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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!

    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
     まぁ、お人好しが過ぎる退治人とコンビを組んでいればこういう日もある。背後から殴られ塵を容器に詰められる寸前にジョンへスマホを投げ渡したので、さっさと応援が来てくれることを願うばかりだ。
    『――新横浜の若き退治人、ロナルド選手の入場です!』
    「うっわ……何と趣味が悪い」
     闘技場エリアの入場ゲートが開き、スタッフらしき吸血鬼に連れられたロナルドが歓声に出迎えられながら姿を現す。その様子を見て、ドラルクは自然と眉をひそめた。
     肌が透けて見える薄布を胸部と腰回りに巻いただけの、踊り子のような扇情的な衣装。ピンク色の布と金糸であしらわれたそれは女性的なデザインをしており、逞しい肉体を持つ成人男性であるロナルドを嘲ろうという主催側の意図が見て取れる。
     腹の前で両手首を一纏めにするように手枷が嵌められており、武器は右手に木の棒が持たされているのみ。あの様子では愛銃を隠し持つことは難しいだろう。
     ――しかし。反対側のゲートからサイクロップスみたいなグールが出てきても。ドラルクは一切の不安を感じることはなかった。むしろ楽しくなって笑い声させ出てきてしまう。
    「ふふ……さぁやってしまえロナ造! ゴリラパワーを愚かな同胞たちに見せつけてやれ!」

    「諸君らの敗因は些細なことだ」
     困惑と不満の声でざわめく会場の中で、ドラルクは至極冷静に呟く。下方にある闘技場エリアでは、衣装に頓着せずに肉体を惜しげもなく晒しながら駆け回り、グールの表皮に生えた角で手枷を破壊すると巨体に飛び乗って、木の棒で脊椎を突き刺してあっさりとトドメを刺したロナルドの姿がある。
    「変態と辱めに慣れまくっている新横浜の名物ゴリラを見下していたこと」
     ヌーーー! と頭上から頼れるアルマジロの声が響く。天井から下りてきたジョンが容器に貼られたメッシュを剥がしたのと同時に、ドラルクは壁に体当たりをして反作用で死に、空気穴から脱出する。
    「私のジョンをただの可愛いアルマジロと侮ったこと」
     群衆のどよめきが一層大きくなる中、ジョンを抱えながらスタッフに捕まる前にバルコニーへ足をかける。
    「そして何より!」
     ドラルクがバルコニーから飛び出すと同時、崩れかけたグールの頂点から跳躍して観客席の手すりを使いながら最上階まで昇ってきたロナルドが同じ視線の高さまでやって来る。見開かれた青い目と視線を合わせて不敵に笑いながら、衝撃で若干死につつマントに身を包みながらその腕の中へ一人と一匹共々飛び込んだ。
    「この私を無理矢理閉じ込めるなど片腹痛いわ! クソゲーとクソ映画を用意して出直して来んが、アッ舌噛んだ……」
    「空中で死ぬんじゃねぇよクソ砂ァーーー!」
     もう黙ってろ! と塵のままマントで包装されたドラルクは、ジョンを腕に抱えながらその辺の窓をぶち破ったロナルドと共に悪趣味なコロシアムから脱出を果たしたのだった。

    「ふむ」
    「……おい何してんだよクソ砂」
     それから何やかんやで吸対に摘発されて主催共謀者観客軒並みお縄になった後。
     自分の服が回収されるのを待っている間、ロナルドはドラルクに何故かマントで身体を包まれた状態で抱きつかれていた。こいつも今回は大変な目に遭ったということで誰かが来るまでは好きにさせてやろうと思っていたが、こうも密着されると落ち着かない。
    「新横浜のバカどものせいで麻痺していたが……こうポンチ抜きの状態で、不埒な同胞に好き勝手飾られたのを見ると、ね」
    「は……っ」
     ドラルクの両手が、ロナルドの両頬を包む。マントから立ち上っていた線香みたいな香りが一層濃くなり、秘め事めいた何かを連想させる。
    「今はこれだけで勘弁してやるが……後で上書きさせて貰うよ、ロナルド君?」
    「……ん」
     多分、ケースに入れられた吸血鬼を見たときにロナルドが感じたものを、ドラルクも感じている。
     そう思えば悪い気はせず、触れるだけの口づけを静かに受け容れるのだった。
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    Replies from the creator

    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
    5331

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    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
    5312

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第4回目『デート』で参加させて頂きました(計130min)
    できてるらしい読切ドラロナが夜の植物園に行く話です。よろしくお願いします。
    お土産に赤い薔薇を一本買った 今日も今日とてロナルドに呼び出されて外に躍り出る夜。本日の目的地は、某県某所にある植物園であった。
    「へー、色々あるもんだねぇ」
    「約七百種、約六万本あるんだとよ」
     興味深そうに周囲の花壇に植えられた花を見回すドラルクに、ガイドブックを手にしたロナルドが淡々と返す。すっかり日が落ちた夜空の下、淡い光で照らされた植物が彼らを取り囲んでいた。
    「ねぇロナルド君、私あっちの熱帯植物館っての見てみたい」
    「……お前それ、暑さで死ぬんじゃねえの」
    「一回だけ、一回だけ試させて! まだ今日は死んでないから数分で復活できると思うし! それに、仕事なら全部見回る必要があるだろう?」
    「それは……くそ、仕方ねぇな」
     一回死ぬまでだからな、と不承不承といった態度で許可を出したロナルドにドラルクは微笑む。一回までと言いつつ、次案を出せば乗ってくれることが簡単に想像つくのが楽しい。仕事とはいえ、彼がわざわざチケットを用意し誘ったという事実に、己が思った以上に浮かれているのを感じる。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min

    第10回目『ホラー』
    本編ドラロナでロくんが生け贄役に選ばれる話です。(+55min)
    タイトル通りの創作変態吸血鬼が出てきます。CP要素は薄め、恐怖描写は皆無の上あっさり解決しますが宜しくお願いします。
    「我は吸血鬼『人身御供シチュエーション大好き』!」 ――はて、自分はどうしてここにいるのだろうか。
     夕餉を食べている最中、野菜の煮物を飲み込んだ青年は不意にそんなことを思った。
     古めかしい和風の旅館みたいな屋敷で過ごすようになって、何日目になるだろう。朝に目を覚まして、人肌程度の湯で沐浴を行い。白一色の着物を纏い、しめ縄で四隅を囲った部屋で屋敷の人々が唱える歌声に日がな一日、耳を傾けて。肉と魚と乳を使わない、野菜と穀物だけの食事を三回摂って。一日の終わりに再度沐浴を行って眠る。
    「おや、どうかされましたかな?」
     今の今まで何の疑問も持たずに行ってきた日課に首を傾げている青年に、背後から声をかける者があった。振り返れば、料理人のような格好をした異様に血色の悪い男が薄い笑みを浮かべている。男の足下には何故かアルマジロがいて、ヌーと可愛らしい鳴き声を上げていた。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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