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    bunbun0range

    敦隆、龍握、タダホソの人。

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    bunbun0range

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    敦隆。クソ甘い。
    ジャンケンで受けを決める話。

    #敦隆
    dunlong

    じゃんけん「じゃんけん、ポイッ!」
     じゃんけんをした。文字通りの他愛もない、シンプルで知名度も高い勝敗の決め方である。誰しも一度ではなく何度も勝った負けたを経験しているはずだ。
     しかし、俺たちがしているのは、ただのじゃんけんではない。今後続いていく夜の営みのポジションという己の尊厳をかけた大勝負だった。
    「……」
    「……」
     杁が出した一手は、硬く握りしめられたもの。けれど、俺の手は平和の象徴の形をしていて、サーッと血の気が一気に引いた。
    「……さ、三回勝負だ」
    「いや、お前が一回だって決めただろ」
    「一回じゃ勝負がつかない時もある」
    「おいおい。そんなことあるはずねぇだろ。今まさに勝敗がついてるじゃねぇか」
     目の前の現実を受け入れられず、支離滅裂なことを呟いてしまった自覚はある。しかしここで食い下がらなければ、今後こいつに組み敷かれ続ける羽目になる。二十年以上出口だと思っていた部位が入口になるのだから、不具合を起こす心配を今後何十年もしなくてはならないのだ。痔になって病院にお世話になるということは避けたい。
     それ以上に、出口に男のものを突き立てられ、アンアンと喘ぐ自分の姿を想像してほしい。情けなさで確実に萎える。
    「いいから三回勝負だ! 次に勝ったものが勝者となる!」
    「俺が勝ったら終わるが、お前が勝ったらもう一回あるぞ。お前……さてはだいぶ混乱してるな」
    「うるさいっ!」
     ぴしゃりと嫌味なほど冷静な言葉を撥ね付けて、今から喧嘩を行うが如く拳を握りしめる。もはや後のない戦争だ。一度たりとも負けることは許されない。
    「ほら、お前も構えろ」
    「……」
     睨みながら催促をかければ、眉間に皴を刻んだ杁が、俺を真っ直ぐ見つめた。
    「なぁ……なんでそんな拒否すんだよ」
     ポツリ、自信のなさそうな、そして哀感を帯びた声で問いかけてくる。
    「……あぁ?」
    「答えねぇとじゃんけんしねぇぞ」
    「お前はわがままな子供か」
    「……それはそっくりそのままお前に返す」
     くだらないやり取りの後、何も返答しないでいたら杁が拳を背中に隠し、ひどく睨まれた。これ以上ないほど不機嫌な顔で。
     お前が言うまで言わねぇぞという強固な意志を感じとり、しょうがないなと、俺は肺に溜まっている空気を全て吐き出すように深くため息をついた。
    「俺の喘ぎ声など、俺自身が一番聞きたくない。男の乱れた声など誰も聞きたくないだろ。あと、尻が死ぬのは避けたい」
    「……」
     本音を伝えれば、杁が「俺に抱かれるのが本気で無理ってことじゃねぇんだな」と当たり前のことを呟いた。もしお前の心配した通りなら、そもそも恋人にはなっていない。こんな馬鹿みたいなじゃんけんをすること自体、そういう行為に前向きなことくらいわからないのだろうか。
    「まぁ最後のやつは、準備次第として……お前の喘ぎ声を聞きたい奴もいるかもしれねぇだろ」
    「は……?」
     最初はグーの形をした自分の手を、奴のでかい手のひらが無理矢理包み込んで、この勝負は終わりを告げた。
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    bunbun0range

    DONEバレンタインの敦隆。2022年ver
    恋人同士の2人が迎える初めてのバレンタイン
    「手作りも用意してる敦豪がまず渡してみたチョコ」と「自分はデパ地下で買った隆景が渡されたチョコ」
    チョコをくださった方、ありがとうございます!
    とりあえずのチョコの話 バラエティパック。お菓子の詰め合わせ。
     そんなコンビニでよく見かけるチョコレートが、手の上に置かれた。当然、プレゼントを包む綺麗な包装もなければ、持ち運びに便利な袋もない。ここがコンビニなら、迷わず有料のレジ袋を購入するところである。赤く大きなパッケージは、手に持って歩くには目立ちすぎる。
    「……」
     チョコだ。チョコである。チョコ以外の何ものでもない。
     渡されたチョコをただ無言で見つめる。どこをどう見てもチョコなのだが、それは自分が思い浮かべる『チョコ』と少しどころか、だいぶかけ離れていた。
     いや、男同士の場合のバレンタインというものはこういうものなのかもしれない、と頭の中で整理する。百貨店で女性陣にジロジロと見られながら購入した高級ブランドのチョコはバックの中に入っているが、自分のようにアウェイの地に行く男性など滅多にいない。コンビニで購入できるチョコを贈り合うのが、確かに相手を思いやったことなのかもしれない。
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    bunbun0range

    PROGRESSタダホソ進捗
    東京で過ごす2人
    (ここら辺から飛び飛びになる)
    東京でイチャつくタダホソ 成田空港と羽田空港は意外と遠い。
     リムジンバスで約一時間。直通の電車を利用すれば、二時間半弱である。県を跨っているからといえば、そうなのだが、もう少し近ければ便利がいいのにと思ってしまうのは、自分だけじゃないはずだ。
     細見に本屋に行きたいと誘いを受けてから数週間後。大分空港から飛び立った多田は、品川で乗り継ぎ東京駅の構内をウロウロと彷徨っていた。平日の午後は、通勤のピークはずいぶん前に超えていても、未だに多くの人で溢れかえっている。
     目的の場所は、銀の鈴。駅構内の地図を頼りに、頼りない足取りで向かう。
     慣れない東京駅での待ち合わせに、数日前ネットで『東京駅、待ち合わせ、分かりやすい』と密かに検索をかけ、見事銀の鈴がヒットした。細見にそこで待ち合わせしようと連絡したのだが、送った自分の方が迷子になりそうである。それでもなんとか辿り着き、オランダから戻ってくる細見を待つ。成田空港への到着時刻に合わせて、飛行機を取ったつもりだが、空港からの移動時間まではどうにもできない。大分以外で細見を待つ機会は、これまであまりなかったなと思った。
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