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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

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    POIPOI 79

    palco_WT

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    B級にあがった頃の犬飼とフリー隊員だった辻ちゃんが出会って恋に落ちて、二宮隊に入るまでのお話の一部。

    #辻犬
    streetDog

     辻はペンライトほどの金属の棒を手に取ると、軽く振った。空気を切り裂く音と同時にそれは一メートルほどの長さになった。
    「伸縮性のトレッキングポール、山登りの際の杖とかに仕えるやつです。軽くて丈夫なカーボン製で、携帯性がいいので護身用におすすめです。これ、あげます」
     しれっと辻は笑って告げる。
    「……あ、ありがとう」
    「縮める時はこう、です。ガラスだと割れるのでなるべく固い面に押し付けて下さいね」
     柄の部分を逆手に持ち直すと、コンクリートの部分に先端を置いてぐっと力をこめると、柄の部分に伸長したパーツは格納される。
     はい、とそれを渡されて、犬飼はぞくっとした。そこまで近づいて分かる。彼が黒っぽいウィンドブレーカーを羽織っていた理由を。
     かすかに血の匂い。
     返り血が目立たないように、だ。
    「いぬかいせんぱい」
    「……何?」
    「あいつらを殺さなかったのを、褒めて下さい」
     幼いこどもみたいに舌足らずに名を呼び、睡蓮の花のように優美に微笑んだ辻の顔を、自分はたぶんこの先一生忘れないだろう、と思った。




    「思ってたのと違った……」
     ため息と一緒に吐き出された言葉に、「何がだ?」と荒船が振り返る。
    「いや、こう、もっと冷静っていうか、おとなしい……とは違うな。おとなしい奴がそもそもボーダーの隊員になろうなんて思わないか。いやでもなんて言ったらいいのかな。将来有望な人懐こくて勇敢な黒柴かと思ったら、もう訓練済で犯人見つけたら首っ玉に噛みついてボロ雑巾になるまで引きずり回せるようなドーベルマンの若い成犬だったっていうか」
    「誰が」
    「辻」
     ……へえ、と荒船は興味深そうに軽く頷いた。
    「あの一年の弧月使いだろ。ゾエと同期入隊、だったかな。攻撃手だと確か戦闘訓練一位抜けだったはずだぞ」
    「マジ? 有能じゃん!」
    「あと剣道と合気道の有段者って話だ。確か兄貴もインカレで三位だったはず」
    「そうなんだ」
     思えば自分はまだろくに辻のことを知らない。
     それにしても、だったらなんでどこにも所属しないでフリーで遊んでるのだろう、といぶかしくも思う。腕に覚えがあるならさっさと手続きをして、どこかの隊に拾ってもらうように志望するか、同じようにフリーのB級隊員を誘って新たな隊を編成するかしているだろうに
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    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983