ何処か心地好かった。
高校生活最後の夏休みも、後僅か。今年は四人で地元の花火大会に行くことにした。折角だから浴衣にしようと馬岱が言うので、先ずは着たことが無い徐庶殿を家に呼び三人で出発する。徐庶殿の提案で見物の場所取りは二人に任せ、一人駅前へ辿り着いた。学校の最寄りで、見慣れた改札口の筈。周りの高揚が伝わるのか、或いは。もうすぐ逢えるのかと考えてしまうと、胸が熱く滾り出す。
ホームに停車し次々と降りる多勢を眺め続ければ、不意に鼓動が震えた。これまでの道程も、今も数多く見ているというのに。前髪を掻き上げ、菖蒲色の縞が入る浴衣が階段を降りてきた瞬間。
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