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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第3回目『旅』参加させて頂きました!(『海』要素も少し含)
    できてるドラロナが出張退治でお泊まりする感じの話です。(+15min)よろしくお願いします。

    旅の恥は掻き捨て、結局のところ通常運転 夜も深まった頃、遠くから聞こえてくる波の音にロナルドは耳を澄ませる。空気にたっぷりと含まれた潮の香りは、ついさっき舌鼓を打った魚料理の数々を思い起こさせた。大浴場から上がった後の浴衣姿には夜気は少々冷たいぐらいだったが、それが何だか心地好い。
     ロナルド退治事務所には、時折遠方からの依頼が舞い込んでくることがある。今回は海鵜捕獲場に巣を張った下等吸血鬼を退治するため、電車を乗り継ぎ北関東某所へやって来たのだった。
     退治はつつがなく終わり、依頼者である地元組合から報酬とは別に民宿に食事付きで明日の日没まで滞在できるよう取り計らわれた。その民宿というのがしっかりしたホテル並みに立派だったので、気後れしたロナルドは最初辞退しようとしたのだがドラルクがさっさとチェックインの手続きをしてしまったので厚意をありがたく頂くことになったのである。(クソ砂は一度殺した)
    「ロナルド君、そこにいたのか」
    「……おう」
     宿泊部屋に付いている広々としたテラスでぼんやりと海を眺めていたロナルドに、背後から声がかかる。浴衣にクラバットを合わせるという独特の格好をしたドラルクが、腕を組んだままこちらへ歩み寄ってくるところだった。その肩なり頭なりに可愛いアルマジロがいないことに気付き、ロナルドは僅かに首を傾げる。
    「ドラ公、ジョンは?」
    「マッサージの途中で寝ちゃった。カラオケが大盛況だったからねぇ」
    「あれは凄かったな……伝説の目撃者になった気分だったぜ」
     民宿に併設されたカラオケルームに目を付けたドラルクが依頼人や他の宿泊客も巻き込んで始まったカラオケ大会は、最終的にジョンの単独ライブと化した。期待には応えたい気持ち(と、恐らくはドラルクにマイクを握らせたくない気持ち)から十数曲を歌い抜いたジョンの姿は、正にスーパーアイドルのような輝きであったとロナルドは思い返す。
    「結局、君も私も一曲しか歌わなかったが……まぁいいか、面白かったし。今日買った特産品も明後日には事務所に届くから、どう調理してやるか考えるのが楽しみだ」
    「はしゃぎ過ぎんなよクソ砂おじさん、帰るまでが仕事だぞ」
    「食事に温泉に海鵜にテンション上がりまくってたのは何処の五歳児だったかねぇ?」
    「うるせぇ帰ったらステーキ重が食べたい」
    「ジョンの体重と相談だ肉食ゴリ造」
     そんな軽口を叩き合う最中、一瞬強く吹いた潮風にドラルクが一部砂と化しながら身震いする。
    「はー、冷たっ。君、こんな場所にずっといたの?」
    「大した寒さじゃねぇよ」
    「感覚マヒしてるんじゃないか、いっくらバカが風邪引かないからって」
    「あ?」
     ロナルドが反射的に飛ばした拳で完全に砂山となったドラルクだったが、再生するや否や今の殺害シーンが無かったような態度で手を伸ばしてくる。銀色の髪を梳く骨張った両手に、ロナルドは二発目を繰り出し損ねる。
    「っ、おい」
    「あー、潮でベタついてる。折角温泉に入ったのに勿体ない」
    「……いーだろ別に、帰ったらどうせすぐ何かでベチャベチャになるんだ」
    「ちっとも良くないわ。外面が全てとは言わんが、君はもう少し見た目の価値というものを理解した方がいい」
     ロナルドの毛先をくるくると弄んでいたドラルクの指が、頬をなぞる。手袋をしていないせいで赤い爪が視界にちらつき、身体にぞくりとしたものが走るのを感じる。
    「……そういえば、部屋の内風呂も使わないと勿体ないよねぇ」
     こちらの意識など見透かしているのだろう、ドラルクは牙を見せて妖しく笑う。
    「ドラ、こう」
    「ねぇロナルド君」
     ――洗ってあげようか。なんて、それだけで終わらす気など全然なさそうな囁きに。
     こくりと頷いたロナルドもきっと、旅の非日常に浮かれているに違いなかった。
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    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
    2074

    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
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