「ダメだよ、A級の加古さんが連れてっちゃったら、ランク戦で当たれなくなっちゃうじゃん」
「でも生駒隊ならいつ何時A級に上がってもおかしくないと思うけど?」
うふ、とほくろが添えられた唇で微笑むさまが、五つ下の樫尾からすればとんでもなくおとなっぽく感じる。
「カゲ先輩と二宮さんだけでもうざかったのに、カゲ先輩ンとこが降格てきたばっかじゃん! すぐは無理!」
(すぐじゃなきゃ行けるって思ってるんだ)
その、呑気そうで無邪気な笑みの下に隠された海の覇気。自分はもし同じ問いを投げかけられたとしたら、彼のようにためらいなくA級に上がれると言い切れるだろうか。
それはそうねえ、と勧誘がどこまで本気なのか、樫尾をホールドする力を、わざと海に見せつけるように強くしてみせた。
「か、加古隊長っ! 離してください」
背中に、ふくらんでる何かが当たって、樫尾はひたすらに泡を食う。
「加古隊長だなんて他人行儀。さん付が言いづらいなら、私だって六頴館高校出身なんだから、加古先輩でもいいのよ? 望さんでも構わないけど」
「そんなんもっと無理でしょー」
真っ赤になってじたばたしてる樫尾を代弁するように、海が告げる。すると、加古は、そう言えば、ときらりと瞳を輝かせた。
「そう言えば南沢くんも名字じゃないけど名前が海だから、Kね。だったらふたりともうちに来る? ちょうど部隊の残り枠枠ふたつだし。杏だったら五人くらいさばけるわよ」
「加古さん、やめてくれへん、お眼鏡にかなったのは光栄やねんけど、それでもうちの秘蔵っ子なんやから」
「あら生駒くん」