青年将校自殺未遂事件資料③ 聴取書(三一六年三月二日)恐ろしい夢を見ました。
見慣れているはずの街中に、知らない景色と知らない人が溢れかえっていました。閑静な住宅街の中にある小さな公園だったはずのそこは、青く輝く湖と、人の顔を模したと思しき、黄金色をした気味の悪いオブジェが聳える巨大な景勝地に変わってしまった。薄汚れた野盗の巣窟と成り果てたそこで、俺はそいつらに首を撃たれました。鞄を盗まれそうになったから抵抗しただけなのに、酷い人たちです。
気づけば、学校のような場所に場面は切り替わり、そこには初等科の同級生たちがいました。当時は親しかったはずなのですが、今は全く疎遠になってしまった彼らととりとめもない会話を交わしました。けれど、俺はそこでもひとりぼっちでした。ああ、弓を習わないか、と同級生の一人が頻りに誘いをかけてきましたね。それも楽しいのかもしれません。
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