恋愛相談「なるほど。interviewですか。」
プロデューサーから渡された資料には『今注目のアイドル達へ恋愛相談彼らの恋愛観を徹底調査』という企画内容が書いてあった。
「取材は1週間後になるから、それまでに考えておいてね。」
そう言ってプロデューサーは次の仕事があるからと会議室を辞した。
「ふむ...。恋愛相談とは困りましたね。」
資料にある質問内容に目を通しながら困り顔で司は1人ごちる。
今まで付き合ったのも恋愛的な意味で好きになったのもレオ1人だけで同じく取材を受ける薫に比べれば豊富な経験をしている訳では無い。
どうしてそんな自分が選ばれたのか疑問ではあるが、選ばれたからには期待には応えたい。
「あ、相談といえばあの方がいるではないですか。adviceを貰いにいきましょう。」
司は手をぽんとして立ち上がり、荷物をまとめて会議室を出た。
向かったのは星奏館の3階、もはや行きなれたと言ってもいい場所。
「失礼します。逆先先輩、いらっしゃいますでしょうか。」
トントンとドアを叩いてそう声をかけると中からどうゾという返答が帰ってきたので中に入った。
「やァ、スーくん。なんの用かナ」
夏目はテレビの前のソファに座っていた。
「実は、今度雑誌のinterviewで恋愛相談に答えることになったのです。それで、普段から占いで相談に応えてらっしゃる逆先先輩にadviceを頂こうと思いまして。」
「フム、他でもないスーくんの頼みだシ、受けてあげるヨ。」
「本当ですかありがとうございます」
司は嬉しさで頬を紅潮させてレオのベットに座った。
「スーくん、前から思ってたケド、当たり前のようにそこに座るよネ。」
「へっあ、いえ...。すみませんいつもの癖で...。」
そう言って司が移動しようとすると夏目はそれを制した。
「別に移動しろと言ってるわけじゃないカラ。で、どんな相談内容なノ」
「ええっと。『高2男子です。一番仲のいい同じ部活の同級生の異性が好きになりました。よく食事に行く仲で、彼女は自分に対してスキンシップも多く、大事な存在だと言ってくれています。ですがそれが友情的なのか恋愛的なのか分かりません。 彼女は自分に対してどう思ってると思いますか。また、今後どうしていけばいいでしょうか。』という質問内容です。」
「ほゥ...。スーくんはどう思うのカナ」
司はふむ、と考え込んで答えた。
「そうですね。思い切って想いを告げて確認してみればいいのではないかと思います。相手の方が大事な存在だと言ってくださってるのであれば、十分脈はあると思うのです。確かに、今までの関係を壊すのではないか、と不安に思う気持ちはあるでしょう。ですがこの相談者の方は分からないが故に苦しい思いをされているのではないでしょうか。そんな思いをするのであれば自分の想いを伝えてしまえばいいのです。」
「なるほどネ。ボクはその回答で十分だと思うヨ。まァボクならボディタッチをやり返したりとか自分の好意を感じさせる行動すればいいんジャナイって答えるケド。」
「ふふ、逆先先輩らしい回答ですね。」
「今回の企画ハ、その"らしさ"を求められているのだかラ、スーくんの思った通りに答えればイイ。相談者もきっとキミの真摯な回答に勇気を貰えるだろウ。」
「そうでしょうか。」
夏目は少し不安げな司を見ながら微笑んだ。
「キミも言ってた通りボクは相談に答えることに関してはプロだからネ。そんなボクが太鼓判を押してるんダカラ"大丈夫だよ。心配することはない"」
夏目のその言葉に安心して司はふっと頬を綻ばせた。
「ありがとうございます。」
司はぺこりと頭を下げて部屋を去り、再び部屋で1人になった夏目は飲み終わったカップをソーサーに置いた。
「フフ……。騎士サマもあんなに頑固で真っ直ぐな子には負けたっテところかナァ。それニ...。」
やはり司の行動からして、この部屋で恋人の触れ合いをしていてもおかしくはないだろう。自分が目撃してしまうようなタイミングでしなければ別に問題はないのだが。
「今度帰ってきた時にデモ釘を刺しておこうカ。」
すっかり片付いたレオのベッドを眺めながら夏目はぼそりと呟いた。
「スオ〜ただいま!」
「わぁっ、んもういきなり抱きついてこないでください。」
「いいじゃん久しぶりなんだし♪」
「人の目もあるでしょうここ何処だと思ってるんですか。」
星奏館の玄関前である。通りがかるアイドルたちはニコニコと微笑ましそうに2人を見ている。
「ねね、スオ〜。」
こそこそとなにかレオが司に耳打ちする。ばっと一気に真っ赤になった司はレオの肩をグイッと押して大股で寮の中に入っていった。レオはその後を慌てたように追いかける。
「つかちゃん、嬉しいけど恥ずかしいって色してたな〜。」
「一体なにを言ったんだろうネ。」
出来れば喧嘩だけはやめて欲しい。巻き込まれるのは御免だ。
「まァ、あの2人を見てるのはなかなかに楽しいシ、これからも適度に茶々入れていってあげよウ♪」
クックっと笑う夏目にししょーまた悪いこと考えてるな〜っと宙は苦笑したのだった。
おまけ
「ねね、スオ〜。この後イチャイチャしない?今日おれの実家家族いないしさ。」
「帰ってきて早々何言ってるんですか。」
「あっちょっと待ってスオ〜。」
司はスタスタと人気のない場所まで歩いていき、レオに紙を渡した。
「レオさん、これ書いてください。」
「外泊申請書?なんで持ってるの。」
「久しぶりに触れ合いたいと思っていたのはあなただけでは、ないのですよ。」
「っ、スオ〜!」
「んむっ。」
レオは司の唇を食むように奪う。誰かに見られたら、と思ってもずっと身体が求めていた体温に逆らえない。
「はっ……ん。レオ、さん。」
「早く、2人きりになりたい。」
獣のような目をしたレオに司のお腹の奥がきゅんとしたのはきっと気のせいじゃない。
「おれ、出してくるから門の前で待ってて。」
「はい。」
司は期待で熱くなった身体を誤魔化すように早足で外へ出た。