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    しの☆

    @shinoooonxxx

    こちらにはpixivから移動させた松のお話が置いてあります。気になったら覗いて見てください😊

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    探してシリーズ7。
    あつしくん捏造。あつトドのターン。

    〜三男とあつトドそれから兄弟探しは暗礁に乗り上げ、季節も変わって僕は大学生から社会人になった。手掛かりさえ掴めない長男と末っ子の居所を探る暇もない、忙しくて慌ただしい日々。カラ松や一松、十四松とも電話やメールでやり取りするだけの時間は流れるように過ぎて行く。
    十四松は着実に彼女との結婚資金を貯め、一松は養われてるだけじゃ嫌だし料理の腕を上げたいからとレストランの厨房で働き始めた。カラ松はハリウッドデビュー作の演技が評価され、今ではテレビや映画でもちょいちょい姿を見るようになった。そして僕は三ヶ月の研修期間も終了してようやく仕事にも慣れ、どうにか半人前ながら少しずつこなせるようになった。


    「松野くん、これもお願い」
    「あ、はい」


    僕は中堅の商社で経理事務をしている。回ってきた決済の他にも、出張費やら接待費やらの計算に毎日数字とにらめっこだ。


    「チョロー、これ札幌行った出張費」
    「え?ああ、しばらく見なかったと思ったら札幌行ってたの」
    「そー。昨日帰ってきた。あ、お土産あるから帰りに飲み行かない?」
    「良いね、行こうか」


    同期入社で仲良くなったアツシがグラスを傾ける仕草をするから、領収書を受け取りながら頷いた。
    名字で呼んだのは新入社員歓迎会までで、二人してベロベロに酔っ払って肩組んで帰る頃には名前で呼び合う程に意気投合していた。






    「そう言えばさ、チョロって弟いる?」
    「ん?血縁者としてはいないけど、弟みたいに思ってるのならいる」
    「一人っ子?」
    「そうだよ、何で?」


    良く行く居酒屋で差し向かい、チューハイを飲んでほろ酔いになった頃にアツシがそう切り出して来た。


    「いや、チョロに良く似た子知っててさ。年齢的に弟かなーって思ってたから。でも考えたらその子も一人っ子だしね、違うか」


    焼き鳥の串にかぶりつきながら首を振るアツシの言葉に目を見開く。…これは、もしかして。


    「ね、その子名前なんて言うの」
    「そうそう!名前もチョロに良く似てんだよね。だから血縁かなって思ったんだけど。松野トド松って子なんだ」
    「トド松…」
    「変わった名前でしょ、こないだまで家庭教師してた子なんだけどさ。凄く懐いてくれて可愛い子で」


    トド松がいた。やっぱり生まれ変わってたんだ。早く会いたいけど、どこに住んでるのかも知らないし、もう少し情報仕入れなくちゃ。


    「その子、いくつなの?」
    「今年高三。大学卒業するまで俺が教えてたんだけど、うちの会社副業禁止じゃん?だから今はカテキョしてない」
    「そっか…」
    「あーでも、トドくんの方が可愛い顔してるかなあ。目がぱっちりしててさ」
    「わーるかったな、目付き悪くて。ここ、アツシの奢りね」
    「何でだよ!」
    「…そんなら割り勘の代わりに、その子…トド松くんに会わせてよ」
    「あれ、やっぱり気になる?」
    「そりゃあ」
    「じゃあ今度の日曜、どう?図書館行って勉強教える約束してるんだけど。あ、副業じゃなくて個人的にね」
    「分かってるって。日曜ね、大丈夫」


    時間と場所を決めて手帳に書き込む。
    トド松がいた…覚えてるだろうか。覚えていなかったら僕はどうするのが正解なのか。
    酔った頭でぐるぐる考えても分からなくて、結局飲み過ぎて潰れた僕はアツシに飲み代を払わせたらしい。トド松の事が上手くいったら今度は僕が奢らなくちゃ。


    -----


    日曜日。ドキドキしながら待ち合わせの場所に行くと、アツシはもう来ていた。遅刻…はしてないよな、うん。


    「あ、おはようチョロ」
    「おはよう。随分早いね」
    「この辺車停める所探すの大変だからいつも早めに来るんだ。トドくんもあと十分くらいで着くみたいだよ」
    「そっか、良かった遅れなくて」


    それから本当に十分程して、スマホを片手に持った姿が駆け寄って来た。


    「アツシ先生、おはよ!」
    「おはよう、トドくん。駄目だぞ?スマホ見ながら歩いてちゃ」
    「ふふ、ごめんなさーい。…あれ?」


    くるりとトド松の目が僕を捉える。…間違いない。記憶の中にいるトド松そのままの姿だ。


    「俺の同僚の松野チョロ松くん」
    「…え、松野?チョロ松?」
    「そう、名前も見た目もトドくんに似てるだろ?」
    「…ほんとだー!初めまして、ボク、松野トド松です」
    「あ…初めまして…松野チョロ松です」
    「チョロ?どうかした?」
    「え、あ、いや、本当にそっくりだなって」
    「な、言っただろ?トドくん、今日チョロが一緒でも良い?」
    「もちろんボクは良いよ。えっと、チョロ松さんは…?」
    「あ、僕も構わないけど」
    「じゃあ一緒に。似てるからかな、チョロ松さん、お兄さんみたい!」


    お兄さんみたい、か…トド松は覚えていなかった。僕を見ても何の反応も示さないし、ただ顔も名前も良く似た他人と言う認識でしかないのだろう。全員が全員覚えてる訳じゃないのは分かってたつもりだけど、初めましてなんて言われると兄弟達をダシにして兄さんに会いたいと願ってしまった罰なのかとさえ思えてくる。


    「ねー先生、チョロ松さんもいるし今日は勉強やめにして遊び行こ?」
    「ダーメ。トドくん、今年受験だろ?苦手科目もあるんだし…そうだ、チョロに教えてもらえば?数学強いよ」
    「え、ほんと?先生より?」
    「ほんとほんと。ね、チョロ」
    「え…ああ、別に良いけど、僕で良いの?」
    「アツシ先生、数学の教え方難しいんだもん!お願い、チョロ松さん!」


    お願い、チョロ松兄さん!…そんな声が頭の中で響く。トド松は覚えていないし、素直で可愛い性格になってる。ドライモンスターなんて呼ばれてたあの頃とは違って、思った事がすぐに表情に出るし良く笑う。そんなトド松に頼まれて嫌なんて言えるはずがない。


    「じゃあ、僕は数学担当って事で…」
    「やった!ありがとうチョロ松さん!」


    同じ顔、同じ声、同じ姿。でも記憶だけは共有していなくて、覚えていなければ接触するのはやめようなんて思ってたのに。どうしても思い出して欲しいなんて考えてしまうのは僕のエゴに他ならない。


    「勉強頑張ったらクレープね!苺の!」
    「分かった分かった」


    甘え上手でお強請り上手、人見知りもせずに社交スキルも高い。そんな所はちっとも変わっていないのに。


    「チョロ松さーん、早く早く!」


    アツシの隣で振り向いて僕に手を振るその姿を、一体どんな感情で見たら良いんだろう。


    -----


    トド松に会って勉強を教えた日、アツシ先生より教え方上手だからお願い!と頼み込まれて、月に二回数学を教える事になった。連絡先も交換していつでも連絡が取れるようにはなったけれど、やっぱり何回か会ってもトド松は覚えていなかった。


    「はあ〜あ…」
    「何だよ、恋煩い?」
    「違うよ」
    「…トドくんの事?」
    「え?」
    「トドくんに会わせてから様子がおかしいからさ。まさかチョロ、トドくん狙って「ないよ!弟だし!」
    「…え?」
    「あ…」


    会社終わりのいつもの居酒屋。最近トド松の事ばかり考えてたからうっかり口走ってしまった。どうやって誤魔化そう、あたふたした僕にアツシが真顔で詰め寄って来た。


    「弟って何、どう言う事」
    「……言っても信じないよ」
    「言わなきゃ分かんないじゃん」


    ぐっとグラスの水割りを飲み干したアツシが三杯目を頼み、僕の前にも同じ物を置いた。


    「水割り…」
    「酔っ払いの戯言だと思って聞いてやるから飲んで全部吐き出しちゃえ」
    「お前…良い奴だな」
    「今頃気付いたの?良いから飲んで、全部聞くから」
    「…うん」


    喉を焼くようなアルコールに頭がくらくらする。勧められるまま杯を重ねて僕は呂律も怪しくなり、アツシに前世の話や今の兄弟の話を全部ぶちまけた。


    「…前世で六つ子?」
    「ほらあ、やっぱりしんじてない〜」
    「いや、でも記憶あるんでしょ?チョロや、他の兄弟は」
    「そ!おぼえてないの、とどまつだけ」
    「…そっか、それなら本当なんだろうな。…本当にトドくんの兄さんだった訳だ」
    「ぜんせのはなし…。いま、とどまつがしあわせなら、きおく、おもいだせないかも、なあ…」
    「…もし記憶が戻らなかったらトドくんだけ諦めるの?」
    「…わかんないよ。どうしたらいちばんいいのか…」
    「え、チョロ?」


    僕の意識はここで途切れてる。
    目が覚めたら見た事ない部屋で柔らかいベッドの上。飲み過ぎだ、二日酔いで頭が痛い。普通に考えればここはアツシの家なんだろう。酔って潰れた僕を仕方なくお持ち帰りしてくれたらしい。
    そうして痛む頭を抱えてベッドから降り、取り敢えず礼を言って水でも貰おうとアツシを探す。三つも部屋あるよ、一人暮らしのくせに。


    「アツシ…?」


    一番玄関に近い部屋の扉の向こうから声が聞こえる。ここにいるのかな。


    「…え、」


    そろり。開いた扉の向こうは書斎みたいな部屋で。窓際に置いてあるソファーの上で、アツシとトド松が抱き合っていた。


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