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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第9回目『バナナケーキ』で参加させて頂きます!
    嘘ドラロナでドさんがロ君にバナナケーキを食べさせる話。CP要素は薄めです。

    心臓に刻む味 セーフハウスに使用している雑居ビルの一室にて。
     カタン、とダイニングテーブルに一枚の皿が置かれる。その上に鎮座した甘い香りのするものに、退治人ロナルドは己の視界が信じられずに何度も瞬きした。隣の席に座るメビヤツと目を合わせて、再び皿に視線を戻す。
    「何だよこれ」
    「バナナケーキ」
    「は?」
    「名前の通り、バナナを使ったケーキだ。あぁ、そもそもケーキを知っているかね? 基本的には小麦粉を主材料とし、卵、砂糖、牛乳などを加えて――」
    「馬鹿にすんじゃねえよ吸血鬼、それぐらい知っている。俺が聞きたいのは、どっからこんなもん調達したかってことだよ」
     向かいの椅子に座って怪しく笑う吸血鬼ドラルクを、ロナルドは疑わしげに見据える。テーブルの上に乗ったアルマジロのジョンが場を和まそうと努力しているが、生憎流される訳にはいかない。
     夜に覆われ吸血鬼に支配された新横浜では、人間が食糧を確保するのも一苦労だ。こんな見た目も香りも美味しそうなケーキなど、簡単に用意できる筈がない。
    「調達も何も」
     人間と手を組み同胞と袂を別った変わり者の吸血鬼は、愉快そうな声音で答えた。
    「これは私自ら作ったケーキだよ。君が碌に手をつけていない配給食糧を上手いこと使ってね」
    「……お前が?」
    「料理は趣味なんだ。味はジョンが保証しよう」
    「ヌー!」
     手を挙げたジョンが、皿をロナルドの方へ押し遣る。食べて食べてとアピールされるが、ロナルドはフォークを手に取ることを躊躇していた。腕を組んだまま動かないロナルドを見て、ドラルクが不思議そうに首を傾げる。
    「食べないのかね? ……ははあ、何か入れてないか疑っているんだな? 安心すると良い、これはマスターさんの目を盗みつつギルドで作ったものだ。君の仲間たちに監視させながらね」
    「いや……毒とかを心配してる訳じゃなくてよ」
     胸に去来する感情をどう表すればいいのか分からなくて、傍に寄ったメビヤツを撫でながらぽつぽつと答える。
    「これを、お前が俺に食べさせる為に作ったんだろ」
    「そうだね」
    「理由が、分からない。何で、俺なんかに」
    「……ははあ、君のご友人に聞いた通りだったな」
     何故か呆れたようにため息を吐いたドラルクが、大げさに肩を竦める。
    「ロナルド君。今日は何月何日?」
    「今日、は……八月八日」
    「ほーら、今日は君の誕生日じゃないか」
    「……は?」
    「何だねその反応。もしかして、忘れていたとか?」
    「いいや、覚えてる、けど……」
     誕生日。随分と前からそれはあくまで自分の生きた年数を数える為の指標に過ぎなかった。誰かに、ましてや目の前の吸血鬼に贈り物をされるなんて。
     そんなロナルドの心境を見透かそうとするかのように、ドラルクが目を細める。
    「大方、君は自分の誕生日など取るに足らないものだと思っているのだろうがね。私とジョンにとって、君が今日この日まで、そして明日これからも生きていることは大いに意味があることなのさ! 分かったら干からびない内に食べる! 食べ物を粗末にしたらそれこそ勿体ないだろう?」
    「ヌン! ヌヌンヌーヌーヌヌヌヌー!」
     大げさな身振り手振りで力説するドラルク、小さな手で拍手するジョン。状況を把握しきれないまま、ロナルドにぴたりと寄り添うメビヤツ。
    「……っ」
     ぐっと込み上げてくるものを飲み込み、ロナルドはゆっくりと頷いた。今の自分に涙を流す資格も祝福を受ける権利もないけれど、彼らの心を無為にすることはそれこそ己が許せなくなってしまう。
    「い、ただきます」
    「うむ、ご賞味あれ!」
    「ヌヌーヌヌヌー!」
     フォークを手に取り、恐る恐る口に入れたバナナケーキの味。その美味しさを、ロナルドは決して忘れることはないだろう。
     ――それこそ、心臓が止まるまで。いや、止まってからもきっと。
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    Replies from the creator

    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
    5331

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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
    2074

    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
    5312

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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第4回目『デート』で参加させて頂きました(計130min)
    できてるらしい読切ドラロナが夜の植物園に行く話です。よろしくお願いします。
    お土産に赤い薔薇を一本買った 今日も今日とてロナルドに呼び出されて外に躍り出る夜。本日の目的地は、某県某所にある植物園であった。
    「へー、色々あるもんだねぇ」
    「約七百種、約六万本あるんだとよ」
     興味深そうに周囲の花壇に植えられた花を見回すドラルクに、ガイドブックを手にしたロナルドが淡々と返す。すっかり日が落ちた夜空の下、淡い光で照らされた植物が彼らを取り囲んでいた。
    「ねぇロナルド君、私あっちの熱帯植物館っての見てみたい」
    「……お前それ、暑さで死ぬんじゃねえの」
    「一回だけ、一回だけ試させて! まだ今日は死んでないから数分で復活できると思うし! それに、仕事なら全部見回る必要があるだろう?」
    「それは……くそ、仕方ねぇな」
     一回死ぬまでだからな、と不承不承といった態度で許可を出したロナルドにドラルクは微笑む。一回までと言いつつ、次案を出せば乗ってくれることが簡単に想像つくのが楽しい。仕事とはいえ、彼がわざわざチケットを用意し誘ったという事実に、己が思った以上に浮かれているのを感じる。
    2069

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min

    第10回目『ホラー』
    本編ドラロナでロくんが生け贄役に選ばれる話です。(+55min)
    タイトル通りの創作変態吸血鬼が出てきます。CP要素は薄め、恐怖描写は皆無の上あっさり解決しますが宜しくお願いします。
    「我は吸血鬼『人身御供シチュエーション大好き』!」 ――はて、自分はどうしてここにいるのだろうか。
     夕餉を食べている最中、野菜の煮物を飲み込んだ青年は不意にそんなことを思った。
     古めかしい和風の旅館みたいな屋敷で過ごすようになって、何日目になるだろう。朝に目を覚まして、人肌程度の湯で沐浴を行い。白一色の着物を纏い、しめ縄で四隅を囲った部屋で屋敷の人々が唱える歌声に日がな一日、耳を傾けて。肉と魚と乳を使わない、野菜と穀物だけの食事を三回摂って。一日の終わりに再度沐浴を行って眠る。
    「おや、どうかされましたかな?」
     今の今まで何の疑問も持たずに行ってきた日課に首を傾げている青年に、背後から声をかける者があった。振り返れば、料理人のような格好をした異様に血色の悪い男が薄い笑みを浮かべている。男の足下には何故かアルマジロがいて、ヌーと可愛らしい鳴き声を上げていた。
    3065

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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