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    izayoi601

    @izayoi601

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    izayoi601

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    浴衣で花火大会に行く西涼二直が書きたかっただけの話。前半は超法で、後半に少し庶岱。青春のきらきらした感じにしたくて学パロにしました。もし宜しければ。

    #超法
    superLaw
    #庶岱
    shuDai
    #西涼二直
    xiliangErzhi

    放課後の煌めき 花火大会「よろしくねー、若」
    「後で連絡するよ」
     信号を渡り手を振る馬岱と徐庶殿に応え、再び街路樹を歩き出す。進む程に解る、普段の靴とは違う下駄の重み。生温さの残る日暮れの風も、萌黄の浴衣を吹き抜ければ何処か心地好かった。
    高校生活最後の夏休みも、後僅か。今年は四人で地元の花火大会に行くことにした。折角だから浴衣にしようと馬岱が言うので、先ずは着たことが無い徐庶殿を家に呼び三人で出発する。徐庶殿の提案で見物の場所取りは二人に任せ、一人駅前へ辿り着いた。学校の最寄りで、見慣れた改札口の筈。周りの高揚が伝わるのか、或いは。もうすぐ逢えるのかと考えてしまうと、胸が熱く滾り出す。
    ホームに停車し次々と降りる多勢を眺め続ければ、不意に鼓動が震えた。これまでの道程も、今も数多く見ているというのに。前髪を掻き上げ、菖蒲色の縞が入る浴衣が階段を降りてきた瞬間。
    此処に居る誰よりも、眩く映った。
    「馬超殿……?どうしたんですか」
    「うむ、迎えに来た」
    「俺は現地集合では……」
    「構わない、法正殿は初めて行くのだろう」
    二手の方が良いからな、と答えれば溜息を吐きながら眉を潜める。
    「……余計なことを」
    「?」
    「いえ……お気遣いには感謝します……行きますか」
    「ああ」
    微か過ぎて聞こえなかったが、二人で川沿いを目指し脚を進めることにした。隣から響く涼やかな下駄の音に聞き惚れ、歩幅は自然と合わさる。毎年馬岱と幼い頃から、胸を踊らせた道だった。側道に屋台が現れ始めれば賑やかで、行き交う人々も増えていく。今年もその筈で、変わらない。
    「それが、御祖父殿からの戴き物か」
    「ああ、ええ……」
    浴衣は祖父に教わり着ることが出来る為、法正殿は直接来ることになっていた。聞いた瞬間から鼓動が逸り、夕暮れを待ち侘びてしまう。
    「……似合うぞ、法正殿」
    それでも、漸く出た言葉はこれだけ。脳裏に溢れ過ぎ、表現しきれない。
    「……馬超殿も、悪くないですよ」
    柔らかな言葉が、身体中に染み込む。提灯で鮮やかに照らされた黒髪、僅かに覗く川面に反射した月を映す紺青の瞳。目移りする様な景色の中、他には視界に入らない程。ああ、本当に美しい人だ。もっと傍に居たい、貴方の近くに。
    「……ば、馬超殿……」
    「ん、どうした」
    「先程から……近過ぎますよ……」
    呟きながら顔を背けられて漸く、歩きながら距離を詰め歩道の奥へ寄せ続けていたことに気付いた。
    「済まない」
    「急に何ですか……」
    呆れた様な問いに、上手く喉を言葉が通らない。擦れ違う者が増える程、沸々と湧き上がる感情に自らも驚く。何故か今の法正殿を、他の人間に近付けたくない。見て欲しくないと、考えてしまうなど。
    歩行者のみと規制され始めた道路を向き直し、改めて会場を目指す。
    「……大学は決まりそうか」
    「やはり第一志望に……馬超殿も所属先が決まったんでしょう」
    「皆が俺を求めてくれる、行くのは当然だ」
    「ふ、貴方らしいですね」
    無意識に思い起こした、進路の近況。俺はバイクレースチームのある会社へ就職し、法正殿は進学する。来年はもう、頻繁には逢えないことを意味していた。互いに口元は緩んだが自然と会話は減り、会場へ繋がる橋を渡る。履物が慣れないせいなのか、法正殿の歩幅が何時もより小さい様に感じてしまう。そうだとするなら俺にも、都合が良かった。
    あともう少しだけで良い、並んで歩き続けて居たい。浴衣から覗く褐色の首筋が、一筋の雫で少しはだけた胸元まで煌めく。艶かしさに息を呑み、奥底の魂が熱を帯び昂る。
    このまま離れたくない、どうか隣に居て欲しい。燃え盛れど燻る感情を、少しでも伝えられたら。今すぐこの腕を、その肩へ伸ばしてしまいたい程に。
    「……法正殿、俺は」
    眼を見開き、此方へ視線を合わせてくれた瞬間。

    「「あ」」

    夜空へ昇り、轟音と共に花開いた。橋の上、鮮やかな色彩が川面へ落ちる光景に二人で眼を奪われてしまう。
    「綺麗だ」
    思わず、言葉が漏れた。注いだ鮮やかな色彩に染まる髪に、見蕩れて。
    「……ええ」
    前髪に隠れ表情は伺い知れないが、少し和らいだ口元を見つけ今は満ち足りていた。この時だけは、脳裏に焼き付けたい。
    「いかん、馬岱と徐庶殿と合流せねば」
    「そうですね、早く探しましょう」
    「だがその前に……たこ焼きだ」
    「は?」
    橋を渡りきった直後、屋台の香りに誘われ駆け出す。遅れた分、二人へも買ってやらねば。睨み付けた割には杏飴へ手を伸ばす法正殿に笑みを溢し、これだけは伝えておきたく口を開いた。
    「また、法正殿に来て欲しい」
    願いを込め呟くと、隣で艶めく睫毛を瞬かせ、静かに伏せた瞬間。
    「……機会が、ありましたら」
    飴を纏って光る唇が動き、胸が震えた。拒否はしないで居てくれたことが、何よりも嬉しかった。人は皆等しく慕い守ることが正義だと思っている、それは変わらない。その志を飛び越えても、独り占めしたい存在に気づいてしまった。卒業までに必ず、今日は堪えた指先を躊躇い無く伸ばすと誓おう。
    『貴方だけ』は、俺が。


    「ひゅう、上がったー!」
    「良い場所だったね、綺麗に見える」
    土手沿いにレジャーシートを引き、腰を落ち着け箸を割った瞬間。遂に夜空へ、大輪が咲き誇った。隣の馬岱殿は鼻歌交じりにパックを開き、得意気に焼きそばを啜る。
    「……ほらね、一発目までに来なかった」
    「はは、君の言う通りだ」
    賭けは馬岱殿の勝ちだったな。焼きそば代を渡せば、満足そうに目玉焼きも頬張った。
    「……来年は卒業してるし、積もる話もあるじゃない」
    「……そうだね」
    互いのことは重々承知しているからこそ駅に向かわせた、連絡も文字を打つだけに留めた。それに、俺も。
    「その浴衣、似合ってるね」
    「それなら、君のお陰だ」
    箪笥から出しては悩み選ぶ姿も、青緑の布を着付けるうち腰を滑る指先や掛かる吐息、見つめる白藍の瞳にも心音を誤魔化すので精一杯だった。今も松葉色の浴衣から溢れる鍛え上げた胸元に、身体が飽和し張り裂けそうで。何か言葉を発しなければと、唇を動かす。このままだと、ずっと魅入られてしまうから。
    「……こ、今度からは俺にも着れそうだ……ちゃんと浴衣も、用意して来るよ」
    君に面倒を見て貰ってばかりでは、情けないな。来年こそは、君を迎えに行けるくらいに。笑みを浮かべると馬岱殿は箸を止め、突如何故か瞳を伏せた。
    「ええと……どうしたんだい?」
    「……本当解ってない、徐庶殿」
    肩を力強く握られ、背筋へ緊張が走る。眉を釣り上げ、油で艷めく唇を一気に開き。
    「来年はどういう浴衣にして、着付けしようかなって考えてたんだよー!そうやって俺の楽しみ奪おうとするんだから!これだから何でも出来る人は……!」
    「えっ……そ、そうだったのか……」
    難しいな、俺はただ君に負担を掛けたくないから言ったのだけれど。それでも、口元が緩んでしまう。俺に頼られるのが、楽しみだなんて。俺達も来年は進学と就職で、この街からは離れることになる。
    「ごめん……ありがとう、馬岱殿……また、頼んでも良いかい」
    漆黒に咲いた光で輝く胡桃色の髪は柔らかく揺れ、満面の笑みを浮かべてくれる。だからせめて、傍に居る瞬間だけは。
    「うん、勿論」
    君の温もりに甘えるのを、許して貰えたら。胸に湧く感情を抑えきれず、渦巻く髪先へ指を絡めてみた。口角を上げ、距離を縮められ。
    「……キスでもする?」
    「え?!駄目だよ……二人が来たらどうするんだい」
    悪戯な誘いの言葉に、微かだが心が揺らぎ鼻先を近付けた刹那。
    「済まない、二人共!!」
    「お待たせしました」
    「……あ、やっと来たー!」
    良かった、思い留まって。別の意味で心音が大きく高鳴り、胸を抑えながら二人を迎える。
    「屋台で色々買ってきたぞ!」
    「お待たせした分ですよ」
    「ありがとう、早速皆で食べようか」
    たこ焼きにお好み焼き、イカ焼きや杏飴に加え彩り豊かなかき氷。祭りの風物詩がレジャーシートを、夜空は犇めく灯火で埋め尽くされていく。
    「……余計なことをするな、お前だろ」
    「いや、その……ええと……良いじゃないか……君にも、楽しんで欲しかったんだよ」
    着いて早々小声で睨み付けられ焼きそばも奪われたが、仄かに染まった頬には密かに口角を上げてしまった。
    「こういうのも楽しいよね、若」
    イカ焼きを噛み締める馬岱殿の横で、たこ焼きを一気に含みながら真っ直ぐに空を見据える。
    「……ああ」
    閃光を映し、希望に煌めく黄金の眼差しに安堵し此方も箸を伸ばす。
    「あ……そろそろじゃないかな」
    「うむ」
    「何ですか」
    「ほら、見て見て!」
    馬岱殿が指差す先で、一閃が宵闇を貫き華やかに弾け飛ぶ。
    「「「おお……」」」
    「いやっほー!」
    腹を打ち付ける程の振動を響かせ、眩い流星の如く降り注ぐ。浮かび合わさる笑顔を眺めれば、この先もまた皆で感嘆を漏らしながら見上げられそうだ。胸を踊らせ、舌で氷を転がせば天色の甘味に綻んだ。
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    izayoi601

    DONE桜の季節の話が久々に書きたくて、かくわい先生としょうかいくんがただ話してる学パロになりました
    この二人の親子みたいな関係性が好きで…ずっと温かい関係で居て欲しい
    青春しているしょうかいくんが先生には素直に本音を話せるところを書きたかっただけですがもし宜しければ
    ぶんおうくんは出てきませんがほんのり鴦鍾です
    私の先生「何なんだ、あの女……」
     今日は進路相談の筈だろう。天命館学園では二年生の春に行われる、担任からの個別面談。一年から引き続いての辛憲英先生と向かい合い、肝心の進路の話はほんの数分。まぁ私程優秀ならば口を挟まれる様なことも無いのだが、切り替わった話題が実に下らない。
    『文鴦君とは、その後如何ですか?』
    やれ『仲良くなられたのでしょう?』だの『ご友人との旨は胸を張って話すべきですわ』だの、駄洒落混じりに満面の笑みを浮かべながら根掘り葉掘り。ここ最近では最も疲弊した、もう何も話したく無い。
    「……それで、此方に居らしたのですね」
    気が付くと化学準備室の方向へ足を進め、まだ旧式とあいつが揃っていないことを見計らい扉を開ける。ローテーブルに緑茶を置かれ、少しずつ啜れば動かしたくなかった口でも言葉が奥底から湧き出て来た。
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    izayoi601

    DONE公式さんのエイプリルフールから妄想して勢いで書いた、まんちょうどのが開発したARデバイスを付けるほせどのの現パロ超法小話
    二直とまんちょうどのは同じ工科大に通っている設定です…試作品で色々振り回されてほしい
    まんちょうどの久々に書いたので温かい目で見てやってください
    ちなみにじょしょどのはばたいどのの姿が見えた途端名前を呼びながら抱き締めました
    映るのは「……と言う訳で、早速着けてみてくれるかな」
     その訳を説明されても、俺に着ける義理は無いのだが。高校を卒業して工科大生活が始まってからというもの、徐庶と学部が同じことで出会った一癖ある彼の行動には呆れさせられた。流石教授から、創学以来の変わり者と言われるだけはある。大学部まである筈の名門鳳凰学院から、自由に発明へ没頭したいだけで此方を選んだという経緯だけでも納得したが。
    ゼミ棟の一室に篭っていたかと思えば、今も翡翠に光るサングラスの様な電子機器を否応無しに持たされてしまった。
    「ですから、何で俺まで」
    「ははっ、何事もデータは多いに越したことないじゃないか」
    要は趣味で作った発明品の実験台だろ。無邪気に至極当然という表情で答えられ、溜息を吐く。
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    izayoi601

    MOURNING二年前に書いた艾淮本の番外編。
    現パロで定軍山の関係性を書いてみたくて、棋士淮殿の好敵手ならほせかなと試し書きしたものです。いざ書いたら艾淮が少なく、はまったばかりの超法を入れ込み過ぎ誰得なのか解らない話になってしまった…と仕舞っていましたが折角書いていたので此処にあげておきます。書いた私だけが楽しかった話(大体そう)ですがもしご興味ありましたらお暇な時にでも。
    忘れ難い好敵手「…おや、大分上手になりましたね…鄧艾殿」
    「いえ、当然ですが…やはり、郭淮殿はお強い」
    共に過ごせる時、リビングに将棋盤を置いて愉しむのも一興。貴方と向き合うのは、人生を将棋に捧げてきた私にとり大切なものだった。勝敗はどうより、貴方のことが手に取る様に解るから。
    「ふふ、けっほ…貴方の盤石に固めた差し方をするところ…とても、好きですよ」
    「はは…どうも、無作為に飛び出す勇気は無く…見事に隙を突かれてしまいます」
    「将棋は、性格が現れますからね」
    盤の上を眺め、相手がどの様な考えかを読み解き降すのが棋士。重厚な守備と揺るぎない実直さを感じ、何時までも差して居たかった。
    「今更ですが、郭淮殿は棋士として様々な方と差しておられますよね…何方か、印象深い方はいらっしゃいますか?」
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