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    つつ(しょしょ垢)

    @strokeMN0417
    げんしんしょしょ垢。凡人は左仙人は右。旅人はせこむ。せんせいの6000年の色気は描けない。鉛筆は清書だ。
    しょしょ以外の組み合わせはすべてお友達。悪友。からみ酒。
    ツイに上げまくったrkgkの倉庫。
    思春期が赤面するレベルの話は描くのでお気をつけて。

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    仙人の背中は先生の衣装と少し似ている気がするという妄想から生まれた小話
    みぬにーちゃんの口調や性格は捏造

    ##小話

    衣装心猿大将・弥怒はその沈着冷静な性格と岩元素の使い手ということもあり、帝君のお傍で従軍することも多かったように覚えている。
    戦いとなれば帝君の補佐としてその腕を存分に振るっていたが、平時は穏やかに己の趣味である服飾の製作に没頭している姿もまた覚えている。
    しかしこの趣味は我や浮舎にとってはいささか付き合い難く、逆に応達や伐難、留雲借風真君などは暇を見つけてはこぞって彼のもとを尋ねていた。

    戦いの邪魔にならなければ、布の一枚でも構わない。
    そう豪語する浮舎の考えに我も賛同していたが、さすがに帝君の御前に素裸同然とはいかないだろう。儀礼の服が必要となれば渋々弥怒に依頼したし、弥怒はそのたびに新しい服を作ろうと張り切っていた。
    着るには難儀する精緻な服だが、不思議と動きにまるで制限がかからない。
    我らの動き、戦い方の癖を熟知しているからこそなのだと感心したものだが、やはり手順が面倒で、一度袖を通し、着る機会を失えばそれらはあっという間に各々の洞天の衣装櫃にしまい込まれるばかりとなった。
    あの時の服はどうしたと弥怒から詰問されても、浮舎と一緒になって汚したら悪いなどと適当に受け流し睨まれることも他愛ない日常だった。

    ある日、川のほとりで休んでいると弥怒が声をかけてきた。
    ふむと我をじっと検分するように見つめ、ため息をつく。
    「疲れているようだな」
    単純だが重い一言だった。
    夜叉の宿命、逃れられない業障。戦火は止むことなく状況は芳しくない。それでも我は帝君の槍として戦うことを誇りに思う。この身が業障に灼かれることも厭わない。それが唯一我にできるあの方への報恩なればこそ。
    それは弥怒も同じだろう と問いかけると肯定とも否定とも取れない声を零し、ゆるく首を振る。
    「立場上言葉にはできぬが、我ら夜叉の宿命を誰よりも悲しんでおられるのは帝君だ。そこでだ」
    さっと布にくるまれた包みを取り出し、我に差し向ける。
    開けるように促され遠慮なく開くと、霓裳花のかすかな香りとともに一着の服が目に入った。
    「これは…」
    「お前の新しい服だ。会心の一作だぞ」
    先ほどまでの曇った思案顔はどこへやら、我から服を取り上げ持ち上げるとあれこれと拘った点を滔々と語りだした。
    かろうじて頭に残ったのは、戦いやすいし着やすいだったか、それから。
    「お前は帝君の背中をよく見ている」
    「」
    「あの背中に璃月を守護し、発展させていくという計り知れない責務を負っている。大きすぎる、偉大過ぎる背中だ。だからこそお前はあの背中を護るために戦うのだろう」
    さっと服を翻すと、菱形に空いた背中に淡い瑠璃色の飾り紐という組み合わせはどことなく帝君の後姿を彷彿とさせた。菱形の意匠は帝君が好んで身に着けているものだ。
    しかしだとすれば帝君を模したものを身に着けるなど、不敬ではないか
    畏れ多さと…なぜか胸の奥を突く気恥ずかしさに目をそらすと、弥怒はにこやかに笑って服を我に押し付けた。
    「あからさまな揃いに見えぬようこれでも工夫したのだぞ。お前が業障に苦しみ前後不覚に陥っても、あの方の背中を思い出せるよう…業障の苦しみに容易に折れぬよう、願掛けでもある。同時にお前は帝君の理想を成就するためにその背中に帝君の希望を背負っていると思ってほしい」
    目を閉じれば…あの地獄の苦しみから救い出される直前、我を縛り付けていた魔神へと向かうときに見えた背中も、陣営に加わり初めて戦に同行したときに見たあの背中も、何気ない日常でお見掛けした背中も思い出せる。
    「…ありがたく、頂戴する」
    胸が熱くなる。頬も少し熱い。顔を下に向けて弥怒に見られないようにしてみたが、まるですべて承知しているといわんばかりにぽんぽんと頭を軽く叩かれた。


    「というわけで、しかと金鵬に渡してきました」
    「それで」
    「それでとは」
    「俺とお揃いで嬉しいとか、そういう直接的な感想は」
    「あの子がそういうことをいうわけないでしょう」
    「うう…」
    「背中に見とれているという確証が取れただけでもよいのでは」
    「真正面もとか、すべてとか」
    「贅沢です。あの金鵬がそこまでいうのにあと千年は必要でしょう」
    「千年か…一刻も早く璃月を平定せねばな」
    うむと気合を入れ直した主君の様子をいつか弟に語る日が来ればいいと、夜叉には似つかわしくない願いを胸に弥怒はそっと帝君の執務室から退室した。
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