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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第8回目『浴衣』で参加させて頂きます!(+20min)
    ドラロナが丑三つ時に浴衣デート(散歩)する話。気合いでロ君の誕生日お祝いの気持ちも添えています。

    祝い、喜び、ちらり 日付が変わり、退治人がリビングに顔を出した瞬間に鳴らされるクラッカー。凝った夜食と揶揄とお祝いの言葉とセロリトラップと暴力の応酬で一頻り騒いだ後の、八月八日の丑三つ時。
     昼を挟んで夜の十九時からがパーティー本番だと伝えれば、本日の主役は照れた顔で「ありがとう」と言い、落ち着かない様子。そんなに楽しみかい、まぁ五歳児らしく素直にはしゃぐと良いとドラルクが茶化せば砂にされた。ジョンの泣き声が響く。
    「ちがっ、いや、楽しみなのはそうなんだけど!」
    「じゃあ何が違うというんだ」
    「――っ、あのさドラ公」
     もう料理とかは終わっているのかと聞かれ、そうだと返す。すると、ロナルドはじわじわと顔を真っ赤にしながら数度口を開閉させてから、震える声を絞り出した。
    「なら……朝が来る前に、でっ、ででで」
    「大王?」
    「ちげーわ! だから、その」
     でーとをしたいと、おもうんですが。と、か細い声で言うロナルドに、ドラルクは心拍数の急上昇で一瞬死んだ。

     カタ、カタと下駄がアスファルトを叩く音が夜道に響く。赤い浴衣を纏った銀髪の青年は、眠っている草木を呼び起こすような存在感を纏っていた。
    「撮影後に貰ったもの、取りあえず表に置いたままにして正解だったね」
    「おう。……てめぇは何処から出してきたんだそれ」
    「それは勿論、棺桶の中の収納スペースからサッとね。君と違って整理整頓が完璧なドラドラちゃんですし?」
     小馬鹿にするように笑い、直後殴殺されたドラルクも自前の浴衣を着ていた。紫と黒を基調とした高級感のある装いは、ロナルドの鮮明な赤の布地とは対照的な雰囲気を漂わせている。
    「それにしても、浴衣を着て散歩とはロナルド君にしては悪くない提案じゃないか」
    「しては、は余計だボケ」
    「だってそうだろう? 一瞬夜景が綺麗だからと港へ運搬されるかと思った」
    「テメェいつまで引っ張るんだよそのネタ! 俺だって、ちゃんと考えられるっての!」
     デートといっても、夜明けまで数時間では出来ることは限られる。コンビニ行って帰るのが限界かと思っていたドラルクに対し、意外にもそのコンビニ往復に一工夫加えるアイデアを口にしたのはロナルドだった。
     それが、浴衣を着ての散歩。一応の目的地であるコンビニでアイスコーヒーとアイスミルクを購入して、タイムリミットと飽きが来るまで回り道しながら近所を歩く。
     出発前に着付けをする以外に大したことをする訳じゃなかったが、衣装一つ変えてみるだけで気分が高まるのは確かだった。浴衣だものなぁ、とドラルクは隣を歩くロナルドの首周りに視線を向けて内心ため息を吐く。
     いとも簡単に服を脱がされるロナルドに首を露出されても、ありがたみは少ないと思いきや。今みたいに正当な手順で着用された状態で項が曝け出されているのは中々、そう、目に毒だ。紳士の面をそろりと外して、銀を掻き分け、血が通った皮膚に触れたいという衝動が頭をもたげる。
     今、この場にジョンがいない(気遣い半分、作りすぎたデザート類が気になる半分といった様子で留守番を申し出ていた。冷蔵庫の減り具合によってはダイエット再開だ)ので余計に気がそぞろになってしまう。ロナルドを適度に煽って、ムードを適度に壊しつつ誤魔化すしかない。
    「誕生日ってさ、祝って貰えるのが信じられないくらい嬉しくて、ありがたくて」
     こちらの葛藤を知ってか知らずか、ぽつぽつとロナルドが言う。
    「同じくらい……祝ってくれる相手が喜んでくれることがしたいって、思うんだよな」
     進行方向を向いていたロナルドの青い目が、隣を歩くドラルクを見た。その手が己の銀色の髪を掻き分け項を晒す退治人の姿は、腹を見せて仰向けに転がる犬を連想させる。
    「私さ、流石にお返しは明日まで待ってあげるつもりだったんだけど」
    「うるせ、今日は俺がしゅ、主役なんだからテメェが合わせろよ」
    「……ふふ、言うようになったじゃないか若造。時間が惜しいから手加減せんぞ?」
    「はっ、望むところだっての」
     袖から覗く腕に手を這わせ、お互いの指を絡める。
     浴衣デートの続きは、おうちの奥で冷房を効かせながら。
     出し惜しみせず、昼の子を骨の髄まで祝い尽くそう。
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    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
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