仙人掌と向日葵 朝に目を覚ました太宰は、歯を磨きながら何とはなしにテレビを見る。退屈な朝のニュース。そうしてふとテレビ台の上に置かれた小さなサボテンの鉢に目をやると、あ、と小さく声を漏らした。
「……枯らしちゃった……」
小さな小さな丸いサボテンは、黄色くなって萎れた蜜柑のようになってしまっている。
「えっ、太宰さんってば、サボテン枯らしちゃったんですか?」
探偵社のデスクで敦が資料をまとめながら、目を丸くして云った。
もとはといえば、あれは敦と二人で雑貨屋に行った際に敦が買ってくれたもの。なので、太宰が素直に枯らしてしまったと伝えたらこの反応である。
「サボテンなんて枯らす方が難しいと思うんですけど」
PCを立ち上げながら、太宰はしょんぼりした様子で敦に謝る。
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