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    teasぱんだ

    @nice1923joker

    紅茶とパンダが好き。
    好きなものを好きな時に好きなだけ。
    原ネ申アルカヴェ沼に落ちました。
    APH非公式二次創作アカウント。
    この世に存在する全てのものと関係ありません。
    䊔 固定ハピエン厨
    小説・イラスト初心者です。

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    teasぱんだ

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    整備🏛️のイラストで思いついた小ネタ話。カーレースに関して全く詳しくありませんのでご注意ください。
    全年齢ですが身体の関係の匂わせがあります。

    #アルカヴェ
    haikaveh

    Fair🌱🏛️ 出来立ての傷口に染み込む消毒液の痛さに、反射的に腕が跳ねた。それをめざとく感じ取ったティナリはさらに眉を吊り上げて、揺れる大きな耳にもお構いなしに何度目かの説教を口にする。
    「本当に、なんで無茶をするの? どう考えても素手で車体の中に手を突っ込んだら引っ掛けて怪我をするってわかるでしょう?」
     言葉は優しいが、テキパキと応急処置をしていく剣幕は凄い。一緒に心配をしてくれていたアルベドが、あとは任せた方がいいね。と退散したくらいだ。見捨てないで欲しかった。
     右手首の下にスッと入っている一本の線。最初は血も出たがすぐに止まった。こんなに大袈裟に手当しなくてもと思うが、怒っているティナリに意見をする勇気は持ち合わせていない。
    「明日から休みだっけ。アルハイゼンは?」
    「アルハイゼンは……知らないけど、休みじゃないか?」
     答えながら整備場の時計を見上げる。時刻は夕方を過ぎていて、外は暗くなり始めていた。
     明日はアルハイゼンも休みだということはわかってる。同居してからすでに数年も経つんだ。あいつの生活リズムを僕はとっくに把握していた。
    「いい? 今日はこのまま濡らさないでおいて。幸い軽い切り傷で済んでるから病院には行かなくていいと思うけど、家で消毒して様子を見るんだよ」
     前のめりに指示をするティナリに眉を下げる。以前にも同じように僕の不注意で怪我をして、それからティナリは毎回目を光らせているのだ。それなのに今回も危険を考えるより先に体が動いて怪我をした。
    「じゃあ、僕もそろそろ」
     あがろうかな。と口にする前に、工場の外から低い音が聞こえてきた。
    「いいタイミングで迎えじゃないの?」
    「ははは……」
     ティナリの言葉の通り、滑り込むように敷地内へ入ってくる一台の車。中から出てきたのは二人の想像通りの人物だった。
    「アルハイゼン。カーヴェのこと、よく見てやって。消毒もした方がいいからね」
    「……君はまた怪我をしたのか」
     真っ先に駆け寄ったティナリを止める間もなく、こちらが腕に巻かれた包帯を隠す間もなくアルハイゼンは全ての状況を把握したらしい。
    「い、いいから! 早く帰るぞ!」
     これ以上ここにいても責められるのは自分だけだ。カーヴェは急いで怪我をしていない左腕でアルハイゼンの腕を絡め取り、荷物を片手に歩き出す。
    「安静にするんだよ! また来週!」
    「あぁ! じゃあね。ティナリ!」
     声に返事を返して、不服そうな顔をしているアルハイゼンを運転席に押し込めると慣れた動きで助手席にその身を沈める。そうして、今日も同居人と同じ家に帰るのだ。

     
     昔から眠りは浅い方だった。ふと指先に何かが触れる感触があって、目を閉じたまま意識だけが浮上する。こちらが反応を返すよりも先にゆっくりと右手が持ち上げられて、その指先を摘まれたり、手のひらに何かを当てられたり。散々好き勝手触れてくるのはアルハイゼンだろう。
     同居人だったアルハイゼンと恋人と呼ばれる付き合いになってから随分経つ。ベッドの隣に体温があることにも慣れたし、目が覚めて最初にアルハイゼンの寝顔を見るのにも慣れた。
     何度か触られていた手のひらはすでに離されて、目が覚めた時と同じ場所に戻されている。こちらが寝ていると思っているのだろう。アルハイゼンはやることは終わったとばかりに自分の定位置へ戻り、数分後には寝息が聞こえてきた。
     それにしても、なんのつもりだろうか。指先を何度も撫でたり手のひらを撫でたり……まるでサイズでも測っているかのようだ。指のサイズと聞いて最初に思い浮かぶのは指輪だが、互いにそんなものを送り合うような素直な関係でもない、と思う。……それに、送るのならば僕の方から送りたいのだ。いや、まだアルハイゼンに借金をしているから我慢しているが、今度のレースで優勝賞金が入ったら買おうと決めていた。だから先に買われるのは困る。
    「……」
    「…………」
     静かな寝室にアルハイゼンの吐息の音が溶けていく。なんとかして買われるのをやめさせなければ。そう思いながらも、体力が尽きた体は誘われるままに夢の世界へと旅立った。

    「信じられない。あいつ……本当に信じられないな」
     朝からブツブツと文句を言いながら朝ごはん用のベーコンを焼く。いや、もう朝とは呼べないかもしれない。すでに時計は十時をとっくに過ぎて、後少しで十一時へ変わる。思っていたよりもぐっすりと寝ていたようで、目が覚めたら十時を過ぎていた。それはいい。それはいいが、許せないのは恋人の不在だ。
     互いに休日の朝に、一言も声をかけずに家を出ていく奴がいるか?
     声をかけてもアルハイゼンからの反応がなく、家の中を一通り見て回っても人はいなかった。二度寝しようにも目が冴えて仕方がなかったから料理を作っていると、玄関から物音がしてアルハイゼンが帰宅した。
    「アルハイゼン! 君ねぇ」
    「はい、これ」
     文句を言いに玄関まで歩いて行くと、言葉少なに渡される小包。両の手のひらにのるサイズのそれは軽くて、思わず首を捻った。
    「これは?」
    「君が今後仕事をする上で必要なものだ」
     聞いても答えないだろうとわかっていたので、アルハイゼンの返答を聞きながら小包を開ける。中から出てきたのは黒色の、長めの手袋だった。よく見ると指先は切り落とされていて、指先は露出できるらしい。長い腕の筒は二の腕まであるだろう。生地は分厚く、危険な作業でもしっかり防御してくれそうだ。
    「これ、グローブか。しかも長めじゃないか! 僕が今回の怪我でティナリに無防備に車体の下に腕を突っ込むなと怒られていたのをなぜ知っている?」
    「君がすでに何度も注意されているだろうことは察している。サイズはあっているはずだが」
     その言葉に、昨晩のアルハイゼンの奇行を思い出す。まさかこれのために手のひらのサイズを測っていたのか?
     カーヴェが機嫌よくもらいたての手袋を右腕に装着すると、二の腕の部分が少し緩いようで肘のあたりまで落ちてきてしまった。
    「手のひらに合わせると、二の腕が合わないのか」
     その様子を見ていたアルハイゼンはほんのわずかだが眉間に皺を寄せて、考えるように腕を組む。その姿にすかさず解決策を口にした。
    「別に、何か巻いて落ちないようにすればいいだけだろう。気に入ったよ」
     言いながら手元にあった赤色に模様が刺繍された布を巻き付けていく。右手は上から下まで手袋で覆われ、二の腕には赤い布が巻かれていた。
    「どうだ、似合うか?」
     つけた手のグローブをアルハイゼンの前に突き出して、口元に笑みを浮かべる。
    「悪くない。これで思いつきのままに腕を突っ込んでも怪我をするリスクはかなり低くなるだろう」
    「ふん。口を開けば可愛げがない」
     昨晩は指輪のサイズでもこっそり測っているのかと可愛さも感じたのに。その直前に抱かれていた最中のことなどすっかり忘れて、心の中で毒づく。
    「可愛げがないと? 昨晩俺のことを散々可愛いと称したのは、俺に抱かれていた君だったと記憶しているが」
    「なっ……! 昨日のことを持ち出すのはやめたらどうだ。そもそも、なぜ朝イチで買いに行った?」
    「君は休みの日でも思いつきで「ちょっと作業してくる」と言い残し、工場へ行くだろう。まだ寝ている今のうちに手に入れておくことがベストだと判断した」
    「なるほどね。僕はてっきり、ようやく君がロマンというものに理解を示して指輪でも買ってくるんじゃないかと警戒していたよ」
     軽口を叩いて笑うと、アルハイゼンは片眉をあげて意外そうな顔をする。それから指先で僕の指先を掴む。掴まれたのは左の薬指で、何もついていない素肌の底を指の腹で撫でられる。
    「つける気があるのならすぐにでも出すが?」
    「は」
    「君はこちらの手にグローブをつけて作業をするだろう。邪魔になる」
    「な……」
     固まるこちらを見て目を細めると、アルハイゼンは満足したかのようにするりと指先から手を離して玄関から部屋の中へ歩いて行く。
     その後ろ姿に向かって、君のは僕が買うからな! と声をかけるので精一杯だった。

    End
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